YAMAHA GF-1
サペリ仕上げ:¥7,000,000(2台1組、1991年6月発売)
ウォルナット仕上げ:¥5,000,000(2台1組、1991年6月発売)
解説
純粋に音と音楽というファクターだけを頼りに開発を行い、理想の音を妥協無く追い求めて開発されたアクティブスピーカーシステム。
GF-1は、YST方式のサブウーファーとマルチチャンネルアンプ3台による3ウェイという構成を採用しており、市販のスピーカーでも珍しい構造となっています。
このような構成をとる事で、従来のスピーカー設計で切り離す事のできなかった制約を取り払い、より優れたスピーカーの開発を図っています。
中低域には27cm、低域には30cmのコーン型ユニットを搭載しています。
コーン部には結晶性ポリアミド繊維のケブラー(KEVLAR#149)を採用しています。ケブラーは有機性の高弾性繊維のため、他のハード系ダイアフラム素材に比べ金属的な音のイメージが少なく、紙などと比べても、軽く、コシがありS/N感も良好となっています。
中域には8.8cm、高域には3cmのドーム型ユニットを搭載しています。
それぞれの振動板には、ヤマハが開発した軽く、強く、高域限界周波数(共振点)の高いダイアフラムである鋳造ベリリウムを採用しています。この鋳造ベリリウムは、蒸着ベリリウムと比較して抗張力で約2倍、伸びは約10倍の高特性を実現しており、結晶間の隙間も蒸着ベリリウムの約1000分の1(真空テスト法による比較)で、純度も99.9%を実現しています。
中・高域ユニットでは、低域とのスムーズな音のつながりのために比較的大きめダイアフラムとしていますが、ボイスコイル重量及びコイルインダクタンスを軽減することで、高域特性を伸ばしています。
各ユニットのダイアフラムにさらに細かな音質調整を施すため、表面に純金を蒸着しています。
これにより中・高域用ユニットでは、金の持つ粘りでわずかに残っているベリリウムの鳴きをダンプし、濁りの無い音を実現するとともに、防蝕性も得ています。
また、ベリリウムダイアフラムだけでなく、ケブラーコーンにも金蒸着を施し、音質調整を行うとともに、ユニットごの音質の統一を図っています。
磁気回路のマグネットには、アルニコ、湿式ストロンチウム(Sr)フェライト、ネオジウムの3種類から比較試聴と特性で選ばれた柱状結晶アルニコを採用しています。
アルニコは、ネオジウムの約3倍、フェライトの約6倍もの磁束密度を持っているため、ダイアフラムの動きを阻害することのないマグネット形状を実現しています。
各ユニットは、自分の受持ち帯域だけでなく、それぞれが極力広い周波数レンジを再生できるように設計されています。こうすることで軽くて伸びのある低音再生を実現しています。
そのため、ダイアフラムは軽量・カーブドコーンを採用し、ボイスコイル口径は極力小さくし、かつベリリウムキャップとすることで高域までレスポンス良く伸ばしています。
とりわけボイスコイルは、ショートタイプとすることで大幅な軽量化を図っており、従来より重量が約1/5に軽減されています。
また、フレーム設計では背面音響スティフネスに着目しており、マグネットの内径を大きくとるとともにフレームに空気抜きをあけるなどにより、背面音響スティフネスを極少化しています。
豊かでハイクオリティな低音再生を実現するため、サブウーファーにはYST(ヤマハ・アクティブ・サーボ・テクノロジー)が採用されています。これにより、通常では38cm以上のユニットが必要とされる部分を、GF-1では30cmユニットで25Hz(-5dB)という低域再生を実現し、60Hz以下を受け持っています。
YST方式では、ポート内の空気自身が振動板の働きをするエアウーファを実現しており、これにより音場感の再現性や音像定位などが向上しています。
各チャンネルの分割には、従来のネットワーク方式ではなくマルチチャンネルアンプ方式を採用しており、LCネットワークによる様々な規制から解放されています。
マルチチャンネルアンプの出力は1台あたり125Wで、スピーカー片チャンネル4台で500Wのハイパワーとなっています。また、スーパーウーファーからトゥイーターまで、全てを同一回路、同一部品として音の統一につとめるなど、細部まで徹底した設計がされています。
各チャンネルフィルタのパラメータは最適値にセットしてあり、好みによって各ユニットのレベルのみは0.5dBステップで±2.5dBの範囲で調整できるようになっています。
入力端子には、ラインレベルのキャノン端子とパワーアンプレベルのスピーカ端子を搭載しています。
エンクロージャーの設計にあたっては、容積係数(VF:Volume Factor)という考え方を導入しており、さらにエンクロージャーのサイズを変えながら、比較試聴を行い、最適なVF値を決定してます。
このVF値を高くすることにより、エンクロージャの内部音圧が低くなるため、音響スティフネスや粘性抵抗を極小化でき、ユニット設計に自由度が増すとともに、スピーカーユニットのよさを引き出しています。
エンクロージャーの素材には、強さと響きの美しさを考慮し、アメリカン・ハードメープル材を採用しています。
バッフル面は3枚のメープル材を積層に張り合わせたラミネートコアタイプ、その他の面は縦に張り合わせたランバーコアタイプとし、アメリカンウォルナットの添え芯を両面に張り合わせた上で、さらにアメリカンウォルナットを両面に張り合わせ、外装面はウレタンオープンポア仕上げとしています。
板厚は全ての面で28mmで、バッフル面は留め加工としています。
標準仕様のウォルナットウレタンオープンポア仕上げに加え、西アフリカ産の濃いブラウンの色調と美しい縞模様を特徴とする木材で、高級家具やピアノなどの化粧材として用いられる、サペリのウレタンと層仕上げを外装材に採用した特別仕様もありました。
機種の定格
方式 | マルチアンプドライブ・4ウェイ・4スピーカー・ YST方式・フロア型・防磁設計 |
使用ユニット | 低域用:30cmコーン型 中低域用:27cmコーン型 中域用:8.8cmドーム型 高域用:3.0cmドーム型 |
ポート口径 | 10.0cmx2 |
再生周波数帯域 | 25Hz~35kHz -5dB |
出力音圧レベル(ユニット単体) | トゥイーター、サブウーファー:94dB スコーカ、ミッドウーファー:95dB |
クロスオーバー周波数 | 60Hz、600Hz、4kHz(+12dB/oct、-18dB/oct) |
定格出力 | 合計:500W/ch(125Wx4、5Ω、歪0.005%) |
入力感度 | ラインレベル(キャノン端子):2V パワーアンプレベル:20V |
内容積 | 332L |
出力レベル調整 | ±2.5dB、0.5dBステップ |
消費電力 | 定格:360W 無信号時:120W |
最大外形寸法 | 本体:幅710x高さ1400x奥行630mm 電源:幅650x高さ175x奥行180mm |
重量 | 本体:150kg(3ウェイ部:70kg、サブウーファー部:80kg) 電源:25kg |