
WADIA Wadia861
¥1,390,000(2000年6月発売)
解説
最新の技術成果を結集して開発されたCDプレイヤー。
D/A変換部にはワディア独自のDigiMaster2.4を搭載しています。
一般的な方式ではデジタルフィルターとアナログフィルターで周波数領域を制御して行いますが、DigiMaster2.4では超高速演算DSPとデジマスターソフトウェアとのコンビネーションによってタイムドメイン(時間領域)の高精度・高忠実度補完を行います。これにより飛び飛びのデジタルデータをアナログに戻すD/A変換処理において周波数領域の方式が抱える群遅延やトランジェントリップルなどの問題を解決しています。
Wadia861では24ビットの処理能力で動作する2基の超高速演算素子モトローラ56004
DSPと両チャンネルで計4個のバーブラウン1704K DACチップを搭載しており、44.1kHz/16bitのCDや外部入力48kHz/24bitまでのデジタル信号に対して最高32倍(1,536MHz)、96kHz/24bitでは16倍(1.536MHz)のリサンプリングによる補完を行い、高忠実度再生を実現しています。
Wadia861に搭載されたデジマスター・ソフトウェアは当時最新のDigiMaster2.4では従来の標準モードに加えて新たに2種類のアルゴリズム切替え機能が付加されています。
Algorithm Aは、ワディアの伝統的なタイムドメイン・インターポレーション・アルゴリズムでイメージフォーカスと空間表現に優れた音響を再現します。パスバンドの平坦特性という周波数特性的には20kHzあたりでわずかながら2dB程度ロールオフする反面、ワディアのアドバンテージを果たすアルゴリズムとなっています。
Algorithm Bはタイムドメイン特性を大きく犠牲にせずに維持しつつAlgorithm
Aよりもパスバンドの平坦特性を改善しています。
Algorithm CはAlgorithm Bよりもパスバンドの平坦特性をもう一段改善しており、タイムドメイン特性を若干緩和させ、全帯域にわたる優れたアンプリチュード特性を獲得しています。
PowerDAC開発の中から生まれたスイフトカレントI/Vサーキットを搭載しています。
この回路はウィルソン・カレントミラー回路の技術で完成した特許”SC-1 Current
Conveyor”ICを用いて一般的I/V変換回路では不可避とされるグローバルフィードバックを排したI/V変換を実現したもので、広帯域にわたって優れた過渡特性と安定性を獲得しています。
I/Vステージに直結された最終出力回路には高キャパシタンス・低インピーダンスの負荷でもドライブできる250mAの高出力電流と15Ωの低インピーダンスを持つバッファードライバーを搭載しており、パワーアンプのダイレクト駆動も可能です。
内部においてCDトランスポート部とDAC部がクロックリンクされています。これによりDAC部の最も近くに配備された超高精度のマスタークロックによってCDのサーボと信号処理を制御し、DACの動作モードを一体化することで超低ジッターを実現しています。
回路実装では、さらなるRF信号の低干渉化とジッター低減を目指したアドバンスド・サーキットボードレイアウト・テクニックを採用しています。さらにD/Aメインボードの表面実装化を積極的に推進し、2ポールの高音質アンチRFフィルターの採用とあいまって不要帯域のデジタルノイズ干渉を排除しています。
さらに、要所にフェライトRFIノイズフィルタリング素子を配置することで、相乗効果によってアナログパワーサプライとアナログシグナルへのデジタルノイズの輻射を防いでいます。
筐体にはWadia6以来リファインを重ねてきた最新世代のスーパーデチューンド・エンクロージャーを採用しています。
ボリュームコントロールとしてワディア独自のデジタルボリュームコントロールを搭載しています。
このボリュームは0.5dBステップで可変範囲は50dBとなっています。基準レベルはアンプやスピーカーの感度の違いに応じて内部のセレクターで0.3Vから4.2Vの5段階に設定可能です。また、0.2dBステップのL/R音量レベルバランスコントロールも可能です。
96kHz/48kHz/44.1kHz/32kHzの24bitまでの各サンプリングレートをサポートする4系統のデジタル入力端子と4系統のデジタル出力端子を搭載しています。
スリーピングデジタルインプット機能を搭載しており、使用していないデジタル入力端子はスリーピングモードにできます。これにより入力端子からの不要ノイズによってデジタル信号が汚染される心配がありません。
デジタル・サーボコントローラー部とD/Aコンバーター部の電源供給にはそれぞれ専用にトロイダルトランスを採用しています。
各ステージの多段電源レギュレーターと要所要所に配備されたフェライトコアによるノイズフィルターの効果と相まって、アナログ回路へのデジタルノイズの影響を徹底して排除しています。
トランスポート部にはTEAK製CMK3.2をベースとしたディスクと同一サイズのターンテーブル方式トランスポートメカニズムを搭載しています。
さらに大容量のセパレートパワーサプライを専用に投入することでVRDS方式の精度を向上させています。
外光をシャットアウトする遮光型CDドロわーを採用しており、ピックアップの読取り精度を向上させています。
筐体は内部の電磁誘導を分散させる分厚いアルミ押し出し材を頑強に組み上げたリジットな仕上げとなっています。
ブラックとシルバーの2色のカラーバリエーションがありました。
アルミブロック削り出しによる高級仕様のワイヤレスリモコンが付属しています。
機種の定格
型式 | CDプレイヤー |
<トランスポート部> | |
CDドライブメカニズム | CMK3.2型無振動リジッドディスククランピングシステム(VRDS) |
量子化ビット数 | 16ビット/チャンネル |
変調方式 | EFM |
誤り訂正方式 | CIRC |
ピックアップ | 光学式3ビーム対象レンズ駆動方式 AlGaAs半導体レーザー 波長780nm リニア駆動サーボ |
デジタル出力 | 4系統:ST、同軸(BNC)、AES/EBU(XLR)、TOS |
<D/Aコンバーター部> | |
対応サンプリングレート | 96kHz、48kHz、44.1kHz、32kHz(自動識別) |
デコーディングソフトウェア | デジマスター・リサンプリング (32倍@32kHz、44.1kHz、48kHz、16倍@96kHz) |
デジタル処理能力 | 24ビット |
分解能 | 21ビット |
位相反転 | デジタル領域 |
出力レベル(0dB基準) | 24Vrms (内部スイッチにて5段階にセット可能 4.2V、2.4V、1.1V、0.57V、0.29V) |
出力インピーダンス | 15Ω |
アナログ出力 | バランスXLRコネクター:1組 アンバランスRCAコネクター:1組 |
デジタル入力 | STタイプ・グラスオプティカルコネクター:1系統 EIAJ規格プラスチックオプティカルコネクター:1系統 BNC同軸コネクター:1系統 AES/EBU規格XLRコネクター:1系統 |
<総合> | |
電源 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 25W |
外形寸法 | 幅432x高さ178x奥行406mm(スパイク使用時) |
重量 | 22kg |
付属 | リモートコントローラー スパイク/ポイント受けコースター各4個 |