VICTOR TD-V931
¥87,000(1989年頃)
解説
共振・振動対策を徹底して追求したステレオカセットデッキ。
メカニズム作動時の揺れなどの振動を減衰するためアークベースを採用しています。
アークベースは、響きの良い針葉樹約1kgを素材にした高密度圧縮成型ボードがベースとなっており、さらに厚さ3.2mm・重さ約2.5kgの鋼板で全面をホールドしたています。また、ガラス繊維入りの剛性の高いメカホルダーをシャーシベースに固定して一体化しており、単に高剛性ベースを本体に接続するのではなく、基本設計から無共振・無振動を徹底しています。
しかも、このアークベースには音質に関係するアナログ部の各パートを5ブロックに区切るインナーシャーシを組み込みダイレクトに固定しており、シャーシ構造の強化を図ると共に録音部/再生部/電源部/バイアス発振部/入力回路部の相互干渉をカットしています。また、操作系デジタル部は1ヶ所に集中させアナログ部への干渉をシャットアウトしています。
カセットドアには新開発のエアタイト電動カセットドアを採用しています。
このカセットドアは従来のものに比べてウインドウ部分を小さくして重量アップを図っており、さらにエアタイト・ラバーを装備することで本体との密閉度を高めています。そして、電動で開閉することによってスピーカーからの音圧を遮断し、メカニズムのパーツやテープへの影響を防いでいます。
また、カセットハーフそのものの振動はハーフシェルスタビライザーで抑制し、アコースティック変調ノイズを低減しています。
ヘッド部には独立3ヘッド方式を採用しており、録音ヘッドと再生ヘッドのそれぞれに適した調整をすることで高音質化を図っています。また、録音ヘッドと再生ヘッドにはファインアモルファスヘッドを採用しており、高域特性に優れたアモルファスと、磁気特性・耐摩耗性に優れたSA(センアロイ)ヘッドの特性を持たせることでバランスの良いヘッド特性を実現しています。
さらに、ヘッドのコイル巻線やリードワイヤーには信号ロスを大幅に抑えたPC-OCC(単結晶状高純度無酸素銅材)を使用するなど、高音質化を図っています。
メカニズム部にはダイレクトドライブモーターを用いたクローズドループ・デュアルキャプスタン・メカニズムを採用しています。
このメカニズムは、独立ヘッドの両側にキャプスタンとピンチローラーを配した構造となっており、テープの巻き始めから巻き終わりまでテンションを一定に保つ事によって常に安定したヘッドタッチを実現しています。しかも二つのキャプスタンにテープが挟まれるため外乱振動を伝えにくくする効果も持っています。
また、メカベースにはアルミダイキャストを採用し、キャプスタンやピンチローラー軸の垂直度、平行度、耐振性を大幅に向上しています。さらにモーター基板には鋼板を重ねてメカ振動に対処するなど、外部振動によるアコースティック変調ノイズまでを含めたトータルな変調ノイズを効果的に低減しています。
モーターには3相6コイル・セラロックサーボのダイレクトドライブモーターを用いることで、優れたワウフラッター特性を獲得しています。
アンプ部にはDCサーボアンプを採用しており、低域で3~4dB、高域で1~2dBのS/N比を改善しています。また、細部に高音質パーツを採用することで高音質化を図っています。
また、バイアス周波数を210kHz(消去105kHz)という高いレベルに設定することで、信号電流とのビートが殆どない音質を実現しています。
電源部にはOFC巻線大型トランスと大容量コンデンサーを用いた±トラッキング制御による低出力インピーダンス電源を採用しています。この回路ではアース電位が常にゼロになるようプラス側とマイナス側が連携して動作するため、増幅アンプの安定性が保たれています。しかもハイゲインの電圧比較回路と高周波特性に優れた定電流制御回路の組合せによって、出力インピーダンスをオーディオ可聴周波数帯域で1mΩ以下まで下げることに成功しています。
さらに、電源供給は電流変化を抑えるため専用ラインで各回路へ供給しており、回路間での相互干渉を排除しています。
デッキのオペレーション状態が一目で把握できるよう、メカカウンターとレベル表示専用にディスプレイが分割されています。また、デジタルノイズの影響を排除するため録音時・再生時には、FLディスプレイをOFFにすることができます。ディスプレイ消灯時でもストップ・早送り・巻戻し・ポーズ時には点灯し、録音・再生がスタートすると自動的に消灯します。
デジタルピークのコールボタンによって最大ピークが数字で呼び出せ、レベルの確認が行えます。
ノイズの混入や回路の影響を受けずにそのまま録音するため2系統のダイレクト入力を搭載しており、その内1系統には新方式のCDファイン・ダイレクト入力方式を採用しています。
CDファイン・ダイレクト入力では、通常ボリュームの入力インピーダンスに比べて約1/10の低インピーダンス高音質ディテントボリュームを採用しており、ボリュームから発するノイズを低減しています。さらに録音入力回路のインピーダンスが低くなることによって、ピンコードやボリュームの悪影響を抑えることができ、高域周波数特性、歪、位相特性を大幅に改善しており、録音アンプのダイナミックレンジをほぼ全帯域で約6dBも向上しています。
信号経路でのノイズ混入を防止するため、セレクターやディテントボリュームにリモートバーを採用しており、フロントパネルでの操作をリアパネルの入力端子間近でコントロールするようにしています。
ノイズリダクションシステムとしてドルビーB/C NRを搭載し、さらに録音時の音質を改善するドルビーHX-PROも搭載しています。TD-V931ではNRディフィート回路を搭載しており、ドルビー回路を使用しない場合に切り離すことができます。さらに、スイッチ1つで最短距離で信号伝送が可能なダイレクトシグナルパス機能も装備しています。
録音時は録音直後のテープの音、ポーズ待機中はソースの音を自動的に切換えて出力するオートモニター機能を搭載しています。
自動選曲機能を搭載しています。
極性表示付きのOFC極太電源コードや金メッキ入出力端子を採用しています。
RECキャリブレーション(レベル・バイアス)機能を搭載しています。
タイマースタート機構を搭載しており、別売タイマーを接続することで留守録音や目覚まし再生が可能です。
ボリューム付きヘッドホン端子を搭載しています。
シンクロ端子を搭載しています。
ワイヤレスリモコンが付属しています。
機種の定格
型式 | カセットデッキ |
ヘッド | 録音:アモルファス 再生:アモルファス 消去:2ギャップフェライト |
モーター | キャプスタン用:パルスサーボDDモーター リール用:DCモーター メカニズム駆動用:DCモーター |
ワウ・フラッター | ±0.05% Wpeak(EIAJ) 0.022% WRMS |
周波数特性(-20dB録音、EIAJ) | メタル:15Hz~21kHz ±3dB クローム:15Hz~19kHz ±3dB ノーマル:15Hz~19kHz ±3dB |
SN比 | 57dB(メタルテープ、EIAJ) |
歪率 | 0.5%(EIAJ、1kHz、3次高調波歪率、メタルテープ) |
入力端子 | CD Fine Direct:80mV/15kΩ Direct:80mV/50kΩ Line:80mV/50kΩ |
電源 | AC100V、50Hz/60Hz |
最大外形寸法(EIAJ) | 幅435x高さ152x奥行333mm |
重量 | 約13kg |
付属 | ワイヤレスリモコン RM-RT931 ピンコード |