YAMAHA NSX-10000
¥400,000(1台、1987年発売)
解説
ヤマハの創業100周年を記念して、性能的にデジタルサウンドの物理的な可能性を、余裕をもってクリアし、音質的にデジタルサウンドの音楽的な可能性を、余裕をもって歌い上げることをコンセプトとして開発されたスピーカーシステム。
デジタルソースに比肩しうるノーディストーション・ハイトランジェントとノーノイズ・高分解能の実現を目指しています。
低域には、33cmのピュアカーボン振動板を採用したコーン型ユニットが採用されています。
カーボンの特性を活かすため、NS-2000、NS-1000Xで定評がある、長繊維カーボンファイバー・一方向配列としています。
これは、カーボンファイバーの原型ともいえる、長繊維ロールシートのまま使用したもので、シートを扇形に、コーンを8等分して32枚、繊維方向にカットしたものを、樹脂をマトリックスとして、4分の1ずつずらして4枚重ねて作られています。
振動板の形状としてはストレートコニカルタイプに仕上られており、繊維方向の引張・圧縮強度を活かしつつ、高剛性化を実現しています。
また、センターキャップにも同一の一方向配列・長繊維ピュアカーボンファイバーを採用しています。
ボイスコイルは、線材にOFC(無酸素銅)線を採用したエッジワイズ巻ボイスコイルとなっています。
フレームは、共振を抑えるため、コンピューターシミュレーション技術を導入して、新たに設計しています。ウーファー用のアルミダイキャストフレームは、フレームフランジで12mmの肉厚。フレームアームも、一般的なV字形からU字形アームへ改良し、ウーファーの使用周波数帯域内で発生する第一次共振モードをしよう周波数帯域外へ追放しています。
また、マグネットをはじめとする、ウーファー各部の不要振動を抑え込むため、マグネットをサンドイッチするように、フレームとボトムプレートを10mm径のボルト4本でジョイントし、ウーファーユニット全体での剛性をより高めています。
中域、高域には、GCベリリウムが採用された8.8cm、3.0cmのドーム型ユニットが採用されています。
GCベリリウムは、ベリリウム結晶の組織改善をはかり、巨大結晶化を達成したもので、ひとつひとつの結晶が大きく成長しているため、結晶間の境界が少なく、音波の伝送ロスを低減しています。
また、ボイスコイルボビンにも、振動板と同じGCベリリウムを採用しており、熱伝導特性の向上により、耐許容入力を向上しています。線材にはスコーカーはOFC(無酸素銅)線、トゥイーターに銅クラッド・アルミ線を採用しており、エッジワイズ巻ボイスコイルとなっています。
直進性の強い中高音を、リスニングエリアに広角で拡げるため、ディフューザーを搭載しており、その素材には真鍮製のものを採用しています。
仕上げには、微粒のバフ材でひとつひとつ丹念に磨き上げたのち、クリアラッカーを施して光沢を保っています。
エンクロージャーのバッフル面は、ヤマハ独自の曲げ練りラウンドバッフルを採用しています。これは、グランドピアノ側板成型と全く同一手法によるもので、吟味を尽した樺スライス板12枚を、一枚一枚を金型に添え、丹念に曲げ練りながら特殊接着剤とともに加圧接着しており、関節部材を介在させることなく、フロントバッフルにラウンド部を持たせることに成功しています。
これにより、従来の側板を削るラウンドバッフルで起きた、エンクロージャーの強度不足による共振や、またラウンド形状の関節部材を使用することによる接合面でのロスの発生を抑えています。
側板との接合も、一般的な45度平面接合に変わり、構造強度及び接着面強度に有利な、フィンガージョイント法を導入しており、フロントバッフルの圧力を側板がストレートに受けるよう考慮されています。
さらに、ラウンド部周辺の強度維持に完璧を期すため、無垢ブナ材を使用してエンクロージャーの裏側からフィンガージョイント接合部を補強してあります。
外部化粧材にはアメリカンウォルナットを使用しており、木目地の肌合いを生かしたヤマハならではのオープンポア仕上げとなっています。
ネットワークにはハンダ付け等の誤差によって発生する色つけも避けるため、パーツ間に異種金属を介在させない、プラズマスポット溶接を導入しています。
これは、パーツ端子同士を局所的に発熱溶着させるもので、ハンダ等の異種金属介在による接触電位差をゼロに抑えています。
また、パーツにも、大型MPコンデンサや、ケイ素鋼板コアのOFC(無酸素銅)線巻ボイスコイルを採用しています。
内部配線材にもOFC(無酸素銅)線を採用しており、スピーカーターミナルには、極太ケーブルにも適合する金メッキ処理の大型スクリュータイプを使用しています。
機種の定格
方式 | 3ウェイ・3スピーカー・密閉方式・ブックシェルフ型 |
使用ユニット | 低音用:33cmコーン型 中音用:8.8cmドーム型 高音用:3.0cmドーム型 |
再生周波数帯域 | 35Hz~20000Hz |
クロスオーバー周波数 | 500Hz、5000Hz(12dB/oct) |
最低共振周波数 | 35Hz |
インピーダンス | 6Ω |
出力音圧レベル | 90dB/W/m |
定格許容入力 | 125W |
ミュージック許容入力 | 250W |
外形寸法 | 幅450x高さ752x奥行410mm |
重量 | 54kg |