VICTOR T-2020
¥59,800(1977年頃)
解説
2020シリーズのFM/AMチューナー。
T-2020ではFM検波回路にPLLを導入しています。PLL検波回路は、位相比較器-ローノイズフィルタ-VCOで構成されるループから成り、常に入力信号の位相にロックされた検波出力が取り出せるようになっています。
また、温度や経時変化による多少のズレも吸収して動作するために長期間高い安定度が維持されるほか、ロックレンジを外れた周波数の信号に対してフィルター効果を持つこと、ロックレンジが入力信号の強弱に応じて変化し弱い信号では自動的にバンド幅が狭くなって妨害波の排除能力が高まること、回路自体にAM抑圧能力があることなど、従来の方式では得られない検波特性を実現しています。
MPX復調回路には、パイロット引き抜き回路と、NFBによって低歪率化を図ったデコーダー、スイッチング信号を作り出すPLL回路を単一パッケージにまとめた高集積度ICを採用しています。
このICではパイロット引き抜き回路はPLLで制御されており、信号レベルの変化にも忠実に追従して19kHzのステレオ・パイロット信号をキャンセルしています。このため、後段のローパスフィルターがシンプルになり、オーディオ帯域の周波数特性や位相特性を改善できています。
同調点のドリフトを防ぐためFMオート・チューニング・ホールド回路を搭載しています。
この回路は、正確に同調をとると数秒後にホールド状態となり、離調すればただちに解除される方式を採用しています。このため、電源を切った後に再び動作させる場合でも、チューニング・ノブを動かさない限り自動的にホールド状態に復元します。
チューニングインジケーターとシグナルインジケーターを搭載しており、それぞれ5つの点灯ポイントで同調状態と電界強度を示します。
FMフロントエンドは、5連バリコンと2個のデュアルゲートMOS型FET、バッファー付きローカル・オシレーターで構成されています。
出力アンプ部はイコライザー用ICを採用することで広ダイナミックレンジを獲得しています。
エア・チェック用基準レベル・オシレーターを搭載しています。
ダブル・ミューティング回路を搭載しています。
同軸ケーブル用のF型コネクターを装備しています。
機種の定格
型式 | FM/AMチューナー |
<FMチューナー部> | |
受信周波数 | 76MHz~90MHz |
実用感度(75Ω) | 1.0μV/11.2dBf |
50dB S/N感度(75Ω) | mono:2.0μV/17.2dBf stereo:20μV/37.2dBf |
イメージ妨害比 | 110dB |
IF妨害比 | 110dB |
スプリアス妨害比 | 110dB |
キャプチャーレシオ | 1.0dB |
実効選択度 | 80dB |
AM抑圧比 | 65dB |
高調波歪率(1kHz) | mono:0.08% stereo:0.10% |
SN比 | mono:78dB stereo:72dB |
ステレオセパレーション | 50dB(1kHz) 40dB(50Hz~15kHz) |
サブキャリア抑圧比 | 70dB |
ステレオ・スレシホールド・レベル(75Ω) | 5μV/31.2dBf |
ミューティング・スレシホールド・レベル(75Ω) | mono:5μV/31.2dBf stereo:5μV/31.2dBf |
周波数特性 | 50Hz~10kHz ±0.3dB 30Hz~15kHz +0.3 -0.8dB |
出力信号レベル | Variable out:0~1.5V/2.5kΩ Fixed out:750mV/2.5kΩ DET out:160mV/2.5kΩ Rec level 50%周波数相当 |
アンテナ入力インピーダンス | 75Ω不平衡 300Ω平衡 |
<AMチューナー部> | |
受信周波数 | 525kHz~1605kHz |
実用感度 | バーアンテナ:300μV/m(49dB/m) 外部アンテナ端子:50μV |
イメージ妨害比 | 50dB |
IF妨害比 | 55dB |
選択度 | 45dB |
SN比 | 50dB |
<総合> | |
電源電圧 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力(電気用品取締法基準) | 10W |
外形寸法 | 幅480x高さ111x奥行375mm |
重量 | 5.6kg |