YAMAHA T-4
¥48,000(1978年頃)
解説
新開発の高性能ユニレゾナンスセラミックフィルタとMPX ICを搭載したFM/AMチューナー。
フロントエンド部は高精度ワイドエアギャップ4連バリコンを採用し、アンテナ回路をシングルチューンにし、段間をダブルチューンにしています。また、RFアンプにはリニアリティが良くローノイズのJ-FETを使用しており、優れた妨害排除特性を実現しています。
また、ミキサー段の動作レベルを吟味し、アンテナ入力の強弱によって歪率やセパレーションが変化するのを改善し、弱電界から強電界まで、オーバーオールに安定な受信性能を得ています。
IF部には伝送特性の極めて良好な新開発のユニレゾナンスセラミックフィルターを採用することで、優れたオーディオ特性と妨害排除特性の両立を実現しています。また、Auto
DX回路により実際使用時の実特性の向上を図っています。
ユニレゾナンスセラミックフィルタは、ヤマハと太陽誘電との技術協力で開発されたオーディオチューナー用のセラミックフィルタです。このユニレゾナンスフィルタは、単共振構造と特殊な電極パターンにより帯域内の微分利得偏差を極めて少なく抑えたIFフィルタで、表面弾性波(SAW)フィルタやLCブロックフィルタに比べて高度な伝送特性を持ち、低損失でバラツキが少なく安定度の高いという特徴を持っています。さらに、伝送特性のコントロールが外部付加回路によって使用目的に応じて使い分けることが可能です。
IF段のLocalポジションでは、新開発のユニレゾナンスセラミックフィルター3素子とトランジスタ段+カレントリミッタ付き6段差動増幅回路に付加調整回路を採用しています。このLocal
IF段は、微分利得偏差を極めて少なく抑えてあり優れた伝送特性を持ってます。
また、DXポジションでは、Localポジションのユニレゾナンスセラミックフィルター3素子にさらに2素子を加えて5素子とし、トランジスタ2段+カレントリミッタ付6段差動増幅回路と合わせることでハイクオリティな受信が可能です。
T-4では、あらゆる電波環境でのハイクオリティ受信のため、受信電波に対する妨害の有無を電子的に検出し自動的にIF回路のモード(Local/DX)を選択するAuto
DX回路を搭載しています。
この回路は、妨害検出回路と同調検出回路からの信号でフリップフロップによるReceiving
Mode選択回路を駆動し、IF段切換えのトランジスタスイッチとDXインジケーターをドライブしています。
MPX回路には、HighスルーレイトのDCアンプを基本にしたヤマハ独自のDC・NFBスイッチング回路を採用しています。また、サブキャリア発生回路には入力に妨害除去フィルターを入れたAnti
interference PLL systemを採用し、さらにパイロット信号がデコードに入る前にキャンセルするトラッキングタイプパイロットピュアキャンセル回路も装備しています。
DC-NFBスイッチング回路は、トランジスタによるヤマハ独自の平均値復調方式のスイッチング回路にNFBをかけた構成となっています。DC化しNFBをかけたことで優れた伝送特性を獲得し、混変調歪の発生が極めて少なく、DC~高域まで十分な低歪率を実現しています。
トラッキングタイプパイロットピュアキャンセル回路は、PLLで発生した19kHzの方形波を利用して入力パイロット信号に追従したレベルと位相を持つ19kHzの信号を生成し、さらに波形変換回路でサイン波に変換した信号(パイロット信号と同じレベルで逆相)をスイッチング回路の入力に加えてパイロット信号をスイッチング回路の前でキャンセルしています。この回路により、各放送局のパイロット信号レベルが変化しても、それに応じて自動的にレベル追従してキャンセルするため、パイロット信号の漏れが殆どありまsねん。
T-4では、MPX部の回路にヤマハオリジナルの新開発オーディオチューナー専用MPX
ICを使用しています。このICはトランジスタ140個、抵抗140本、その他ダイオードやコンデンサなど約290素子を20ピンデュアルのパッケージに収めた構成となっています。大型のチップサイズを採用することによってむやみに集積度を上げず、集積することで音質や性能に悪影響を与える部分は全てディスクリートで構成しています。回路的には、ステレオデコーダー、出力バッファアンプ、セパレーションコントロールアンプの信号系の全てのアンプをDC構成ハイスルーレイト高速応答アンプとし、新開発のバランスドタイプシングルエンドフェイズディテクタによるPLL回路、Anti
interference PLL回路、トラッキングタイプ(レベル位相追従型)パイロットピュアキャンセル回路の殆どの部分がIC化されています。
MPX回路からの信号はハイスルーレイトDCアンプで増幅され、ローパスフィルタに入力されます。
T-4ではトラッキングタイプパイロットピュアキャンセル回路を採用しているため、すでにデコーダーの入り口で19kHzのパイロット信号はキャンセルされているため、ローパスフィルターのカットオフ周波数を可聴帯域外にすることで18kHzまでフラットな周波数特性を得ています。さらに、ステレオ復調によって生ずるサイドバンド波全帯域に対して効果的に働く優れたLCアクティブローパスフィルタを採用しています。
フィルタからの出力は、アクティブロードエミッタフォロアによるバッファアンプを通り出力となります。
シグナルクオリティメーターを搭載しています。
このメーターは妨害検出フィルターとAGCアンプによって、1μV~3mVという広い入力レベル範囲をメーターで指示することができます。また、ヤマハ独自の妨害検出方式により、弱入力から強入力まで飽和することなくマルチパスやフェージング、ノイズ源からの妨害を指示値の低下やフラツキとして表示できます。
Muting/OTSスイッチのOFFポジションではメーター回路の時定数が早く設定され妨害の検出を容易にしています。
AMチューナー部は、カスコード回路による高周波増幅段、差動ミキサー段、トリプルチューンIFTなどによって高感度、高ダイナミックレンジを確保しつつノイズや歪が少ない構成となっています。
さらにRXモードスイッチをLocal-DXと切換えることにより、Hifi受信-DX受信と再生周波数帯域を切換えることができます。
AMアンテナにローインピーダンスループアンテナを採用しています。このアンテナはインピーダンスが低いため電界性のノイズを拾いにくいという特徴をもっています。
また、FMアンテナを屋外に建てている場合には、ヤマハ独自のコンビネーション給電方式を採用しているため、付属のコンビネーションバーを使用するとAM
DX受信が楽しめます。
選局中はAFCがOFFになり、同調後は正しい同調点に自動的に局発の周波数をロックする便利なOTS(オプティマムチューニングシステム)を搭載しています。
また、選局中に局と同調するとダイアル指針が輝くステーションインジケーターとして動作し、同調後にチューニングツマミから手を離すとダイアル指針がウインクして局発がロックされたことを表示します。
弱電界でのステレオ受信時のノイズを低減するFMブレンド回路を搭載しています。
この回路が動作している時はステレオインジケーターの明るさが半減します。
固定と可変の2系統の出力を搭載しています。
Rec Cal回路を搭載しています。Rec Cal回路の信号は333HzでFM時の50%変調出力に相当します。
機種の定格
型式 | FM/AMチューナー | ||||||||||||
<FMチューナー部> | |||||||||||||
受信周波数 | 76MHz~90MHz | ||||||||||||
50dB SN感度 | mono:3μV(14.8dBf) stereo:35μV(36dBf) |
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実用感度(mono、IHF、84MHz) | 75Ω:0.8μV(9.3dBf) 300Ω:1.6μV(9.3dBf) |
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イメージ妨害比(84MHz) | 90dB | ||||||||||||
IF妨害比(84MHz) | 100dB | ||||||||||||
スプリアス妨害比(84MHz) | 100dB | ||||||||||||
AM抑圧比(IHF) | 65dB | ||||||||||||
実効選択度(IHF) | DX:88dB Local:50dB |
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キャプチャーレシオ(IHF) | DX:2.5dB Local:1.2dB |
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SN比 | mono:86dB stereo:84dB |
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全高調波歪率 |
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混変調歪率(IHF) |
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ステレオセパレーション |
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周波数特性 | 50Hz~10kHz ±0.3dB 30Hz~15kHz ±0.5dB 10Hz~18kHz +0.5 -3.0dB |
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サブキャリア抑圧比 | 65dB | ||||||||||||
ミューティングレベル | DX:5μV(19.2dBf) | ||||||||||||
AUTO DX切換レベル | 50μV(39.2dBf)(stereo時、妨害レベル約-50dB) | ||||||||||||
<AMチューナー部> | |||||||||||||
受信周波数 | 525kHz~1605kHz | ||||||||||||
実用感度(IHF) | 15μV | ||||||||||||
選択度(1000kHz±10kHz) | 27dB | ||||||||||||
SN比 | 52dB | ||||||||||||
イメージ妨害比(1000kHz) | 40dB | ||||||||||||
スプリアス妨害比(1000kHz) | 50dB | ||||||||||||
全高調波歪率 | 0.3% | ||||||||||||
<総合> | |||||||||||||
出力レベル/インピーダンス |
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付属機能 | FMブレンドスイッチ レコーディングキャリブレーター FMミューティング&OTS/メータースピード切換連動スイッチ 妨害検出シグナルクオリティメーター 低インピーダンスループアンテナ |
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使用半導体 | トランジスタ:35個 IC:5個 FET:2個 ダイオード:19個 ツェナーダイオード:1個 LED:2個 セラミックフィルター:5個 |
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電源電圧 | AC100V、50Hz/60Hz | ||||||||||||
定格消費電力 | 8W | ||||||||||||
外形寸法 | 幅435x高さ95x奥行337mm | ||||||||||||
重量 | 5kg |