YAMAHA YST-SW1000(L)
¥150,000(1台、1990年発売)
YST-SW1000L:¥225,000(1台、受注生産、1991年発売)
解説
ヤマハYST方式によって16Hzの超低域再生を可能にしたサブウーファーシステム。
ヤマハ独自のYST方式を採用しています。
YST(ヤマハ・アクティブ・サーボ・テクノロジー)方式は、負性抵抗駆動回路とアンプ、それによりインピーダンスがゼロに近い状態で駆動されるウーファーユニット、及びそのユニット振動板を構成要素の一部とすることで、ポート内部の空気共振が超低域を受けもつヘルムホルツレゾネータ(共鳴箱)によって構成されます。
従来スピーカーではインピーダンス上昇によって低域再生を制約していましたが、負性抵抗回路が打ち消す事によってウーファーユニットがダンピングファクタ無限大のダイナミックスピーカとなることで超低域までリニアな動作が可能となり、数Hz以上を受持つ通常のウーファーとして機能すると同時に、超低域までのリニアな微少振動がレゾネータに振動エネルギーを供給する役割を果たします。そして、レゾネータはこのエネルギーによりポート内の空気が直接振動するエアウーファとなり、キャビネット容積とポートの容積形状により自由に設定された共振特性に従って超低域を再生します。エアウーファはそれ自身の振動板を持たず、ポート内の空気自身が振動板の働きをするため、振動板素材による音色の違いや、ストローク歪や磁気歪などの歪がありません。
低域再生ユニットにはYST-SW1000用に開発された30cmコーン型ウーファーを搭載しています。
このユニットにはNS-1000Mと同系の北米産スプルース素材を使用しており、素材の良さを活かしつつYST-SW1000用に新設計することで、ユニット単体で70Hz~500Hzまでほぼフラットな特性を得ています。また、30Hzでも10dB落ちに抑えられています。コーン形状は広いピストン運動領域の得られるストレートコーンタイプとしており、コーンをやや深めにすることで強度を上げ、YST-SW1000独自のポート内空気共振に対応しています。さらに、同素材によるセンターキャップをやや大きめにしたことや、適切なコルゲーション構造を施したことなどによって25gという軽量ながら十分な剛性を確保しています。
エッジには適度な織り密度の布に二種類の樹脂系ダンプ材を厚めに塗布含浸させたものを採用しており、大ストロークに対しての形状保持能力を高め、さらに音の立ち下がり特性も改善しています。また、ダンパーには織布にフェノール系樹脂を含浸させた素材による新設計のコルゲーションタイプを採用しており、形状を工夫することで適切な制動能力とリニアな大ストローク対応性能を得るとともに正確なセンター保持能力を実現しています。
ボイスコイルボビンにはガラス繊維で強化された耐熱性エンジニアリングプラスティック素材を積層して使用しており、52φx43mmの大口径ながら十分な軽量と高剛性高耐熱性を実現しています。また、ボイスコイルには伝導性に優れたOFCを0.5x0.14mmのリボン線による占有率の高いエッジワイズ巻きとし、高効率ドライブを実現しています。さらに、ギャップ部のプレート幅7mmに対し218mm幅のロングボイスコイルなため、大ストロークに対しても磁気歪が極小となっています。
磁気回路にはダブルマグネットによる防磁方式を採用しています。キャンセルマグネットサイズはコンピューター設計した上でカット&トライによる試聴で決定しています。
フレームにはアルミダイキャストフレームを採用しています。また、固定には太ビス8本を使用しており、振動系をしっかりと指示しています。さらにユニットカバーには0.8mm厚スチールに円形パンチングを施し、開口率と強度アップを図っています。しかも薄手の織布で覆い不要高周波の吸収と不要共振の抑止を行っています。
エンクロージャーには50mm厚高密度パーティクルボードによるGTラックを天・底・側板にそのまま使用しており、バッフル板と後面に高密度パーティクルボードを各40mm・30mm厚で用いた上で接着しています。接合は前面は嵌合式となっており、後面は嵌合わせた上20mm厚補強板に固着するというとどめ構造としています。さらに、40mm角の三角隅木をふんだんに用いた補強と相まって、高強度、高密度となっています。
内部構造は前面コントロール部及び後面アンプ部は高密度パーティクルボードによる独立チャンバーとし、リード線通路もゴム圧着で密閉することで密閉度と相互影響の排除を図っています。
また、最低域を受持つポート部は素材・形状・剛性等を特に吟味した設計となっており、高密度のパルプ素材を接着しながら螺旋状に巻き、7mm厚にした上で表面をコーティングしています。さらに、先後端部を樹脂系素材によってRを持たせて高強度化するとともにポートノイズを極少にしています。
YST-SW1000Lではポート本体にアクリル材を、先端部にブナのムク材をくりぬいて使用しており、一層の強度を高めています。
本格設計のパワーアンプを内蔵しています。このアンプは良質の150W用パワートランジスタによるディスクリート出力段をもつ本格的な構成となっています。また電源部は、メイン用±B電源と信号増幅用電源およびコントロール系電源を独立させた3電源方式や大型EIコアのメイントランス、低歪率大容量ブロックケミコンの採用などを採用しています。
さらに、ワンポイントアース設計や高精度特注抵抗、極性付極太OFC電源ケーブル、金クラッド・ダブル接点リレー、金メッキスピーカー端子、銅製アース金具&ネジ、2mm厚鋼板などの高品質パーツを採用しています。
高域のカットオフ周波数を連続可変可能です。
2系統の入力端子を搭載しています。またボリュームを搭載しており、手持ちのスピーカーとの音量合わせが可能です。
フェイズ(位相)切替スイッチを搭載しており、通常の正相接続に対して、好みなどで逆相接続にも切替えられます。
高域カットオフ周波数やレベル設定を含め、リスニングポジションに居ながら各種の微調整が可能なリモコンが付属しています。
樺化粧黒色塗装仕上げのYST-SW1000の他に、受注生産品としてウォルナット化粧ウレタン塗装仕上げのYST-SW1000Lがありました。
YST-SW1000とYST-SW1000Lではポートの素材等が異なっています。
機種の定格
方式 | パワーアンプ内蔵・1ウェイ・1スピーカー・YST方式 ・フロア型・防磁設計 |
使用ユニット | 低域用:30cmコーン型 |
ウーファーポート口径 | 9.0cm |
再生周波数帯域 | 16Hz~160Hz(-10dB) |
最低共振周波数 | 30Hz |
入力インピーダンス | SP入力:4.7kΩ ライン入力:10kΩ |
アンプ出力 | 120W(5Ω、歪0.01%) |
カットオフ周波数 | 30Hz~130Hz連続可変(-24dB/oct) |
消費電力 | 100W |
外形寸法 | 幅580x高さ440x奥行440mm |
重量 | 48kg |
付属 | リモコン スピーカーコード(4mx2) |