VICTOR M-7070
¥210,000(1977年発売)
解説
Dクラス電源を採用したラボラトリー7070シリーズのモノラルパワーアンプ。
Dクラス電源は、トランスで電圧変換した後に整流平滑する従来方式と異なり、まず100Vの商用電源をダイレクトに整流平滑しています。こうして一旦DC電圧を得たあと、スイッチング素子で35kHzの方形波パルスに変換し、高周波トランスで電圧変換を行い、再び整流平滑回路を通してDC出力を取り出しています。
さらに、DC出力端からフィードバックをかけ、誤差増幅器でDC変動を基準電圧と比較して誤差信号を検出し、パルス幅変調器でスイッチング素子の導通時間をコントロールするPWM(Pulse
Width Modulation)制御方式によって電圧を安定化しています。
このDクラス電源では、電源効率80%以上、過渡応答特性としての電圧回復時間は従来方式の約15分の1、内部インピーダンスは30分の1を実現しています。
出力段の能動素子にはパワーMOS FETを採用しています。この素子は、FMチューナーのフロントエンドなどの高周波領域で使用されているMOS
FETの高耐圧、大電流化に成功したもので、広帯域・低歪率、大電流時のリニアリティが良い、熱暴走の危険が無いなどの優れた性質を持っています。
M-7070では、PチャンネルとNチャンネルのパワーMOS FETをパラレル・プッシュプルで動作させることで、ハイパワーを実現しています。
保護回路には、日本ビクター独自の3大重点保護回路をベースに機能を追加・集積したプロテクターICを採用しています。
このICでは、電源ON時のミューティング、電源OFF時のミューティング、中点電位検出、リレー・ドライブなどの機能を搭載しています。また、外部回路との組み合わせで過負荷検出と温度検出を行う事ができます。
M-7070では温度検出素子に80℃で働く特殊なマグネット・リードスイッチを用いており、プリント基板とパワーMOS
FETの温度上昇を感知して自動的に信号を切るようになっています。
入力端子はDirectとSubsonicの2系統を搭載しています。Directでは完全DCアンプとなり、Subsonic端子ではローカットフィルターが加えられます。
また、業務用途のためにSubsonic側にはキャノン3Pコネクター(不平衡)も装備しています。
指示慣性の無いLEDを用いた12ポイントLEDピークパワーインジケーターを搭載しています。
このレベルメーターは、3枚の厚いガラス・パネルを用いており、中間の1枚にLEDを埋め込んだ構造となってます。これにより多重反射による投影効果が美しくなっています。
別売でラックハンドルがありました。
機種の定格
型式 | モノラルパワーアンプ |
回路方式 | 信号回路:初段デュアルFETトリプル差動出力段 MOS FETパラレルプッシュプル 電源回路:A級・B級(Dクラス)独立2電源 |
<アンプ部> | |
実効出力 | 240W(4Ω、20Hz~50kHz) 120W(8Ω、5Hz~100kHz) |
高調波歪率(120W出力時、8Ω) | 0.003%(20Hz~20kHz) 0.007%(5Hz~50kHz) 0.02%(5Hz~100kHz) |
SN比(IHF-A、入力ショート、8Ω) | 120dB |
周波数特性 | DC~100kHz +0 -0.5dB |
サブソニックフィルター | 18Hz、6dB/oct. |
入力感度/インピーダンス | 1V/50kΩ |
ダンピングファクター | 200以上(8Ω、1kHz) |
<Dクラス電源部> | |
入力電圧 | 100V |
入力周波数 | 50Hz~60kHz |
出力電力 | 44-W |
出力インピーダンス | 40mΩ(EIAJ) |
電圧レギュレーション | 0.5% |
スイッチング周波数 | 35kHz |
<総合> | |
消費電力 | 180W(電気用品取締法基準) 573W(EIAJ) |
外形寸法 | 幅425x高さ160x奥行360mm |
重量 | 15.5kg |
付属 | ラックハンドル BH-150(¥4,800) |