YAMAHA T-1
¥60,000(1977年頃)
解説
優れたオーディオ特性と高選択度の両立を図ったFM/AMチューナー。
基本的な回路構成は、4連バリコンとMOS FET採用のフロントエンド、Local-Auto
DX2段構えのIFステージ、ワイドレンジバランスドタイプレシオディテクタ、レベル追従型パイロットキャンセル回路付きDC・NFB・PLL・MPX回路、オーディオ段となっています。
また、AM部は3連バリコンを採用しており、同調型RFアンプ、差動ミキサー、IF回路、ピークtoピークディテクタという構成になっています。
フロントエンド部には高精度周波数直線型4連バリコンを採用しており段間をダブルチューンにしています。また、RFアンプには高周波特性に優れ低雑音のMOS
FETを採用することで高感度と妨害排除特性を実現しています。
IF段はLocal⇔DX自動切換回路を搭載しています。
この自動切換回路では、受信電波に対する妨害の有無を電子的に検出し自動的にIF回路のモード(Local⇔DX)を選択しています。回路動作は、妨害検出回路からの信号でフリップフロップによるReceiving Mode選択回路を駆動し、IF段切換のトランジスタスイッチとDXインジケーターをドライブするという構造になっています。
Localポジションでは、T-1用に新たに開発したブロックセラミックフィルタを2組採用しています。このブロックセラミックフィルタは通過帯域の微分利得偏差を±0.2dB以内と少なく抑えています。IFアンプにはインピーダンス変動を抑えるためバッファアンプを配しリミッタ効果の優れたカレントリミッタ付7段差動増幅器を採用しています。これらの構成により、十分な選択度を確保しつつ、優れた特性を得ています。
また、DXポジションではLocalポジションのブロックセラミックフィルタに、微分利得直視法で出の巣特性をチェックした4素子低スプリアスセラミックフィルタを追加することによって選択度を向上し、妨害をシャープにカットしています。
MPX回路には、ハイスルーレイトのDCアンプを基本にヤマハ独自のトランジスタによる平均値復調方式のスイッチング回路にオーディオアンプ同様にNFB(負帰還)をかけた、DC・NFBスイッチング回路を採用しています。
オーディオ信号としては不要な19kHzのパイロット信号を除去するため、PLLで発生した19kHzの方形波を利用して、入力パイロット信号に追従したレベルと、入力信号と逆相の19kHzのサイン波を再生し、パイロット信号をスイッチング回路の入力でキャンセルするトラッキングタイプのパイロットピュアキャンセル回路を搭載しています。
この回路により、各放送局のパイロット信号のレベルが異なってもそれぞれのパイロットのレベルに応じて自動的にレベル追従してキャンセルするため、パイロットの漏れは殆どありません。
また、MPX回路からの出力には19kHzの信号は含まれていないので、ローパスフィルタのカットオフ周波数を19kHz以上にもっていくことが可能になり、18kHzまではほぼフラットな周波数特性を得ています。
19kHzのパイロット信号から、コンポジット信号を復調するのに必要な38kHzのサブキャリアを発生させるPLL回路には、入力に同調型の妨害除去フィルタを付加し、ステレオ音声信号によるサブキャリアの乱れが少ないAnti-interference PLL Systemを採用しています。
AMチューナー部にはエレクトロニックアンテナアッテネーターを採用しており、強電界局受信時には、AM放送も広帯域再生が可能となっています。
また、FMアンテナをAMアンテナとして使用するヤマハ独自のコンビネーション給電方式を採用しています。
シグナルメーターは妨害検出フィルタとAGCアンプによって3μV~1mVの入力レベルをメーターで指示することができます。また、ヤマハ独自の妨害検出回路により、強入力まで飽和することなく、マルチパス、フェージングを指示値の低下やフラつきとして指示します。
OTS(Optimum Tuning System)機構を搭載しています。
OTS機構では、選局中はAFCがOFFになり、同調後は正しい同調点に自動的に局発の周波数をロックします。また、選局中に局と同調するとダイアル指針が明るくなり、ステーションインジケーターとして動作するようになっています。
2ステージ対称ゲートミューティング回路や弱電界のステレオ受信時のノイズを低減するFMブレンド回路、REC CAL回路を搭載しています。
固定と可変の2系統の出力端子を搭載しています。
機種の定格
型式 | AM/FMステレオチューナー | ||||||
<FMチューナー部> | |||||||
FM実用感度(IHF、mono、300Ω) | 300Ω:1.7μV(9.8dBf) 75Ω:0.85μV(9.8dBf) |
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50dBSN感度 | mono:3μV(14.8dBf) stereo:35μV(36dBf) |
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イメージ妨害比(84MHz) | 95dB | ||||||
IF妨害比(84MHz) | 100dB | ||||||
スプリアス妨害比(84MHz) | 100dB | ||||||
AM抑圧比 | 65dB | ||||||
キャプチャーレシオ | 1.0dB | ||||||
実効選択度(IHF) | Local:55dB DX:92dB |
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SN比 | mono:86dB stereo:84dB |
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全高調波歪率 |
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IM(混変調)歪率(IHF) |
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ステレオセパレーション |
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周波数特性 | 50Hz~10kHz ±0.3dB 30Hz~15kHz ±0.5dB 10Hz~18kHz +0.5 -3.0dB |
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サブキャリア抑圧比 | 70dB | ||||||
ミューティングレベル | DX:5μV(19.2dBf) | ||||||
AUTO DX動作レベル | ステレオ時妨害レベル約-50dBにてDX MODE自動切換 | ||||||
<AMチューナー部> | |||||||
実用感度(IHF) | 15μV | ||||||
選択度(1000kHz±10kHz) | 30dB | ||||||
SN比(80dB/m) | 50dB | ||||||
イメージ妨害比(1000kHz) | 70dB | ||||||
IF妨害比(1000kHz) | 70dB | ||||||
スプリアス妨害比(1000kHz) | 70dB | ||||||
全高調波歪率 | 0.4% | ||||||
<オーディオ部> | |||||||
出力レベル/インピーダンス |
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付属機能 | レコーディングキャリブレータ FMブレンドスイッチ、FMミューティング&OTS連動スイッチ FM IF帯域切換スイッチ(AUTO DX-Normal) Signal Strength/Quality Meter FM Tuning ind(Full - Harf Bright) |
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<総合> | |||||||
使用半導体 | トランジスタx60 ICx5 FETx1 ダイオードx17 ツェナーダイオードx2 LEDx2 セラミックフィルタFM2+セラミック ブロックフィルタユニット2/AM1 |
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電源電圧 | AC100V、50Hz/60Hz | ||||||
定格消費電力 | 11W | ||||||
外形寸法 | 幅435x高さ97x奥行376mm | ||||||
重量 | 5.7kg |