YAMAHA PX-3
¥135,000(1981年頃)
解説
PX-1、PX-2の開発により得られたノウハウを投入し、安定度と操作性をさらに高めたリニアトラッキングプレイヤー。
            
トーンアーム部にはリニアトラッキングサーボシステムを搭載しています。
アームベースの中には非接触・光学式トラッキングエラーセンサーがあり、シャッターの回転(アームの回転)がわずかでも起こるとCdSに不平衡電圧が発生します。この電圧が比較・増幅されたDCコアレスサーボモーターに送られアームベースを駆動し、トラッキングエラーが0の状態に戻しています。
このサーボ回路には±0.5mmのデッドゾーン(不感帯)を設けてあり、レコードの偏心が0.5mm以下ならば前進運動だけをするようにし、無駄なアームベースの動きを抑えています。
またPX-3では、アームダウン時のみサーボが働く事や、ディスクの導出溝の粗いピッチに対して3倍の余裕を持って対応できるサーボモーターの採用、アームベース駆動部の雑音や振動を抑える防振設計など、PX-2と同等の設計が採用されています。
            
トーンアームにはヤマハオリジナルのARS(アンチレゾナンスストレート)アームを採用しています。
このアームでは共振を徹底して抑えるため、剛性の高い材料を用いることや、部品の加工・組立精度を高めるなどのノウハウが投入されています。
また、振動し難い構造を実現するため、オフセット角もフィンガーフックもない左右完全対称設計を採用したほか、ピボット間のスパンをワイドすることでガタを抑えて部品共振の原因を減少させ、バランスウェイトを大型の横長矩形にして支点に近づけることで回転軸回り慣性モーメントを増加させて振動を抑えています。さらに、最大応力の働くパイプホルダ部を30mm前方まで二重構造にすることで剛性を高めています。
            
トーンアームの針圧印加にはPX-2やPシリーズと銅型式のスライディングウェイト方式を採用しています。
この方式は、一般的なカウンターリング方式と比較して、針圧調整の容易さ、細かさ、正確さの点で優れていることや、針圧の増減に伴い実効質量も増減するという特長を持っています。
            
トーンアーム部は±4mmの高さ調整が可能です。
            
純アルミ鍛造のヘッドシェルを採用しています。
また、ケーブルにはリード線を23芯と26芯の二重円筒構造にしたローインピーダンスPUコードNEGLEX#2496を採用しています。さらに、ピンプラグには金メッキ処理が施されています。
            
回転系のモーターにはDC4相8極コアレスモーターを採用しています。
原理的にコギングがないコアレスタイプで、極性の検出には非接触方式のホール素子を採用し、機械的・電気的ノイズが少なくなっています。
            
回転系の検出を行うFG(周波数発電機)は、マグネットのパターンも検出コイルも、モーターの全周に渡って配置されている全周積分型なため、着磁パターンやコイルの偏心、ピッチ誤差を相殺でき、精度の高い検出信号を得られています。
FGで検出された信号は、基準電圧と比較されるうえ、ピッチ精度が20ppm以下の水晶発振器と位相比較され(クォーツロック)、一定速度を保つようにモーター駆動部にフィードバックしています。
            
ターンテーブルには慣性モーメント210kg・cm2のアルミダイカスト製重量級ターンテーブルを採用しています。
            
操作系はPX-2に使用したものと同一のYAMAHA製ロジックLSI(YM-294)を中心に構成したフルオート機能を搭載しています。
ワンタッチ式・2サイズ・電子制御フルオートシステムを搭載しており、Playボタンとレコードサイズセレクタの2種のボタンを一体化し、17cm/30cmのいずれかのボタンを押すだけで自動的に1曲目の先頭へリードインします。これはPXシリーズ共通の方式で、リードイン位置の読み出しは、リアベース上に固定された3つのフォトインターラプタと、トーンアームベースに固定したロジックシャックにより構成される3ビットフォトセンサで行っています。
            
アームのダウン動作は、LSIからオイルダンプ式アームリフタをドライブするプランジャへ信号が送られて動作します。またダウン最中のみミニ・プランジャがトーンアームを拘束し、左右への流れを防止します。
曲の途中で演奏を中止する場合は、カットボタンを押すとLSIからの信号によりアームがアップ動作を行います。
            
オートリターン機能は、導出溝のピッチが広いことを利用したもので、アームの動きが速くなるのを3ビットフォトセンサが感じとると自動的にオートリターン動作に入ります。
リピート動作はオートリターンとオートリードインの繰り返しとなっています。
            
キャビネットはハウリングに強い高比重BMC(Bulk Molding Compound)製を採用しています。
また、ダストカバーには4mm厚で1.1kgのアクリル製を採用sいています。
            
インシュレーターには低域の防振効果の高いスプリングと高域に有効なゴムを組合わせたスプリング・ゴム複合型インシュレーターを採用しています。
			
機種の定格
| 型式 | リニアトラッキングプレイヤー | 
| <トーンアーム> | |
| アーム型式 | リニアトラッキング・ストレートアーム | 
| サーボ型式 | 光電式トラッキングセンサー+コアレスサーボモーター+ベルトドライブ | 
| 全長/有効長 | 236mm/190mm | 
| 針圧印加方式 | スタティックバランス型スライドウェイト式 0~2.5g(0.1gステップ)  | 
                
| 針先等価質量 | 針圧比例型 針圧1.5g(カートリッジ重量は含まず):17g  | 
                
| 適用カートリッジ重量範囲 | 5g~11g 10g~16g(サブウェイト使用時)  | 
                
| 水平トラッキングエラー | 最大±0.15゜(針先偏位換算±0.5mm) | 
| アーム初動感度 | 水平:10mg 垂直:10mg  | 
                
| アームリフタ | オイルダンプ式(プランジャードライブ) | 
| アーム高さ調整 | ±4mm | 
| ヘッドシェル | 純アルミ鍛造、8.0g EIA規格プラグイン型金メッキ端子  | 
                
| <ターンテーブル> | |
| 材質 | アルミダイキャスト | 
| 直径/重量 | 30cm/1.6kg(ゴムシート含む) | 
| 慣性モーメント | 210kg・cm2(ゴムシート含む) | 
| <回転系> | |
| ドライブ方式 | ダイレクトドライブ | 
| サーボ方式 | クォーツ制御 | 
| モーター | DC4相8極コアレスホールモーター | 
| FG | 全周積分型 | 
| 回転数 | 33・1/3、45rpm | 
| ピッチインジケーター | LEDロックインジケーター | 
| <ケーブル> | |
| PUコード | ローインピーダンスNEGLEX2496 二重円筒コード  | 
                
| 往復抵抗 | 1Ω | 
| 容量 | 130pF | 
| <コントロール機能> | |
| 制御方式 | YAMAHAロジックLSI(YM-294)制御 | 
| フルオート機能 | 2サイズ(17cm/30cm)、オートリードイン、オートリターン、フェイルセーフ オートリピート(クイックリピート)、オートカット、オートアップ(Power off)  | 
                
| マニュアル機能 | 2スピード(スロー、ファースト)アーム送り、アームアップ・ダウン | 
| <外装関係> | |
| キャビネット | BMC(Bulk Molding Compound) | 
| 操作方式 | フロントオペレーション ライトタッチスイッチ、LEDディスプレイ  | 
                
| ダストカバー | 4mm厚アクリル製、1.1kg | 
| ヒンジ | 着脱型 | 
| インシュレーター | スプリング・ゴム複合型 | 
| <総合> | |
| SN比 | 77dB(DIN-B、IEC98A weighted) | 
| ワウ・フラッター | 0.015%WRMS(FGダイレクト) 0.025%WRMS(テストレコード法)  | 
                
| 電源電圧 | AC100V、50Hz/60Hz | 
| 定格消費電力 | 25W | 
| 外形寸法 | 幅469x高さ149x奥行428mm | 
| 重量 | 12kg |