オーディオの足跡

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L-01Tの画像
 解説 

パルスカウントやサンプリングホールドMPXなどの優れた回路技術をベースに非磁性体化を追求したFMステレオチューナー。

L-01Tはチューナーとしては初めて非磁性体による筐体を採用しています。
使用した非磁性体はL-01Aとほぼ同じで、サブパネルと背面パネルには耐衝撃性や耐久性に優れた新強化ナイロン、サイドフレームはアルミケース、底板はウッドで構成されています。
また、構造材とブスアースバーには純度99.96%の無酸素銅を、フロントパネルにはスモークドアクリルを使用しています。

電源部を介した音質劣化を防ぐため、独立電源オシレーターを搭載しています。
検波回路やMPX回路は、+B電源とアース間の出力インピーダンスによってどうしても+Bラインにオーディオ信号を発生させています。その+Bに発生した信号成分は電源部を介して局部発振回路にフィードバックされ、局部発振回路の周波数をFM変調してノイズ成分となり、出力に表れます。
L-01Tでは局部発振回路の電源を検波部やMPX回路の電源と分離した独立電源オシレーターを採用しており、検波回路やMPX回路からの電源を介した信号のフィードバックを防ぎ、クリアなFM信号を実現しています。

入力信号をRF増幅部を通さずにミキサー段へ直接入力するダイレクトコンバージョンシステムを採用しており、優れた2信号特性と広いダイナミックレンジを得ています。
ダイレクトコンバージョンシステムはトリプルチューニングとミキサー、IFアンプ2段によって構成されています。ミキサーはペア選別されたデュアルJ-FETを使用したバランスドタイプとなっており、後段のIFアンプも同じFETを用いたプッシュプルアンプとなっています。これにより十分に広いダイナミックレンジを確保してIF段でのIM歪の発生を抑えています。

RFセレクターを搭載しており、十分な入力のある場合や近接した大出力の局がある場合にはダイレクトコンバージョン・ポジションで、また入力が小さい場合には高感度のノーマルポジションでと使いわけることができます。
ノーマルポジションはエアギャップの広い周波数直線高精度7連バリコンをシングル-シングル-トリプルチューンで構成しており、RFアンプにはパワーゲインが大きくダイナミックレンジの広いDD-MOS型FETと、第3混変調歪を大幅に減少した高GmのJ-FETを使用しています。そして、トリプルチューンの3段目の出力は低インピーダンスで次段(バランスドミキサー)へつないでおり、インピーダンスマッチングを考慮した設計となっています。
また、局部発振回路とバリコンを一体化し、バリコンの回転角度に合わせて目盛精度を改善しています。さらに立体配線でブロック化して温度や湿度の変化による周波数ドリフトを抑えています。

検波部には、波形整形部やドリフト対策などに一段と改良を加えたパルスカウント方式を採用しています。
この方式は広帯域にわたる全検波範囲が一直線のため、放送局の音楽波形をそのまま出力波形として再現でき、原理的にも歪発生させない優れた方式となっています。

パルスカウント検波方式の特長を最大限発揮させるためにダブルコンバート方式を採用しています。
この方式では第一IFで得られた中間周波数10.7MHzを、さらに第二IF1.96MHzに変換しています。これにより相対周波数偏移をあげることができるため、パルスカウント検波で得た広帯域の直線幅を十分に生かせ、検波効率をあげてSN比を大幅に改善しています。

KT-9900で開発されたサンプリングホールドMPX回路を採用しており、セパレーションを大幅に改善しています。
ピークだけをサンプリングしホールドしているため変調がかかっている時の38kHz成分の振幅変化が少なく、音声の変調レベルの変化による動的なキャリアリークは殆ど発生しません。パイロットキャンセラーと相まって最終段のローパスフィルターの周波数特性を大幅に改善しています。

シンクロタッチチューニング方式を採用しています。
選局ノブで放送局に同調をとった後、指を離すと約2秒後にシグナルメーター、チューニングメーターの照明が消えます。リスニング中にはダイヤルスケールの同調ポイントと操作インジケーター、ステレオインジケーターだけが点灯します。さらに、サーボロックを内蔵しているため一度同調をとると同調ズレの恐れがありません。
また、常にメーターやダイヤルスケールを直視していたい時のため、背面スイッチで切替えが可能です。

MPX部にクリーンサブキャリアシステムとパイロットキャンセラーを搭載しています。
クリーンサブキャリアシステムによってオーディオ信号がスイッチング信号へ混入することを防ぎ、ビートディストーションを発生させずにパイロットキャンセラーを正確に作動できます。

トリオが完成したセパレートアンプ本来の形であるダイレクトドライブ・アンプシステムによって得たノウハウを生かして低出力インピーダンス設計としています。
これにより接続するシールド線やアンプの入力容量による音質への影響を低減しています。

電源部は、局部発振回路側に20VA、それ以外のRF増幅回路・検波回路・MPX回路側に24VAとなっており、チューナーのトランスとしては桁外れの大型トランスを使用して2電源を構成しています。
また、フロントエンド・IF部の信号系には+14V、MPXの低周波増幅回路専用に±16V、局部発振回路には+12Vと、整流後各ブロック毎に定電圧電源を設置し、各ブロック間の干渉を抑えています。さらに+14Vの出口には2,200μF、±16V用には1,000μFx2、+12V用には220μFの大容量電解コンデンサーを配しています。

機種の定格
型式 FMステレオチューナー
受信周波数範囲 76MHz~90MHz
アンテナインピーダンス 75Ω不平衡
感度(75Ω) normal:10.3dBf(新IHF)/0.9μV(IHF)
direct:20.7dBf(新IHF)/3μV(IHF)
SN比50dB感度
normal mono:
stereo:
direct mono:
stereo:
15.8dBf(新IHF)/1.7μV(IHF)
37.2dBf(新IHF)/20μV(IHF)
26.7dBf(新IHF)/6μV(IHF)
48.1dBf(新IHF)/70μV(IHF)
高調波歪率
wide narrow
mono




stereo
100Hz:
1kHz:
6kHz:
15kHz:
50Hz~10kHz:
100Hz:
1kHz:
6kHz:
15kHz:
50Hz~10kHz:
0.02%
0.02%
0.04%
0.04%
0.04%
0.03%
0.03%
0.05%
0.18%
0.08%
0.04%
0.15%
0.2%
0.05%
0.3%
0.3%
0.2%
0.3%
1.3%
0.4%
SN比(100%変調) mono:86dB
stereo:80dB
イメージ妨害比 120dB
選択度(IHF) wide:45dB
narrow:65dB(300kHz)
IF妨害比 120dB
スプリアス妨害比 120dB
AM抑圧比 65dB
キャプチャーレシオ wide:0.9dB
narrow:2.5dB
サブキャリア抑圧比 70dB
ステレオセパレーション
wide narrow
1kHz:
100Hz~10kHz:
15kHz:
60dB
48dB
45dB
47dB
35dB
周波数特性 15Hz~15kHz ±0.5dB
出力レベル/インピーダンス
FM(1kHz、100%変調) Variable:
Fixed:
マルチパス出力(1kHz、30%変調) Vertical:
Horizontal:
0~1.5V/150Ω
0.75V/150Ω
0.1V/1kΩ
0.3V/10kΩ
電源電圧 AC100V、50Hz/60Hz
定格消費電力 50W(電気用品取締法)
最大外形寸法 幅440x高さ136x奥行452mm
重量 9.1kg