
YAMAHA B-1
¥335,000(1974年頃)
解説
オーディオ用縦型パワーFETを採用したステレオパワーアンプ。
B-Iはオーディオ用としてヤマハが特に開発した縦型FET3種類、横型FET3種類を使用しており、片チャンネル14個のFETを使用するとともに信号経路を全段FET化しています。
回路構成は三段差動アンプ、ソースフォロア対称ドライブ方式シングルプッシュプルOCL、SEPP方式の全段直結構成となっており、ドライブ及びパワー段に縦型FETを用いるとともに随所に縦型FETを組み合わせて回路を構成しています。
入力回路にはデュアル横型FETを使用しています。また、全段FET構成のゲイン0dB前置増幅器を内蔵しており、ランブルフィルター、レベルコントロール、リモートコントロールの為のインピーダンス変換の機能を持たせています。背面スイッチでこのアンプをスルーできる設計となっています。
パワーアンプ部は出力段にドレイン損失300W(Tc=25℃)の大出力縦型FETをシングルプッシュプルで使用し、ドライブ回路はヤマハ製の全段FETによる3段差動、終段はソースフォロアによる直結ドライブを採用しています。
同一チャンネルのFETによるシングルプッシュプルのため、ペア選別が容易となり、プッシュプルの平衡が取りやすいため安定した動作が得られています。
B-Iではほぼ2乗特性に近いFETの入出力特性により、耳につきやすい3次以上の奇数次高調波歪が少なくなっています。また、プッシュプル回路によって偶数次高調波歪が打消し合うため歪み成分の少ない素直な音質を実現しています。さらにバイポーラトランジスタアンプで起こるキャリアの蓄積効果によるノッチ歪もFETアンプでは少なくなっており、音質を改善しています。
パワー段およびパワーをドライブするソースフォロアには縦型FETを、少信号を扱うプリドライブ段には横型FETによる差動アンプを、入力段には特に特性の良く揃ったデュアルFETを採用しており、温度ドリフトや雑音の少ない優れた回路を実現しています。
パワーFETとドライブFETは特殊なバイアス方式による安定化によって非安定化電源でもパワーFETのバイアス電流を安定に維持しています。また、ブートストラップ回路や電解コンデンサーの使用を極力避けるとともに低域時定数を現象させ、過渡特性の向上を図っています。
電源部は2電源トランスによるLch/Rch独立駆動を採用しており、2個の完全に独立した大型電源トランスを用いることで両ch駆動時と片ch駆動時で出力に差がありません。
パワー段の電源用コンデンサーには片チャンネルに定格電圧100VDC、サージ電圧120V
DC、耐リップル電流15A、容量15,000μFx2のものを使用しており、両チャンネルあわせて60,000μFとなっています。
また、その他の電源には短絡保護回路付きの自動復帰型定電圧電源を採用しています。
スピーカー保護回路、過電流/過負荷保護回路、バイアス電源回路保護回路、熱検出保護回路を搭載しています。保護回路の動作はOver
LoadまたはThermalのインジケーターで確認できます。
スピーカー保護回路では、パワーアンプの出力に±2V以上の直流電圧が発生した場合、純電子式DC検出回路がスピーカーリレーの接点を開き、スピーカーをアンプから切断します。
この回路はパワーSWのON/OFF時に発生する過渡的なノイズをスピーカーより発生させないミューティング動作を兼用しており、電源ON/OFF時のショックノイズを除去しています。また、この回路は直流電圧が消滅すると保護回路を解除して自動復帰します。
過電流、過負荷保護回路では、4Ω以下の低負荷時や負荷ショート時に過電流が流れた場合に過電流を検出し、パワーFETに供給されている±B電源を電子スイッチによって遮断し、パワーFETと電源回路を保護します。
過電流過負荷保護は純電子式に行い、故障や過負荷が取り除かれると自動復帰します。
バイポーラトランジスタと異なり、FETはゲートソース間にバイアスがかからないと大電流(IDSSに相当する電流)が流れて破壊されます。これを防ぐため、B-Iには短絡保護回路つき自動復帰型の定電圧電源を持つバイアス電流保護回路が設けられています。これにより何らかの原因でバイアス電流が故障してもパワーFET用電源の±Bは遮断され、パワーFETは保護されます。
熱検出型保護回路では異常発熱による温度上昇を検出し、±B電源を遮断します。
その他の保護回路ではOver Loadインジケーターのみが点灯しますが、熱検出型保護回路の場合はThermalインジケーターとOver
Loadインジケーターの両方が点灯します。
入力回路はnormalとdirectの2系統を搭載しています。
normal入力にはカットオフ周波数10Hz、12dB/octの減衰特性の能動フィルターを装備しており、背面にあるスイッチでON/OFFができます。この回路によって超低域の不必要な信号をカットすることができます。
別売りの専用アダプターUC-Iを使用することでB-Iの仕様範囲を拡大することができます。
UC-Iには電源スイッチ、フィルタースイッチ、個別にレベルセット可能な5系統のスピーカーセレクター、-50dBから+5dBがレンジ切換え無しで表示できる対数圧縮型ピークレベルメーターを装備しています。
ピーク指示パワーレベルメーター回路は、信号のピーク値を一波まで精度よく表示するよう特に開発されたもので、10kHzの制限は一波でも-2dBいないの指示誤差に入る高性能の指示特性を示しています。メーター回路には対数圧縮回路と直線検波回路を1つの不帰還ループの中に入れた構成となっており、検波回路での素子のバラつきによる指示誤差を軽減しています。また、-30dB以下と-30dB以上を2個の対数増幅器で分担しており、各レベルの表示誤差を小さく抑え、広いレンジが切換えなしで表示できるようにしています。
UC-Iはリモートコントロールセンターとしての使用と本体に取り付けて使用の2種類の使用方法ができます。
機種の定格
型式 | モノラルパワーアンプ | ||
回路方式 | シングルプッシュプルOCL、SEPP回路 | ||
ダイナミックパワー | 360W(8Ω、IHF) | ||
実効出力(両ch駆動) |
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パワーバンド幅(IHF、両ch駆動) | 5Hz~50kHz | ||
ダンピングファクター | 80(1kHz、8Ω) | ||
全高調波歪率(8Ω) |
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混変調歪率(70Hz:7kHz=4:1) | 0.04%(8Ω、100W出力時) | ||
周波数特性(8Ω、1W出力時) | 5Hz~100kHz +0 -1dB | ||
入力インピーダンス | 100kΩ | ||
入力感度 | 775mV | ||
レベル可変幅 | 18dB(775mV~6V) | ||
残留雑音 | 0.3mV | ||
S/N | 100dB | ||
ランブルフィルター | 10Hz、-12dB/oct | ||
入力端子 | Normal/Direct、スイッチ切換 | ||
出力端子 | 1系統(B-1単体) 5系統(UC-1使用時) |
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付属回路 | Over Loadインジケーター パワーFET保護回路(自動復帰・純電子式過電流保護回路) スピーカー保護回路(電圧検出リレー駆動方式) Thermalインジケーター(温度上昇検出保護回路) ランブルフィルタースイッチ |
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使用半導体 | FET:39個 トランジスタ:113個 LED:3個 ツェナーダイオード:7個 ダイオード:64個 |
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電源 | AC100V、50Hz/60Hz | ||
定格消費電力 | 440W(電気用品取締法) | ||
外形寸法 | 幅460x高さ150x奥行390mm | ||
重量 | 37kg | ||
別売 | 専用アダプター UC-1(¥50,000) |