
YAMAHA C-1(C-I)
※受注生産品
¥400,000(1975年頃)
解説
ステレオパワーアンプB-Iの性能を最大限に発揮するために開発されたコントロールアンプ。
C-IはB-Iと同時に開発が着手されましたが、非常に複雑な構成となっているために完成までにはるかに多くの時間を要しました。
C-IとB-Iを組み合わせることで信号経路の完全FET化が可能となります。
C-Iの回路は信号経路を全段FET化した2種類のユニットアンプを組み合わせて構成されてます。
イコライザーやトーンコントロールなどの比較的増幅度を必要とする回路には、初段にNチャンネル差動増幅、2段目Pチャンネルソース接地位相反転増幅、終段NチャンネルSRPPの3段直結回路のユニットアンプAを使用しています。初段の増幅回路にはローノイズでGmの高いFETを選別し、さらに電気・温度特性の揃った2つのFETを選び出してペアで使用しています。また、差動回路によって外来ノイズや電源からのノイズなどの同相ノイズ成分は出力に現れず、極めて低雑音な特性を実現しています。さらに出力段をSRPPにしたため、高電源電圧とあいまって十分な振幅をリニアに得ています。
AuxやTuner、Tape、Pre outなどの増幅度をあまり必要としない回路には、初段差動増幅、2段目Pチャンネルソース接地、終段Nチャンネルソースフォロアの3段直結回路を用いたユニットアンプBをバッファーアンプとして使用しています。
ユニットアンプAとユニットアンプBはFETによって初めて構想されFETのために設計された回路となっており、単にトランジスタをFETに置き換えるのではなく、FETという素子の性能を発揮するように設計されています。
イコライザー回路はユニットアンプAを片チャンネルに2つ使用したCR型を採用しています。
カートリッジの出力は前段のユニットアンプで増幅され、コンデンサと抵抗で構成されたRIAA補正回路を通過し、後段のユニットアンプで増幅されます。前段のユニットアンプには許容入力とSN比を大きく取るため、+100V、-110Vの高電源電圧を定電圧で供給しており、60Vr.m.s以上の出力を低歪で得ています。また、許容入力はレベルコントロールを併用することによって十分な値を得ています。
CR型イコライザーを採用したためイコライザー回路による歪率の劣化はほとんど無く、さらに帰還回路の時定数の問題は解消されています。
C-Iにはトーンサーキットスイッチを搭載しており、スイッチ1つでシンプルなプリアンプとしても使用できます。
トーンサーキットスイッチでは、トーンコントロール、トーンイコライザー、フィルター、ラウドネス回路を信号経路から分離でき、イコライザー出力はフラットアンプを通してメインアンプへと流れます。
C-Iでは諸特性を改善するため、ユニットアンプ自体の裸特性を徹底的に吟味し、出来うる限り広帯域、低歪率に仕上げた上で安定な負帰還をかけることで優れた周波数特性や位相特性、過渡特性、低歪率特性を得ています。さらに諸特性が配線の引き回しやプリントパターンによっても変化するため、これらに対しても十分検討が加えられています。
SN比に関しては回路全体のインピーダンスを低くすることや、シールド、配線や部品配置の検討、低雑音パーツの使用などが施されています。また、実使用時のSN比の向上のため片チャンネル当たり2連の高精度特殊4連ボリュームを使用しています。この2連ボリュームをトーンサーキットアンプ(トーンサーキットOFF時はゲイン14.3dBのフラットアンプ)の入力側と出力側に入れ、-∞~-20dBまではアンプの出力側で調整し、-20~-5.7dBまではアンプの入力側、-5.7dB~-0dBまではアンプの出力側で調整しています。これによりSN比は通常使用範囲で6~14dB、ボリュームを絞りきった時は14dB改善されています。
イコライザー回路のRIAA偏差を決めるイコライザー素子には±1%誤差の温度特性の小さな金属皮膜抵抗と、温度による容量変化率の異なるスチロールコンデンサとマイラーコンデンサを組み合わせており、さらに-10℃~+80℃の広い範囲での容量誤差を±1%以内に収めたブロックコンデンサを使用しています。これによりRIAA偏差を±0.2dBの高精度に仕上げています。
トーンコントロールはBass、Trebleともに21ポジションのロータリスイッチと高精度印刷抵抗を組み合わせたステップ誤差や連動誤差の少ないアッテネーターを使用しています。
さらにターンオーバー周波数が切換でき、精密なコントロールが可能です。
トーンイコライザーを搭載しており、リスニングルームの低域の補正(Acoustic)やプログラムソースの中高音域(Presence)の音色をコントロールすることができます。それぞれのコントロールの中心周波数は切り替えが可能です。
コントロールは11ポイントのステップ式で高性能なL、Cを用いたものとなっています。
ローフィルターとハイフィルターを搭載しています。
それぞれのフィルターはカットオフ周波数を2段切換でき、カットオフ周波数で-3dB、それ以降の帯域ではシャープで正確なスロープで減衰します。
聞く人の音量と音場に合わせた聴感補正が可能なコンティニュアスラウドネス回路を搭載しています。
ラウドネスカーブは0~-20dBの範囲で等ラウドネス曲線に合った正確な補正カーブが得られます。
高精度ピークレベルメーターを搭載しています。
メーター回路は対数圧縮回路と直線検波回路を1つの負帰還ループ内に入れ検波回路の素子のバラつきによる指示誤差を少なくしています。さらに-30dB以下と-30dB以上を2つの対数増幅器で分担させることで各レベルでの指示誤差を低減しています。
また、メーター切換スイッチによってPre outやRec outの信号もレベルモニターできます。さらに-30dBのメーターアッテネーターも備えているため-50dB~+35dBのダイナミックレンジを支持させることができます。
リアパネルのスイッチにより独立したピークレベルメーターとして使用でき、メインアンプのsy通力や他のアンプの出力をレベルモニターできます。
オクターブバンドあたりのエネルギーが一定のピンクノイズ発振器と、70Hz、333Hz、1kHz、10kHzの正弦波発振器を内蔵しています。
この発振器の出力は独立して外部に取り出せるため、ピークレベルメーターと組み合わせることでC-Iのチェックやオーディオ機器のテスト・測定ができます。
テープ回路は3系統搭載しており、3台同時録音やそれぞれのデッキの相互テープコピーが可能です。
また、テープモニタースイッチとレコーディングモードスイッチを独立させたことによりソースプレイと関係なくテープコピーが可能です。さらに、録音をしない場合にはレコーディングモードスイッチをRec
out offにでき、Rec out端子を信号経路から切り離すことでシールド線容量や電源をOFFにしたデッキの入力インピーダンス低下による信号経路への負荷効果を排除できます。
ヘッドホンアンプにはピュアコンプリメンタリーOTL回路を採用しています。
Phono端子は入力インピーダンスを6段階に切り替えできます。また、入力感度はイコライザ回路の前段ユニットアンプの負帰還量を変える入力レベルコントロールによって調整できます。
マイクアンプはイコライザー回路の初段のユニットアンプを使った構造となっています。
オーディオミューティングスイッチを搭載しており、アンプのゲインを-20dB下げることができます。
offのポジションではPre out端子への信号は遮断されますが、他の回路は全部動作するため、ヘッドホンだけで聞く場合にも活用できます。
モニターインジケーターにはLEDを使用しています。
B-I専用のリモートコントロール端子を搭載しています。
機種の定格
型式 | コントロールアンプ | ||||||
<アンプ特性> | |||||||
入力感度/インピーダンス | Phono1、2:2~8mV(可変)/30kΩ、41kΩ、47kΩ、53kΩ、59kΩ、100kΩ Phono3:2~8mV(可変)/47kΩ Aux1、2、Tape PB1、2、3:150mV以上(可変)/50kΩ Mic:2mV/50kΩ Ext Meter:775mV/0dB/110kΩ |
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最大許容入力 | Phono:25mV~100mV(20Hz) 200mV~800mV(1kHz) 800mV~3200mV(10kHz) Aux1、2、Tape PB1、2、3:12V(感度150mV時) Mic:200mV |
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出力レベル/インピーダンス | Pre out1、2:775mV/300Ω Rec out1、2、3:150mV/1kΩ Headphone:50mW(8Ω)/47Ω OSC:775mV/180Ω |
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最大出力レベル | Pre out1、2:7.75V Rec out1、2、3:12V |
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周波数特性 | Phono1、2、3:30Hz~15kHz ±0.2dB(RIAA偏差) Aux1、2、Tuner、Tape1、2、3:5Hz~100kHz +0 -1.5dB Mic:20Hz~20kHz ±0.5dB |
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SN比(IHF-Aネットワーク) | Phono1、2、3:70dB(IHF-Aネットワーク) Tuner、Aux1、2、Tape1、2、3:90dB(IHF-Aネットワーク) Mic:60dB(IHF-Aネットワーク) |
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ノイズレベル | Headphone:0.019μW(8Ω) 残留ノイズ:7.75μV(Volume min) 15.5μV(Volume -30dB) |
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歪率(20Hz~20kHz) | Phono1、2、3:0.02%以下(775mV) 0.02%以下(5V) Tuner、Aux1、2、3、Tape1、2、3:0.02%以下(775mV) 0.02%以下(5V) Mic:0.02%以下(775mV) |
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トーンコントロール特性 |
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トーンイコライザー特性 | Acoustic(fc=70Hz、300Hz):0、±0.5、±1、±2.0、±4.0、±6.0dB Presence (fc=2kHz、4kHz):0、±0.5、±1、±2.0、±4.0、±6.0dB ※0のポジションでは完全フラット |
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フィルター特性 |
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連続可変ボリューム確度 |
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オーディオミューティング | -20dB、off(メーター、Headphoneは動作) | ||||||
<オシレーター特性> | |||||||
周波数 | 70Hz、333Hz、1kHz、10kHz、Pink noise切換 | ||||||
出力レベル | Rec out:150mV Pre out:775mV Ext out:0~775mV可変 |
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<レベルメーター特性> | |||||||
指示範囲 | -50dB~+5dB | ||||||
指示誤差 | -20dB~+5dB ±1dB -20dB~-40dB ±2dB -40dB~-50dB ±3dB |
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周波数特性 | 20Hz~20kHz ±1dB | ||||||
応答時間 | 100μsec | ||||||
復帰時間 | 1sec | ||||||
ATT | -30dB | ||||||
Ext Meter in感度/インピーダンス | 775mV(0dB)/110kΩ | ||||||
<総合> | |||||||
使用半導体 | FET:110個 トランジスタ:143個 IC:4個 ダイオード:58個 ツェナーダイオード:2個 LED:6個 |
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ACアウトレット | switched:3系統、200W unswitched:3系統、400W |
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消費電力 | 55W | ||||||
外形寸法 | 幅460x高さ170x奥行389mm | ||||||
重量 | 17kg |