YAMAHA BX-1
¥330,000(1台、1980年頃)
解説
ピュアカレントサーボアンプを採用したモノラルパワーアンプ。
新たに電源が音質に影響を与えないピュアカレントサーボアンプを開発し、BX-1に搭載しています。
この回路は、アンプの増幅方式と電源が音質に与える影響度(素子感度)に着目して開発されたもので、信号電流が電源やアースラインに全く流れない方式を採用しています。これにより電源ラインには常に一定電流を流れるため、電源部や配線のL、C、R成分や電流変化によるノンリニアなど給電系の影響を受けないゼロ素子感度を実現しています。また、アースに信号電流が流れないため、アースインピーダンスの影響を受けにくく、低域のクロストークが改善されています。さらに、アンプ内部で負荷への電流の出し入れを行うので出力電流のループが小さく、このループから発生するフラックスの影響が少なくなっており、他から受ける影響も少なくなっています。
BX-1の基本的な回路構成は、高速正相0dBゲインのバッファアンプと高速反転0dBゲインのバッファアンプ、そして2台の全く同じ構成のニューリニアトランスファ回路付きA級パワーアンプで構成されており、この3種類4台のアンプを組合わせてモノラルパワーアンプを構成しています。
回路動作は、まず高速正相バッファアンプと高速反転バッファアンプで高精度の平衡信号を作り、全く同じ構成の2台のパワーアンプに入力し、出力をフローティング出力として取り出しています。
この回路では出力をフローティングで取り出しているので、一方のアンプからの出力電流は必ずもう一方のアンプに吸収されます。このため、共通給電線を流れる電流が出力信号に依存しない一定の直流電流となるためには、2台のアンプの電源電流波形が出力電流に対して歪の無い全く相似な波形となっている必要があります。そこでBX-1では、A級アンプの電源電流をさらに低歪率化するニューリニアトランスファ回路を採用し、電流歪をさらに低減することでピュアカレントサーボアンプを実現しています。
ニューリニアトランスファ回路では、エミッタ抵抗の電圧降下を一定にする様に動作しています。これにより、Nch・Pch各トランジスタのエミッタ電流変化が出力電流の1/2ずつ逆位相で受け持つようになり、電流波形の歪を改善しています。
各ユニットアンプはそれぞれ必要性に応じた特別な回路となっています。また、共通点して「フィードフォワード補償による高速性」「2ポール補償による可聴帯域内NFBの重視」「入力段から電圧・電流のダイナミックレンジの拡大」「カスコード接続の多用」「クォリティパーツの全面採用」という5点の特徴を持っています。
正相0dBアンプは、FET差動入力でカスコードブートストラップ回路をアッセンブリーしフィードフォワード補償回路を採用するなどによって、Delay
Time 10msという超高速アンプとなっています。また、反転0dBアンプは、カレントミラーコンプリメンタリープッシュプル入力で、フィードフォワード補償、2ポール位相補償を採用し、Delay
Time 40msの高速反転バッファとなっています。
反転アンプでは入出力間のディレイタイム内で、入出力の位相差から出力エッジに逆方向のオーバーシュートがでます(ディレイタイム内はパンチスルーとなるため)が、この影響を少なくするためにアンプ部に5倍のゲインを持たせ、出力端で1/5にアッテネートし、0dBのアンプとしています。
プリドライブ・ドライブアンプ部の初段は交叉結合型プッシュプル入力回路となっており、最大ドライブ能力40mAを実現しています。またプリドライブ段は、直流的には差動、交流的にはエミッタ接地となっており、出力電流は最大約40mAとなっています。このステージは通常の音声信号ではA級動作となり、しかもカレントミラー部を除いて電流は打ち消されています。
ドライブ回路は、ドライブトランジスタのエミッタ電位を基準としたカスコード接続となっており、パワートランジスタのVBEによりドライブトランジスタのVBEが変化しないようにしています。
このプリドライブ・ドライブアンプは、全段カスコード接続となっています。
出力段は、Pc150Wのトランジスタによるピュアコンプリメンタリートリプルプッシュプルの出力段2組で構成されており、sy通力段トータルでは総合コレクタ損失1800Wという余裕のある設計となっています。
また、8Ω・4Ωのいずれの負荷においても定格出力を100Wとするため電源電圧、アイドリング電流を切換えています。
出力段への電源供給は、大型トロイダルトランスからの交流をtrr200nSの大電流高速ダイオードで整流し、+−それぞれ47,000μFのオーディオ用大容量電解コンデンサーで平滑化しています。
ドライブアンプへの電源供給は出力インピーダンスが200kHzで1mΩ、入出力絶縁比が200kHzで100dB以上のローノイズ定電圧電源を採用しています。
万一スピーカー端子に直流電圧があらわれた場合や、ヒートシンクの温度が上昇しすぎた場合に動作する保護回路を搭載しています。この回路はトランジスタミュートとスピーカーショートリレーと±B遮断リレーをプロテクションコントロールで制御しています。
リレーの接点は信号経路に全く入らず、±B遮断リレーもDCの一定電流が流れている部分で音質に対する悪影響を低減しています。
パーツによる音質に対する影響を考慮し、回路内の各時定数にはポリプロピレンフィルムコンデンサ、位相補償にはマイカコンデンサ、信号経路の抵抗は全て金属皮膜抵抗、定電圧電源の出力にはポリプロピレンポリカーボネート複合コンデンサ、入力NF抵抗には窒化タンタル抵抗を採用しています。
機種の定格
型式 | モノラルパワーアンプ | ||||||
定格出力(10Hz~20kHz、歪0.002%) | 100W(4Ω・8Ω) | ||||||
全高調波歪率(4Ω・8Ω) | 0.001%(10Hz~20kHz、50W) 0.005%(100kHz) |
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パワーバンド幅 | 10Hz~100kHz(歪0.005%、50W) | ||||||
入力感度/インピーダンス(100W、1kHz) | 1V/27kΩ | ||||||
混変調歪率(50W、50Hz:7kHz) | 0.001%(4Ω・8Ω) | ||||||
周波数特性(8Ω、1W) |
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残留ノイズ(IHF-A、入力ショート、8Ω) | 20μV以下 | ||||||
SN比 | 123dB | ||||||
ライズタイム | 0.3μsec | ||||||
スルーレイト | 600V/μsec | ||||||
ダンピングファクター | 160(1kHz) | ||||||
使用半導体 | トランジスタ:165個 ダイオード:89個 FET:2個 ツェナーダイオード:26個 |
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電源電圧 | AC100V、50Hz/60Hz | ||||||
定格消費電力 | 370W | ||||||
外形寸法 | 幅271x高さ230x奥行488mm | ||||||
重量 | 18.4kg |