
VICTOR XD-Z700
¥138,000(1988年頃)
解説
ビクターのオーディオメーカーとVHS開発メーカーとしての技術とノウハウを投入して開発したDATデッキ。
メカニズム部には新開発のビクター独自メカニズムを採用しています。
ヘッドには優れた記録特性と再生特性に加え耐摩耗性も合わせ持つセンダストスパッターヘッドを採用しています。また、超小型キャプスタンDDモーターを新たに開発し、サーチ時間を短縮するためのプランジャーブレーキ機能も加えられています。
このメカニズムにはダイキャストシャーシや特殊フローティングシステムを採用しており、重さ230gと軽量でありながら安定性や耐共振性能を確保しています。直径40mmのフライホイールやテンションコントロール機構とあいまって安定した録音・再生を可能にしています。
ファイントラッキング・メカニズムとビクター独自のダブルスキャン方式によってロングプレイモードでも高品質な録音・再生を実現しています。
ダブルスキャン方式では再生する際にドラムを録音時の2倍のスピードで回転させます。これによりドラムは記録信号を二回読み取る事になるためエラーを極力抑える事が可能となり、標準モードに匹敵するクリアな長時間プレイを実現しています。
A/D変換部には左右バランスが全く等しい1チップ構成の高速縦続型A/Dコンバーターを採用しています。
さらにデジタルフィードバックによるDCサーボ回路を採用しており、微小信号の再現性を向上させています。これにより出力信号の安定度がさらに向上し、理想的なA/D変換を実現しています。
D/A変換部にはDATとしては初めて1ビットデュアルD/Aコンバーターを採用しています。
従来のD/A変換では入力されたデジタルコードを直接振幅方向のアナログ量に変換していました。このため音のクオリティを高めようとするほど二進法による符号をより正確に積む必要があり、回路もコストも嵩む結果となっていました。
これに対し1ビットD/Aコンバーターでは16ビットで入力された信号を4倍、さらにオーバーサンプリングデジタルフィルターを通して256倍にまでアップサンプリングします。そして次にノイズシェーパーを通過させてオーディオ帯域に悪影響を及ぼす再量子化ノイズを可聴帯域外にシフトアウトします。これにより得られたデジタルコードをパルス密度変調によって時間軸方向への1ビットデータストリームとしてアナログ量に変換します。この方式では従来のD/Aコンバーターのように振幅方向への精度は必要とせず、しかも時間軸で変換するパルスの幅は水晶発振器の精度でコントロールできるため、直線性に優れたアナログ変換を可能にします。また、振幅誤差によるリニアリティの問題やゼロクロス歪などが原理的に発生しないため、微小信号に対する分解能も向上しています。
内部レイアウトには5ブロックコンストラクション構造を採用しています。
この方式ではA/D、D/Aの変換部、メカニズム部、電源部、信号処理部、ディスプレイなどの表示部を完全に独立させた構造となっており、相互干渉による悪影響を排除しています。
さらに電源トランスはアナログ回路とデジタル回路に別巻線を用いる事でデジタル回路からの悪影響を排除しています。また、配線やスイッチ類のレイアウトなどにも高音質思想を反映しており、全てに最短シグナルパス設計を重視し、クロストークやロスを低減しています。
シャーシには1mm厚の鋼板を使用すると共に各所に補強リブを設けた重量設計としており、振動の影響を低減しています。
オートIDエディット機能を搭載しています。
DATでは曲の頭を示すスタートIDや不要の箇所を飛ばすスキップIDを記録できます。オートIDエディットはこのIDの打ち込み作業をスムーズにしたもので、再生しながらIDを記録したいところでボタンを押すと最適な位置をコンピューターが教えてくれ、後はIDボタンを押すだけで記録できます。
スタートIDは0.25秒きざみでマニュアルによる変更も可能です。
デジタルミキシング機能を搭載しており、アナログだけでなくデジタル入力信号に対してもテープ再生信号とのミキシングが可能です。
ミキシングされた信号のデジタル出力も可能です。
デジタルフェード機能を搭載しています。
アナログ入力やデジタル入力にワンタッチで5秒のフェードインと10秒のフェードアウトが行えます。
ディスプレイ部にはデジタルメーターを搭載しています。
デジタルピーク表示やピークホールド機能を搭載しています。
サブコード機能として、録音時のA.TimeやスタートID、プログラムNOの同時打ち込みのほか、再生時にもアフレコによるスタートID、スキップID、END情報の記録が独立サブコードキーによるワンキー操作で可能です。
デジタル入力は同軸と光の2系統を装備しています。
入出力端子には金メッキ端子を採用しています。
サンプリングモニター機能を搭載しています。
デジタル入力時もD/A変換してモニターできるため、録音直前の音質やレベルのチェックが可能です。この機能はテープが入っていない状態やSTOP状態でも使用できるため、A/DコンバーターやD/Aコンバーターとしても使用する事ができます。
リモコンでも開閉可能なカセットトレイを採用しています。
ENDサーチ機能やブランクサーチ機能を搭載しています。
イントロスキャン機能を搭載しています。
リピート再生やCue/Review機能を搭載しています。
P.Timeの表示が可能です。
タイマー録音・再生に対応しています。
ワイヤレスリモコンが付属しています。
機種の定格
型式 | DATデッキ | |||||||||||||||||||||||||||||
基本仕様 (DAT懇談会のR-DAT規格に準拠) |
|
|||||||||||||||||||||||||||||
チャンネル数 | 2チャンネル・ステレオ | |||||||||||||||||||||||||||||
周波数特性 | 標準モード:3Hz~22kHz ±0.5dB 長時間モード:3Hz~14.5kHz ±0.5dB |
|||||||||||||||||||||||||||||
SN比 | 90dB(エンファシスoff、JIS-A、標準モード録音・再生) 88dB(エンファシスOFF、JIS-A、長時間モード録音・再生) |
|||||||||||||||||||||||||||||
ダイナミックレンジ | 90dB(エンファシスoff、JIS-A、標準モード録音・再生) 88dB(エンファシスOFF、JIS-A、長時間モード録音・再生) |
|||||||||||||||||||||||||||||
全高調波歪率 | 0.007%(1kHz、標準モード録音・再生、エンファシスOFF) 0.08%(1kHz、長時間モード録音・再生、エンファシスOFF) |
|||||||||||||||||||||||||||||
ワウ・フラッター | 測定限界以下 | |||||||||||||||||||||||||||||
高速サーチ時間 | 平均アクセス・タイム15秒(R-120) | |||||||||||||||||||||||||||||
早送り・巻戻し時間 | 約50秒(R-120テープ) | |||||||||||||||||||||||||||||
誤り訂正方式 | 2重リードソロモンコード | |||||||||||||||||||||||||||||
アナログ入力 | Line(1系統):80mV(フルスケール640mV)/47kΩ、ピンジャック | |||||||||||||||||||||||||||||
デジタル入力 | Coaxial(1系統):1Vp-p/75Ω、ピンジャック Optical(1系統):光コネクター |
|||||||||||||||||||||||||||||
アナログ出力 | Line(1系統):0.25V(フルスケール2V)/800Ω、ピンジャック Phones(1系統):0~0.1mW/8Ω(フルスケール時6.3mW/8Ω)、ピンジャック |
|||||||||||||||||||||||||||||
デジタル出力 | Coaxial(1系統):0.5Vp-p/75Ω、ピンジャック Optical(1系統):光コネクター |
|||||||||||||||||||||||||||||
その他の端子 | コンピュリンク-1/シンクロ(φ3.5ミニ):2系統 | |||||||||||||||||||||||||||||
電源 | AC100V、50Hz/60Hz | |||||||||||||||||||||||||||||
消費電力 | 27W(電気用品取締法) | |||||||||||||||||||||||||||||
最大外形寸法 | 幅435x高さ135x奥行362mm(脚、つまみ含む) | |||||||||||||||||||||||||||||
重量 | 約8.3kg | |||||||||||||||||||||||||||||
付属 | ワイヤレスリモコン RM-RD700 ピンコード |