YAMAHA P-850
¥59,800(1981年頃)
解説
P-650のリファイン版として発表されたレコードプレイヤー。
2サイズ・純電子式フルオート機能を搭載しており、レコード再生時はターンテーブルにレコードを乗せ、Disc
Sizeボタンでサイズを選択し、Playボタンを押すだけで最初の曲の先頭にオートリードインします。
P-850では、キャビネットに固定した3つのフォトインタラプタとトーンアームに固定したロジックシャッタからなるフォトセンサによって動作してます。トーンアームがいかなる位置にあってもフォトインタラプタから出る3ビットの信号を内蔵のマイクロコンピューターが処理し、トーンアームを指定の位置までスムーズにコントロールします。また、このフォトセンサはアームのレスト位置やリターンゾーンの検出も行っています。
このフルオート機能の全ての検出動作は光学式なので、非接触で音質への悪影響がありません。
マイクロコンピューターによる、アップ・ダウン、オートリターン、オートリピート、オートカット動作が可能です。
曲の途中で演奏を中止したい場合にカットボタンを押すと、マイクロコンピューターからの信号によりアームリフタ用モーターがONになり、アームが上昇します。それが完了すると水平方向のコントロールが開始され、トーンアームはレスト位置まで戻ります。
オートリターンはレコードのリードアウト溝のピッチが広いことを利用した速度検出型を採用しています。トーンアームドライブモーターに内蔵された速度検出用コイルに発生した速度信号はマイクロコンピューターに常時送られていますが、リターンゾーン中でアームの速度が大きくなるとそれを検出し、自動的にリターン動作に入ります。
またリピート動作は、オートリターン後再びオートリードインするという動作の繰り返しを行います。
ミューティング回路を搭載しています。
P-850ではフルオート動作以外にマニュアル動作が可能で、この場合でもマイクロコンピューターがコントロールを行っています。
水平方向のアクセスは、PX-2と同方式の2スピードアクセスで、センタークリック付きのボタンのストロークの違いによりファーストアクセスとスローアクセスの使い分けが可能です。
また、アームのアップ・ダウンは、フルオート操作時のシステムを外部ボタンからの信号でマイクロコンピューターが制御する方式となっています。
トーンアームには、アーム自体のあらゆる共振を少なくするためにヤマハが開発したARS(Anti
Resonance Straight)アームを採用しています。
ARSアームはストレートパイプを採用した左右対称構造としたことで捩れ振動が殆ど発生しません。また、支点に極力近づけた大型横長矩形のバランスウェイトや、通常の倍以上にしたピボット間のスパン、軸受のアンギュラコンタクトベアリングのゴムダンパーなど、感度アップとガタによる共振の排除を図っています。さらに、パイプホルダを大型で堅牢にし支点から30mmを2重構造にすることでパイプ前後のたわみ振動にも対処しています。
また、アームの低域共振周波数は、ダイレクトカットレコードの再生スペクトルを測定した結果から12Hzに決定されています。さらに、代表的なMM/MC型カートリッジ30機種の質量とコンプライアンスの平均値を求め、アームの実効質量を決定しています。
P-850ではトーンアームのドライブシステムにコアレスダイレクトドライブモーターを採用しています。
構造的には、ストレートトーンアームの最下部に2つのコアレスローターコイルが対称に固定されており、トーンアームと一体化して働きます。そして、このコイルから僅かに離れて、2極に着磁されたステータマグネットがキャビネットに固定されています。2つのコイルの一方はアームドライブ用で、コイルに電流を流した時のフレミング左手の法則によるコイルの回転力を利用し、コイルに流れる電流の大きさと向きをコントロールすることによって、トーンアームをコントロールしています。
また、もう一方のコイルはトーンアームの速度検出用となっています。アームが回転すれば、そのコイルを横切る磁束密度が変化するため、速度に比例した電圧がコイル中に発生します。そしてこの速度信号がサーボ回路にフィードバックされ、アームの回転速度をコントロールします。
これにより、リードイン時の誤差を極めて狭い範囲に納めることが可能なうえ、アームの動きも滑らかにしています。また、非接触ドライブ方式であり、駆動力伝達部分にギアやプーリが無いため、機械的ノイズの発生が無くメンテナンスフリーとなっています。
マイクロコンピューターによるフェイルセーフ機能を搭載しています。
左右に送られているアームが外力で止められると0.5秒後に自動的にストップし、メカニズムの損傷を防ぎます。
また、2つ以上のボタンを押した場合にはマイコンがより安全な動作を優先させます。優先順位はCut<Left/Right<Up/Down<Playとなっています。
Power ON時には自動的に33rpm/30cmがセットされ、45rpm/17cmの場合はスピードを45rpmに切換えるだけでサイズもセットされます。
また、例外的な33rpm/17cmや45rpm/30cmなどの場合にはスピードセット後にサイズボタンを押すことで対応できます。
ヘッドシェル部は信頼性が高くカートリッジ交換が容易な差込型を採用しています。また、針圧調整はスライドウェイト式となっています。
駆動モーターにはDC4相8極コアレスホールモーターを採用しています。
このモーターは原理的にコギングが無く、またホール素子を採用した非接触型なので、機械的・電気的ノイズが少なく抑えられています。
サーボ回路には水晶の精度で制御するクォーツPLLサーボを採用しています。
この回路では、ターンテーブルの回転数を全周積分型のFG(周波数発電機)で検出し、水晶発振器からの信号と位相比較して精度の高い回転を得ています。
キャビネットにはBMC材を採用しています。また、3mm厚のアクリリックレジン製のダストカバーや、特殊ゴム製のW型折り返しインシュレーターを採用することで、ハウリングマージンの向上を図っています。
機種の定格
型式 | レコードプレイヤー |
SN比 | 77dB(DIN-B、IEC 98A weighted) |
ワウフラッター | 0.015%(FGダイレクト) 0.025%(テストレコード法) |
アーム全長 | 290mm |
アーム有効長 | 222mm |
実効質量 | 針圧比例型(針圧1.5g時:11g) |
アームリフター | 専用モーターによる動作 |
ミューティング | アームリフター連動 |
アンチスケーティング | 回転操作型スプリングレバー式 |
適合カートリッジ | 2.5g~10g |
ヘッドシェル | 付属 |
PUケーブル | 容量:100pF 往復抵抗:1Ω |
フルオートマティックコントロール | マイコン制御(マニュアル操作可能) |
アームの水平方向駆動 | マイコン制御DCコアレスモーターDD |
回転系 | DC4相8極コアレスホールモーターDD |
サーボ方式 | クォーツロック |
回転数 | 33・1/3rpm、45rpm、LEDロックインジケーター付 |
ターンテーブル | 30cmアルミダイキャスト製、1.6kg(ゴムシート含む) |
キャビネット | BMC(Bulk Molding Compound) |
電源電圧 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 10W |
外形寸法 | 幅440x高さ132x奥行376mm |
重量 | 7.5kg |