YAMAHA YP-D71
¥59,000(1975年頃)
解説
回転の正確さ、トレースの精密さ、不要微振動の抑圧という3要素をオーバーオールに突き詰め、高度にバランスさせたレコードプレイヤー。
サーボ回路にはFGサーボを採用しています。
FGサーボは、ターンテーブルの回転に比例した周波数を発生するFG(Frequency
Generator)の回転速度を制御する構造となってます。YP-D71では、回転速度を検出するFGをモーターの外周全周に配置しており、偏心や検出器のピッチ誤差の影響を受けにくい構造となっています。
FGサーボにより高められた回転精度をさらに高めるため、クォーツロックPLLサーボを採用してます。
このクォーツロックPLLサーボは、FGからの周波数と水晶発振器で発生させた基準信号との位相のズレを無くすように制御する方式です。これによりターンテーブルの回転精度は水晶の発振周波数精度まで高くすることができ、負荷変動や電圧変動、温度変化などに非常に優れた安定度を示します。
YP-D71ではロックイントルクが500g・cmと非常に大きく設定されており、普通の針圧のアーム40本分に相当する負荷に対して速度偏差がありません。またスタート時のようにクォーツロックが外れる領域ではFGサーボが働くように設計されており、定速に達するとクォーツロックしたことを示すロックインジケーターが点灯します。
YP-D71では、緩やかな負荷変動に対してはクォーツサーボで改善し、急激な負荷変動に対してはターンテーブルの慣性質量で改善しています。また、これらの中間的な部分では、ダブルサーボや慣性質量モーターの裸特性などを含めた回転系全体のオーバーオールな特性を考慮して最良の音が得られるようバランス良く設計されています。
モーターには新開発のコアレス・スロットレス・DCホールモーターを採用しています。このためにコッキングが非常に少なく、常に強力なトルクを得ることができています。また、コアレスモーターで特に問題となる起動トルクも1kg・cmと大きいため、瞬間レスポンスも改善されています。
ターンテーブルには直径31cmのアルミダイキャスト製を採用しています。
このtあーンテーブルは鋳造の段階から精密にダイナミックバランスをとっており、さらに慣性質量を増すために質量を外周に寄せて設計されています。これにより慣性質量230kg・cm2を実現しています。
さらにターンテーブルの素材や加工、仕上げなどの音に与える微妙な影響もヤマハURメソッドにより吟味することで、音質を追及しています。
トーンアームのジンバルサポートには、回転軸を垂直動のためと水平動のための二重構造とすることで水平・垂直とも動作点のブレを少なくした、ロングスパンの完全4点ピボットジンバルサポートを採用しています。
またピボットを受けるアンギュラーコンタクトベアリングはラバープッシュで支えられており、ガタを追放するとともにキャビネットからの振動がアームに伝わらないようにしています。これにより初動感度7mgを実現しています。
トーンアームにはアルミニウム製のS字型ロングタイプアームを採用しています。
このアームはS字型のうねりを少なくするとともに、トラッキングエラーを軽減しつつ、ローコンプライアンスの多いMCカートリッジなどの性能を発揮できるようにロングタイプアームとなっています。
また、パイプアーム内部には防振材を充填しており、不要な共振を低減してます。
アームベースには亜鉛ダイキャストベースを採用しています。
このアームベースは4点で強力に固定されており、突き出た27φの円筒形ベースシャフトにジンバルサポート部を支える亜鉛製のダイキャストブラケットがタイトスクリューで固定されています。
信号ケーブルには6φのNEGLEXローインピーダンス二重円筒ケーブルを採用しています。
真鍮削り出しの27φベースシャフトに4mm目盛付きハイトアジャストを搭載しており、種々のカートリッジに対応しています。
このハイトアジャストは3点支持によるロック機構を持っており、自由な位置で確実に固定することができます。
糸吊り式のインサイドフォースキャンセラーを搭載しています。
糸の摺動摩擦を低減するためローラ及びスラストベアリングを設けており、レコードの内外周のどの位置においても適切なインサイドフォースキャンセラーが働きます。
ワウフラッターやSN比といった測定できる基本性能だけでなく、測定できないミクロ的な領域に対してヤマハURメソッドを導入しています。これは、プレイヤーを構成するあらゆる部位の微振動をカートリッジの針先に届く以前に可能な限りサプレスしコントロールするもので、あらゆる部分について吟味がなされています。
YP-D10に採用されたものをさらに改良したオートストップメカニズムを搭載してます。
これは、アームの終わりの導出溝にアームが導かれた時の送り速度をLEDとCdSの組み合わせで非接触検出し、ソレノイドを動作させ同時に電源もOFFにするという構造になっています。
キャビネットにはパーチクルボードによるソリッドボードを採用しています。
また、ハウリングに強い1.1kgのアクリル製ダストカバーを採用しています。
機種の定格
型式 | レコードプレイヤー |
<フォノモーター部> | |
駆動方式 | ダイレクトドライブ |
モーター | コアレス・クォーツロックDCホールモーター |
起動トルク | 1kg・cm |
ロックイントルク | 500g・cm |
サーボ型式 | FGサーボ+クォーツロックPLL |
モーター電源 | DC24V・600mA |
ターンテーブル | 31cmアルミキャスト、1.8kg(ゴムシート含む) |
ターンテーブル慣性質量 | 230kg・cm2(ゴムシート含む) |
回転数 | 331/3、45rpm |
SN比(JIS) | 62dB以上 |
ワウフラッター | 0.025%WRMS |
ピッチ精度 | ±20ppm以下 |
<トーンアーム部> | |
型式 | S字型スタティックバランスジンバルサポートアーム |
アーム実効長 | 242mm(ロングアーム) |
オフセット角 | 21゜15' |
トラッキングエラー | -1゜、+2゜30' |
オーバーハング | 15mm |
ハイトアジャスト | ±4mm |
インサイドフォースキャンセラー | ローラー付き糸吊りタイプ |
初動感度 | 垂直:7mg 水平:7mg |
アームベース | φ27真鍮ベースシャフト付き亜鉛ダイキャスト製 |
アームリフター | オイルダンプ式 |
取付けカートリッジ自重 | 3g~12g |
ヘッドシェル | 鍛造純アルミ製(重量9g) |
出力コード | NEGLEX2496、ローインピーダンス二重円筒コード |
<ファンクション部> | |
オート機構 | フォトセンサー式オートアップ、オートストップ |
<ボディ部> | |
ボディ材質 | パーティクルソリッドボード |
仕上げ | PVC黒檀化粧仕上げ |
ダストカバー | 1.1kgアクリル製 |
ヒンジ | フリーストップ着脱可能 |
インシュレーター | W型ゴムインシュレーター |
<総合> | |
電源電圧 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 9W |
外形寸法 | 幅470x高さ155x奥行378mm |
重量 | 11kg |