VICTOR DD-VR9
¥138,000(1983年発売)
解説
新開発3ヘッドを採用した3ヘッド録再クイックリバースデッキ。
録音ヘッドにセラミック・ガードSAヘッド、再生ヘッドにフェライトヘッドを用いたコンビネーションヘッドによる3ヘッド構成となっています。
セラミック・ガードSAヘッドは、帯磁の無いセラミック・ガードを採用することでヘッド全体の帯磁を極めて少なくするとともに、ヘッド表面の摩擦係数も小さくなり、総合的な変調ノイズも低減しています。
リバースメカニズムには3層ダイカスト構造を採用した回転ヘッド方式のFine Axis
Reverse Systemを採用しています。
このメカニズムはヘッドマウント・ベースと回転部分のヘッド・ホルダーで構成されており、ヘッドホルダーを受けるアジマス調整スクリューの先端にルビーを圧入して狂いを防ぐジュエル・ロック方式を採用しています。さらにヘッドホルダーのルビーのあたる部分にステンレス製のクランプ・プレートが巻き込むことで耐摩耗性を高めています。また、部品精度は全て10ミクロン・オーダーとなっており、ダイカスト精度としては超精密加工となっています。
回転部分には滑りが良く温度特性の優れたモリブデン(焼付)加工が施されており、摩擦係数に変化が無く、スムーズな回転が確保できるうえ、長期間の使用にもガタがきません。さらに、ヘッド先端のブレを小さくおさえる2点保持構造の採用や、アジマス調整やヘッド高さ調整用スクリューに通常の2分の1のネジピッチを採用することで、精度重視を追及しています。
また、ヘッドをじかにヘッドホルダーに固定せず、一旦ヘッドクランプに入れてヘッドホルダーに圧入する構造を採用しています。これにより、フォワード方向とリバース方向の各々で独立したアジマス調整ができるだけでなくヘッドの高さも調整可能になり、両方向ともヘッドとテープの相対位置を正確にとることが出来ています。この結果、フォワードとリバースの両方向の周波数特性や、変動しやすい高域特性を自動時に保っています。
A面からB面へのテープ反転は、テープのガイドピンに埋め込まれた赤外線センサーによって行います。
発光素子から出た光が磁気テープとリーダーテープの間のスプライシング・テープに当たった瞬間、受光素子が光の変化を検知して反転指示を行います。この間の音切れはわずか0.4秒となっています。
メカニズムには2モーター・フルロジックとメカ駆動用モーターのサイレント・メカを採用しており、メカ駆動用モーターに連動するカムの位置をマイコンで検出することで全てのモードを動かしています。
キャプスタン用モーターにはパルスサーボDDモーターを採用しています。
このモーターのサーボ回路には周波数発電機によって回転を検出するFGサーボを採用しています。ビクター方式ではこの部分に160極80パルスの全周積分型を採用することで位置的なズレが起きても検出誤差を生じにくくしています。また、位置的なズレが起きないよう、FGマグネットはキャプスタンと同軸とし、さらにセンターを保持してから着磁する方法をとっています。
また、温度変化や部品のばらつきによって回転精度が低下するのを防ぐため、マルチ・プライド・ブリッジ・ドライブ回路によってこれらの影響を吸収し、ワウフラッターを向上させています。
B・E・Sチューニングシステムを搭載しています。
この回路では、ノーマル系、クローム系、メタルの3分野に対応するだけでなく、それぞれのカテゴリーの中でテープごとにバイアス、イコライザー、センシティビティをジャストチューニングし、理想に近い録音状態に設定します。また、バイアスの設定には周波数特性上のMOL(最大出力レベル)バランスを重視し、周波数特性をフラットにするだけでなく、録音した時のリニアリティやダイナミックレンジを可能な限りとっています。
B・E・Sチューニングはスタートボタンを押すと、まずバイアスアジャストの操作を開始し、左右の平均値で16ステップの中から最適点を選び出します。イコライザーは高域(12.5kHz)16ステップ、中域(4kHz)8ステップの2つに分け、しかも高域は2回録音して平均値をとり、L/R独立に設定します。また、感度補正(センシティビティ)も左右の平均値をとって行います。以上の動作を15秒ほどで行い、チューニングが完了するとテープは自動的にスタート位置に巻き戻されます。
オートRECミュートを搭載しています。
この機能は、REC状態で押すと約4~5秒の無音スペースを自動的に設定してRECスタンバイとなります。また、ビクター独自の回路設計によってストップ状態からの無録音も設定できます。
インデックススキャンを搭載しており、曲の頭の部分を10秒間ずつ再生しながらA面B面にわたって次々と走査することができます。
ブランクサーチを搭載しており、テープの空白部分を探すことができます。
FF状態で12秒以上無録音部分があるとブランクとみなし、自動的に曲の終わりまでもどってブランク部分を約4秒間送って止まります。
STOP、PLAYの2メモリー機能を搭載しており、通常のSTOPメモリーやPLAYメモリーのほかに、STOPとPLAYの両メモリーを併用することで2点間のブロックリピートが可能です。
リバースモードとの組合せによってA面、B面にわたるブロックリピートが可能です。
ミュージックスキャンを搭載しています。
4デジ・カウンターを搭載しており、テープ残量時間直読、4桁電子カウンター、20曲飛び越し選曲、ストップウォッチの機能として使用できます。
テープ残量時間直読機能は、リバース時にはA面のテープエンドで0となりB面に入ると同時にB面の残り時間が表示されます。また、3分を切ると分表示が点滅します。
4桁電子カウンターはリバース方向はマイナスカウントとなり、テープ上のA面とB面の同位置で同じ数字が表示されるようになっています。
20曲飛び越し選曲機能です。最大20曲までA、B両面にわたって選曲します。1曲指定の場合は曲数指定の必要もなく、ミュージックスキャンボタンでダイレクトに頭出しできます。
ストップウォッチ機能はA/B両面にまたがって加算されます。ストップ、ポーズ時は表示時間が自動的にホールドされます。
モータードライブ方式によるスライディング・コントロールパネルを採用しています。
カセットの出し入れが容易なイジェクト&アップ機構を搭載しています。
ピークホールドの可能な-40dB~+9dBワイドレンジ2色FLピークメーターを搭載しています。
また、デジタルピーク表示機能を搭載しており、信号のピーク値を常時デジタル表示することで高精度の録音レベル設定が可能です。
ノイズリダクションシステムとしてドルビーB/C NRを搭載しています。
さらに、ドルビー標準ICを採用することで動作をさらに安定させて信頼性を向上しています。また、DD-VR9ではMPXフィルターを搭載しており、誤動作を防止しています。
オートテープセレクト機能を搭載しています。
アウトプットボリュームを搭載しています。
セーフティロック付きのタイマースタンバイ機構を搭載しています。
リモートコントロール端子を搭載しています。
機種の定格
型式 | ステレオカセットデッキ |
ヘッド | 録音:SA 再生:フェライト 消去:2ギャップフェライト |
モーター | キャプスタン用:パルスサーボDDモーター リール用:DCモーター メカニズム駆動用:DCモーター |
ワウ・フラッター | ±0.07%(Wpeak、EIAJ) 0.035%(WRMS) |
早巻時間 | 約90秒(C-60) |
周波数特性(EIAJ、-20dB録音) | メタル:25Hz~18kHz ±3dB クローム:25Hz~18kHz ±3dB ノーマル:25Hz~17kHz ±3dB |
周波数範囲(EIAJ、-20dB録音) | メタル:15Hz~20kHz クローム:15Hz~20kHz ノーマル:15Hz~19kHz |
SN比 | NR off:55dB(メタル、EIAJ) 60dB(WTD、1kHz、3%3次高調波歪率、メタル) Dolby B on:1kHzで5dB、5kHz以上で10dB改善 Dolby C on:500Hzで約15dB、1kHz~10kHzで最大20dB向上 MOL改善効果:10kHzで4dB向上 |
歪率 | 0.4%(1kHz、3次高調波歪率、メタルテープ、EIAJ) |
チャンネルセパレーション | 40dB(1kHz、EIAJ) |
クロストーク(EIAJ) | 65dB(250Hz) |
入力端子 | Line:80mV/80kΩ |
出力端子 | Line:0~0.5V/5kΩ Headphone:0~0.6mW/8Ω(8Ω~1kΩ適合) |
リモコン端子 | ミニホーンジャック |
電源 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 32W |
最大外形寸法 | 幅435x高さ110x奥行277mm |
重量 | 約6.5kg |
別売 | リモートコントロールユニット R-70(¥5,000) |