VICTOR TD-V631
¥69,800(1988年頃)
解説
独立3ヘッド構成を採用したステレオカセットデッキ。
メカニズム部にはクローズドループ・デュアルキャプスタン方式を採用しています。
この方式では独立ヘッドの両側にキャプスタンとピンチローラーを配し、テープの巻き終わりまでのテンションを一定に保っており、安定したヘッドタッチを実現しています。
TD-V631では、キャプスタン用やリール用、メカニズム駆動用にそれぞれ高精度なDCモーターを搭載しており、大きなキャプスタンには2本のベルトを用いたツインベルトドライブ方式を使用することで安定した強い駆動力を得ています。また、メカベースにアルミダイキャストを使用することで、メカ走行に関係する主要パーツの位置精度と平行度を大幅に向上し、同時にテープ走行を安定させると共に、ヘッドに外乱振動を伝えにくくし、変調ノイズも低減しています。
ヘッド部には録音用・再生用のそれぞれにファインアモルファスヘッドを採用した独立構造3ヘッドを搭載しています。
ファインアモルファスヘッドは、高域特性に優れたアモルファスヘッドに磁気特性が良く耐摩耗性に優れたSAヘッドの特性を加えたもので、バランスに優れたヘッド特性を実現しています。
さらに、ヘッドの巻線やリードワイヤーには、信号ロスを大幅に抑えたPC-OCC(単結晶状高純度無酸素銅材)を採用しており、ピュアな伝送を実現しています。
音質に悪影響を及ぼす内部干渉を排除するため、電源部/アンプ部/コントロール部の3ブロックが独立した分離構造を採用しています。この構造では、マイコンや表示部は1ヶ所に集め、デリケートなアンプ部とはインナーシャーシで基板ごと分離しています。さらに電源トランスからの磁気滞留を追放するため、電源部をセンターシャーシで分離しています。
不要な振動や共振を排除するため、徹底した対策が施されています。
まずインナーシャーシを内部からしっかり補強し、さらにフロントパネルのベースには共振に強く振動を伝えにくい高比重・高剛性のモールド材を採用しています。このモールド材は従来に比べ重さで約1.5倍、剛性約1.7倍に向上しており、振動に対し効果を発揮しています。また、メカボタンにもアルミ押し出し材、スイッチプレートにもアルミ材を採用することで、微振動を極力抑えています。
さらに外部振動への対策として大型インシュレーターを採用しています。
カセットハーフ自体の振動を低減するため、新開発のハーフシェル・スタビライザーを採用しています。
ダイレクト入力端子を搭載しており、最短距離による直接録音によって外部の影響をできるだけ排除しています。
入力セレクターやボリュームはリモートバーによってリアパネルの入力端子の間近でコントロールするよう設計されています。これにより信号経路をできるだけ短くし、ノイズ混入を防いでいます。
ノイズリダクションシステムとしてドルビーB/C NRを搭載しています。
ドルビーHX-PROを搭載しており、録音時にバイアス量を音楽信号の変化に合わせて可変させることでフラットな周波数特性を実現しています。また、低域信号のレベル変化や歪を低減させることで高域特性を大幅に改善しています。
電源部には大型トランスと大容量コンデンサを用いた±トラッキング制御による低出力インピーダンスを採用しています。
この電源回路では、アース電位が常にゼロとなるようプラス側とマイナス側が連携して動作することで、増幅アンプの安定性が保たれています。また、ハイゲインの電圧比較回路と高周波特性に優れた定電流制御回路の組合せにより、出力インピーダンスをオーディオ周波数帯域で1mΩ以下まで下げ、複雑な音楽信号の変化や外乱ノイズに強い安定化電源を実現しています。
オーディオ回路は、録音系も再生系も回路から可能な限りコンデンサーを排除したDCアンプ構成を採用しています。
大型FLディスプレイを搭載しています。
このディスプレイはピークレベルを数字で読取ることができるデジタルピークを搭載しています。また、早送りや巻戻しでメモリーボタンを押したカウントになると自動的に停止するメモリーストップ機構や、テープの残量時間表示などの機能も搭載しています。
オートモニター機能を搭載しており、録音時は録音直後のテープの音に、ポーズで待機中はソースの音に自動的に切換ります。
金メッキ入出力端子や極性表示付き電源コードを採用しています。
バイアス調整機能を搭載しています。
タイマースタート機構を搭載しており、別売タイマーを接続することで留守録音や目覚まし再生が可能です。
MPXフィルターを搭載しています。
ボリューム付きのヘッドホン端子を搭載しています。
シンクロ録音端子を搭載しています。
ワイヤレスリモコンが付属しています。
機種の定格
型式 | ステレオカセットデッキ |
ヘッド | 録音:アモルファス 再生:アモルファス 消去:2ギャップフェライト |
モーター | キャプスタン用:電子制御DCモーター リール用:DCモーター メカニズム駆動用:DCモーター |
ワウ・フラッター | ±0.07% Wpeak(EIAJ) 0.035% WRMS |
早巻き時間 | 約95秒(C-60) |
周波数特性 (-20dB録音、EIAJ) |
メタル:15Hz~21kHz ±3dB クローム:15Hz~19kHz ±3dB ノーマル:15Hz~19kHz ±3dB |
SN比 | 56dB(メタル、EIAJ) 59dB(WTD、1kHz、3%3次高調波歪率、メタル) Dolby B NR on時:1kHzで5dB、5kHz以上で10dB向上 Dolby C NR on時:500Hzで約15dB、1kHz~10kHzで最大20dB向上 MOL改善効果10kHzで4dB向上 |
歪率 | 0.5%(1kHz、3%3次高調波歪率、メタル、EIAJ) |
チャンネルセパレーション | 40dB(1kHz、EIAJ) |
クロストーク | 65dB(250Hz、EIAJ) |
入力端子 | CDダイレクト:80mV/50kΩ ダイレクト:80mV/50kΩ ライン:80mV/50kΩ |
出力端子 | ライン:0.3V/600Ω ヘッドホン:0~1mW/8Ω(8Ω~1kΩ適合) |
その他端子 | コンピュリンク-1/シンクロ(x2) |
電源 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 17W(電気用品取締法基準) |
最大外形寸法(EIAJ) | 幅435x高さ132x奥行336mm |
重量 | 約7.6kg |
付属 | ワイヤレスリモコン RM-RT711 ピンコード |