VTL ST-150
¥825,000(2000年頃)
解説
ステレオシリーズのステレオ・パワーアンプ。
ST-150ではTetrode ModeとTriode Modeの2つの出力モードをリアパネルのトグルスイッチで切替えられます。
Tetrode Modeは一般に5極管接続と呼ばれ、第2グリッドをB+電源に接続することによって大きな出力を得ることができます。第2グリッドをプレートに直結させるTriode Modeは3極管接続と呼ばれる方式で、大きな出力こそ得られないものの歪を低減することができます。
回路構成は、初段を双3極管12AT7によるパラレル増幅回路で構成しており、ドライブ段には内部抵抗が小さく低μの双三極管6350を用いた差動位相反転回路によってパラレルプッシュ信号出力を行っています。
ヒーター回路はデリケートな信号を扱う初段を直流点火としており、より信号の安定したドライブ段と出力段は交流点火で構成されています。また電圧増幅段の整流回路には信頼性と効率を重視してソリッドステート構成を用いており、整流ダイオードから左右独立設計として出力段からの影響を受けにくくした上で、初段にはさらにπ型フィルターを採用することでさらなる安定化を図っています。
出力段は6550Cによるパラレルプッシュプル回路となっています。
6550Cは大型の電力増幅用ビーム管で、増幅率や電極材料などの改善を経てCバージョンでいっそうの完成度を獲得しています。
出力管にはそれぞれカソードバイアス(自己バイアス)と固定バイアスを併用した2段構成のバイアス回路によって全体の電流量を調整しています。真空管のクオリティを厳密に一定に保つ必要がある自己バイアスだけでなく、出力管それぞれに適切なバイアス値を与えられる固定バイアスを採り入れることで真空管の特性の僅かなばらつきも補正しています。
回路全体には6~14dBというVTLが割り出した最適量の僅かな負帰還をかけることで特性等の改善を図っています。これにより、出力インピーダンスは0.75Ω程度に抑えられ、ダンピングファクターも10~20程度となっています。
電源部に採用された電源トランスは、二重含浸処理を施すことで振動ファクターの影響を抑えており、万全のアイソレーションのもとで搭載しています。
真空管の保護にはヒューズを使用しており、万が一の場合にはメインヒューズとともに底面から容易にアクセスができます。
シャーシにはスチール折曲げ加工による堅牢で簡素なコンストラクションを徹底しています。
また、フロントパネルにも幅広いスロットを複数設け、自由な空気の流れを妨げない構造としています。
機種の定格
型式 | ステレオパワーアンプ |
定格出力 | Tetrode mode:150W+150W Triode mode:60W+60W |
入力インピーダンス | 100kΩ |
入力感度(最大出力時) | 1V |
負荷インピーダンス | 3~8Ω |
S/N比 | Tetrode mode:95dB Triode mode:97dB |
使用真空管 | 6550Cx8 12AT7x2 6350x2 |
消費電力 | 200W(アイドル時) 580W(フルパワー時) |
外形寸法 | 幅480x高さ260x奥行230mm |
重量 | 25kg |