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プリマの微笑み。
澄みわたった空を見ると、モーツァルトを思い出す。十代の最後の秋、ひとりのプリマドンナの歌をよく聴いていた。
スコアに忠実なのびやかな声量で響くレガート。その歌を聴きながら、この季節は永遠に続くのではないかと空想していた。
モーツァルト、ケルビーニ、ベルリオーズ、プッチーニ。メロディとともに僕の顔には少しのしわが加わり、音楽はやがて遠くなった。
この秋。あのプリマが再び歌ったのは、真新しいダイヤトーンのせいだ。彼女が歌う、魔笛第二幕の最後。
あっ、ここ。このフレーズ。若いプリマは、まぶたの奥で僕に微笑みかけていた。
1990年11月に発売しました。
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