YAMAHA A-9
¥245,000(1979年頃)
解説
CA-2000系に続くヤマハの新しい最高級アンプとして発表されたプリメインアンプ。
A-9はの基本的な回路構成は、ピュアカレントサーボアンプ方式DCイコライザ、ピュアカレントサーボアンプ方式フラットアンプ、ニューリニアトランスファ回路を搭載したA級/B級切換え式DCメインアンプとなっています。
また、必要に応じてローノイズMCヘッドアンプとピュアカレントサーボアンプ方式トーンコントロールアンプを挿入できるようになっています。
A-9ではプリアンプ回路にピュアカレントサーボアンプを採用しています。
このピュアカレントサーボアンプは、信号電流が電源やアースラインに全く流れない方式で、電源ラインには常に一定電流を流しています。これにより電源部や配線のL/C/R成分だけでなく電流変化によるノンリニアなどの給電系の影響を受けないゼロ素子感度を実現しています。
また、ピュアカレントサーボアンプではアースに信号電流が流れないためアースインピーダンスの影響を受けにくく、低域のクロストークが改善されています。さらにアンプ内部で負荷への電流の出し入れを行うので出力電流のループが小さく、ループから発生するフラックスの影響を少なく抑えています。
イコライザアンプ部にはピュアカレントサーボアンプ方式のDCイコライザ回路を採用しています。ピュアカレントサーボアンプ方式を採用することでアンプへの供給電流の変化分をA級アンプ部のみの場合と比較して約100分の1以下に減少させ、電源部の素子感度をその分低減し、ほぼ0に抑えています。
イコライザアンプ部の基本回路構成は、ローノイズデュアルFET差動の初段、SEPP
OCL出力段のDCアンプ構成となっています。
フラットアンプ部にもイコライザアンプ部と同様にピュアカレントサーボアンプ方式を採用したDCアンプを採用しています。
初段にはDCドリフトを抑えるため1チップ・デュアルFETと1チップ・デュアルトランジスタを使用しており、差動の電流バランスをとる2本の抵抗にも3本足の金属皮膜デュアル抵抗を採用しています。これら1チップデュアルのFET/TR/抵抗を用いたことで、パワースイッチをONにしてから定常状態に至るまでの時間ドリフトや周囲温度の過渡的・定常的変化を大きく改善しています。また、DCのオフセット調整精度を上げるため、メタルグレーズのボリュームを粗調・微調と2個用いています。
トーンコントロールアンプ部の回路は、ローノイズFETによる差動入力カレントミラーカスコードブートストラップ回路と、ピュアコンプリメンタリーSEPP-OCL回路で構成されており、さらにピュアカレントサーボアンプ方式を採用しています。
初段にアッセンブリしたカスコードブートストラップ回路は、前段に挿入されているフィルタ類を操作した場合の信号源インピーダンス変動による歪率の増加を防いでいます。また、このトーンコントロール回路は0dBゲインに設定されているため、Tone
Circuitスイッチにより信号経路から切り離してもアンプ全体のゲイン低下がありません。
トーンコントロール方式にはヤマハのNF型を採用しており、素直なコントロール特性を得るとともに、Defeat時には特性がフラットになります。また、ターンオーバー周波数をBass/Trebleともに2段階で切り替えできます。
ローフィルタとハイフィルタは12dB/octのアクティブフィルタを採用しており、より正確な減衰特性を得るためにバッファアンプを用いています。
MCヘッドアンプ部は、電圧性ノイズを少なくするためrbb'(ベース抵抗)が低くhfeの大きなローノイズトランジスタを片ch6個使用してます。基本構成は、2段差動増幅-SEPP出力となっており、低域の時定数が少なくSVRRが大きく改善され、電源の影響を受けにくくなっています。
また、特に音質に影響を与えるカップリングコンデンサには、オーディオ専用のプラスチックケース入りコンデンサを採用しています。
メインアンプ部の回路は、デュアルFETソースフォロア回路とカスコードコンプリメンタリー差動回路による初段、カスコードコンプリメンタリー回路によるプリドライブ段、3段ダーリントンピュアコンプリメンタリーパラレルプッシュプルOCLによるドライブ・出力段のDCアンプ構成となっています。
B級アンプ特有のスイッチング歪については、High fTトランジスタを採用することで100kHzという高い周波数においても観測出来ない小さいレベルに抑えています。また、同じくB級アンプ特有のクロスオーバー歪については、新開発のニューリニアトランスファ回路を搭載することで大幅に低減しています。
このニューリニアトランスファ回路は、バイアス回路にパワーアンプ終段のバイアス変化分を検出・フィードバックし、等価的にVBEのリニアリティを改善しクロスオーバー歪を大幅に低減しています。
A-9では、ニューリニアトランスファ回路付きB級パワーアンプ部の動作を、オペレーションスイッチの切換えによって純A級動作に切換えることができます。
回路的には、オペレーションスイッチをclassAに切換えるとパワーアンプの終段の電源電圧が±65Vから±30Vへ切換り、その電圧を検出してアイドリング電流が80mAから1.4Aへと切換ります。
A-9ではメインアンプ部の出力インピーダンスを+1Ω~0Ω~-1Ωにわたって連続可変できるRo(出力インピーダンス)コントロールを搭載しています。このRoコントロールはスピーカーのダンピング特性に関与するQをスピーカーシステムを操作せずにアンプ部で変化させることができ、スピーカーシステムのQ特性やスピーカーケーブルの直流抵抗をアンプ側からコントロールして好みの音を得ることが出来ます。
例えば、比較的Qが高くfo付近の周波数特性に少し山がある場合は、Roを−側にすることで平坦な特性が得られます。また、比較的Qが低く少しオーバーダンピングぎみのスピーカーシステムでは、Roを+側にすることで平坦な周波数特性にすることができます。
電源部には、大容量トロイダルトランスとオーディオ専用プラスチックケース入り電解コンデンサー(15,000μFx4)を採用しています。トランスは左右チャンネルで別巻線を採用し、ハイスピードダイオードを用いて左右別で整流しているため、両チャンネルのクロストークなどの悪影響が非常に少なくなっています。
フロント側をプリ部、パワーアンプ部及び電源部をリア側に配置したコンストラクションを採用しています。これにより信号の流れをスムーズにするとともに、左右チャンネル間や各回路間での干渉を低減しています。
また、プリアンプ部のピンジャックをフロントパネルのすぐ裏のサブパネルに設けることで音質劣化の大きいシールド線を排除しています。さらに、金属や磁性体による悪影響を低減するため、トップパネル面やサイドパネル面にプラスチックやアルミを用いています。
ヤマハオリジナルのオーディオ用カップリングコンデンサやハイスピードダイオード、金メッキPhono端子、高精度4連ボリューム、インジケーター付きプッシュスイッチなどの高級部品を採用しています。
実使用時のSN比を改善するため高精度4連ボリュームを採用しており、片チャンネル当り2連のボリュームをフラットアンプの入力側と出力側に挿入しています。これによりボリュームを絞る実使用時の特性を大幅に改善しています。
Pre outやヘッドホン出力に使用しているミューティングリレーは、従来のように信号経路にシリーズに入ることはなく、使用時に信号がリレーを通過しないように設計されており、接点による音質劣化を抑えています。
-20dBのオーディオミューティングを搭載しています。
Rec outセレクターを搭載しています。
サブソニックフィルターを搭載しています。
機種の定格
型式 | プリメインアンプ | ||||
定格出力(両ch駆動、 20Hz~20kHz、Main in-SP out) |
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パワーバンド幅 (Main in-SP out、8Ω) |
classA:10Hz~100kHz(0.007%、15W) classB:10Hz~100kHz(0.01%、60W) |
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ダンピングファクター | -8~200~+8の範囲で可変(8Ω、1kHz) | ||||
入力感度/インピーダンス (抵抗+容量) |
Phono1、2 MC:100μV/100Ω Phono1、2 MM:2.5mV/47kΩ(100pF/220pF) Tuner、Aux、Tape1、2:150mV/47kΩ Main in:1V/10kΩ |
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最大許容入力(1kHz、0.005%) | Phono1、2:MC:11mV Phono1、2 MM:280mV Tuner、Aux、Tape1、2:17V |
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出力電圧/インピーダンス/最大出力 (1kHz、0.005%) |
Rec out1、2:150mV/220Ω/17V Pre out:1V/600Ω以下/3V |
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周波数特性 | Phono-Rec out(RIAA偏差):20Hz~20kHz ±0.2dB Tuner-SP out:4Hz~100kHz +0 -0.5dB |
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全高調波歪率 | Phono1、2 MC-Rec out(5V):0.005% Phono1、2 MM-Rec out(5V):0.002% Tuner、Aux、Tape-Pre out(2V):0.001% Tuner、Aux、Tape-SP out(60W、8Ω、classB):0.0025% Tuner、Aux、Tape-SP out(15W、8Ω、classA):0.002% |
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SN比(IHF-Aネットワーク) | Phono1、2 MC:74dB Phono1、2 MM:88dB Tuner、Aux、Tape1、2(Tone off):110dB Tuner、Aux、Tape1、2(Tone on):102dB Main:120dB |
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トーンコントロール可変幅 | Bass:±10dB(20Hz、ターンオーバー500Hz) Treble:±10dB(20kHz、ターンオーバー2.5kHz) |
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ターンオーバー周波数 | Bass:125Hz、500Hz Treble:2.5kHz、8kHz |
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フィルター特性 | 15Hz、12dB/oct 70Hz、12dB/oct 10kHz、12dB/oct |
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チャンネルセパレーション (Volume -30dB、1kHz) |
MC-SP out(入力ショート):75dB以上 MM-SP out(入力5.1kΩ):70dB以上 Tuner-SP out(入力5.1kΩ):70dB以上 |
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オーディオミューティング | -20dB | ||||
ヘッドホン出力 | 100mW(8Ω、定格出力時) | ||||
ヘッドホン出力インピーダンス | 270Ω | ||||
ライズタイム | 1μsec(8ΩLoad、Tuner in) | ||||
ACアウトレット | switched:total 100W max unswitched:total 200W max |
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消費電力 | 375W | ||||
外形寸法 | 幅460x高さ155x奥行426mm | ||||
重量 | 21kg |