VICTOR KD-85SA
¥99,800(1977年頃)
解説
スペクトロ・ピーク・インジケーターやSA(センアロイ)ヘッドを搭載したステレオカセットデッキ。
ヘッドにはセンアロイヘッドを採用しています。
このヘッドは、パーマロイを6層ラミネートしたコアのテープ摺動面にセンダストチップを高温接着した構造をしており、過電流損失が少なく高域周波数特性が良くなる多層化のメリットを得つつ、ギャップ精度を高く保つことができ、優れた特性を得ています。
5点ピーク・インジケーターをさらに発展させたスペクトロ・ピークインジケーターを搭載しています。
このピークインジケーターでは、周波数帯域を5分割し、それぞれの中心周波数(100Hz、300Hz、1kHz、3kHz、10kHz)のピーク成分を5個ずつ計25個の角型LEDで表示しています。このため、録音時入力の有無や、周波数分布とピークレベルを簡単に確認できます。
また、スペクトロ・ピークインジケーターで確認することで、より高音質な録音レベルの調整が可能となっています。起伏の少ない音楽(室内楽やBGMなど)の場合は、100Hzから3kHzのインジケーターを+3dBまでとし、10kHzのインジケーターは最大でも-5dBに抑え、VUメーターの針は+2dBを目安で録音します。また、賑やかで衝撃音の多い音楽(ロック、ジャズなど)の場合は3kHz以下は+3dB、10kHzは0dBがときどき点灯する程度で、VUメーターが示す信号の平均レベルは最大0dBに抑えて録音します。
ヘッドアンプにはPNP-NPN2段直結DC帰還アンプを採用しています。また、再生イコライザーとマイクアンプをそれぞれ独立させ、最適な回路定数を選ぶ事により特性の改善を図っています。
ICには厳選されたローノイズICを用いており、ヘッドホンアンプには増幅率の大きいオペアンプを採用しています。
ヘッドやアンプ部の性能に関わりなくテープヒスなどの高域ノイズを解消するため、ビクターが独自に開発した自動雑音低減装置ANRS(アンルス)を搭載しています。この回路では、録音時にあらかじめ入力信号の高域を持ち上げておき、再生時にフラットにすることで、テープヒスのレベルだけを相対的に低下させています。
また、ANRSの原理をさらに発展させ、高域リニアリティの不足やダイナミックレンジの狭さを大幅に改善するSuperANRSも搭載しており、回路のIC化によって音質や信頼性を向上させています。
BIASとEQが独立してそれぞれ3段階に調節でき、テープの特性に合ったポジションを選択できます。
また、BIAS、EQセレクタースイッチだけでは不十分な高域特性の補正をさらに厳密に行うため、REC・EQスイッチを搭載しており、録音時の周波数特性を10kHzにおいて1.5dBステップで-3dBから+3dBまで5段階に可変でき、よりフラットな録音が可能となっています。
メカニズム部には、キャプスタン駆動にFGサーボモーター、リール駆動用にDCモーターと、それぞれ専用モーターを配した2モーターID(Independent
Drive)メカニズムを採用しています。これにより回転系から発生する微妙な振動による相互干渉を押さえ、伝達機構が簡略化でき、安定性と耐久性を向上させています。
さらに、ダイナミック・バランスの正確な80mmフライホイールや真円度0.1μのキャプスタン軸など、高精度な部品を用いることでワウフラッター0.05%を実現しています。
ICとMSI(中規模集積回路)を用いたフルロジックコントロールを採用しています。
カセット・ドアにはギアとオイルダンプを組合わせた方式を採用しており、開く時は等速でゆっくり、閉じる時はこの機構がキャンセルされて軽く閉じることが可能です。
また、テープ残量が確認できるテープ残量照明がついています。
ホール素子で起電力を検出する純電子式オートストップ機構を採用しています。
留守録音や目覚まし再生が可能な連続タイマースタンバイ機構を搭載しています。
メモリーカウンター、出力ボリューム、MIC/DIN、LINE入力切換スイッチが設けられています。
別売りで専用ラックハンドルがありました。
機種の定格
型式 | ステレオカセットデッキ | ||||||
ヘッド | 録再:センアロイヘッドx1 消去:ダブルギャップフェライトx1 |
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モーター | キャプスタン用:FGサーボDCモーターx1 リール用:DCモーターx1 |
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周波数特性 | SF/ノーマル:20Hz~17kHz VX/クローム:20Hz~18kHz |
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SN比 | ANRS off:60dB(WTD、1kHz、3%THD、VXテープ) ANRS on:1kHzで5dB、5kHz以上で10dB改善 ※Super ANRSの効果
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クロストーク | 65dB | ||||||
歪率 | 1.2%(ノーマル) | ||||||
ワウ・フラッター | 0.05%(WRMS) | ||||||
早送り/巻戻し時間 | 85秒(C-60) | ||||||
バイアス周波数 | 95kHz | ||||||
入力感度/インピーダンス | Mic:最大感度0.2mV(-72dBs)/600~10kΩ Line in:最小入力レベル80mV(-20dBs)/100kΩ Din:最小入力レベル9mV(-39dBs)/10kΩ |
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出力レベル/インピーダンス | Line out:0~500mV/3~8kΩ Din:0~500mV/3~8kΩ Phone:0~0.6mW/8~1kΩ |
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使用半導体 | トランジスタ:65個 IC:18個 ダイオード:94個(LED30個) ツェナーダイオード:5個 ホール素子:1個 |
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電源 | AC100V、50Hz/60Hz | ||||||
消費電力 | 30W | ||||||
外形寸法 | 幅450x高さ158x奥行327mm 幅480x高さ158x奥行337mm(ハンドル取付時) |
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重量 | 9.9kg | ||||||
別売 | BTSラックハンドル BH-W150(¥4,000) |