TRIO KT-2200
¥99,800(1983年頃)
解説
FM放送のクオリティアップに応えて開発されたFMチューナー。
無歪伝送を目指しノンスペクトラムIFシステムを採用しています。
これは、常に帯域幅の変化するスペクトルとして情報を伝えるFM信号から、IFに入った際にFMスペクトルを取り除き、IFフィルターを通って妨害信号を除去した後に、もとのFM信号に戻して検波する方式で、妨害排除能力を維持したまま、歪を抑える方式となっています。
構造は、まずVCO(電圧制御発振器)が、受信したFM放送と全く同じ偏移をもつ6.2MHz信号を発信します。そして減算ミキサーでは「入力信号−VCO発振信号=ノンスペクトラムIF信号」となるように、信号のFM偏移を取り除きます。
このため、IFバンドパスフィルターを通るFM信号は、FMスペクトラムを持たない4.5MHz信号となり、このノンスペクトラムIF信号を急峻なIFバンドパスフィルターを通す事により、高い選択度を確保しています。
この4.5MHzの第2中間周波数信号は、加算ミキサーを通って再び6.2MHz信号が加えられ、FM偏移をもつ10.7MHzの中間周波数信号に戻り、リミッターから復調信号に導かれ0.005%の伝送を実現しています。
IMや大入力特性に優れたダイレクトコンバート方式を採用しています。
RFセレクターをDirectポジションにすると、入力信号はRF増幅部を通らないでミキサーに直接入力され、十分な入力がある場合でも、近接した大出力の局がある場合でも、RF相互変調や混変調などの妨害を抑えて、SN比に優れた音を引き出しています。
また、Distanceポジションは高感度設計となっており、小入力局や遠距離局をキャッチします。
各部の基準点を明確化し、各部の信号の受け渡しを整理することにより、一点アースを実現しています。
これにより、シャーシを介しての信号電流の干渉を排除しており、受信部からオーディオ部まで、各部の動作をつきつめて、より高品質なFMの音を再生します。
サンプリングホールドMPXを採用しています。
セパレーション特性を改善すると同時に、ピークだけをサンプリングし、ホールドしているため、変調がかかっているときの38kHz成分の振幅変化が少なく、音声の変調レベルの変化による動的なキャリアリークを低減しています。
可変型FMミューティングを採用しており、レベルを5段に設定していれば、SN比のいい大出力局だけがキャッチでき、レベルを1にしておけば、微弱な遠距離局も自由に選べます。
機種の定格
型式 | FMステレオチューナー | ||||||||
<FMチューナー部> | |||||||||
SN比50dB感度(IHF/新IHF) | 1.7μV/15.9dBf(Distance、mono) 20μV/37.3dBf(Distance、stereo) 5μV/25.2dBf(Direct、mono) 60μV/46.8dBf(Direct、stereo) |
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感度(IHF/新IHF) | 0.9μV/10.3dBf(Distance) 4.0μV/23.3dBf(Direct) |
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アンテナインピーダンス | 75Ω不平衡 | ||||||||
高調波歪率 |
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SN比(85dBf入力) | mono:96dB stereo:86dB |
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キャプチャーレシオ | 2.0dB(Narrow) 0.8dB(Wide) |
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実効選択度 | 55dB(±300kHz、Narrow) 40dB(Wide) |
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ステレオセパレーション |
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周波数特性 | 15Hz~15kHz±0.5dB | ||||||||
イメージ妨害比 | 90dB(84MHz) | ||||||||
IF妨害比 | 120dB(84MHz) | ||||||||
スプリアス妨害比 | 110dB(84MHz) | ||||||||
AM抑圧比 | 75dB | ||||||||
サブキャリア抑圧比 | 75dB | ||||||||
出力レベル/インピーダンス(1kHz、100%Dev) | 0.6V/2kΩ(Fixed) 1.2V/2kΩ(Variable) |
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マルチパス | 0.1V/10kΩ(垂直) 0.7V/10kΩ(水平) |
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<総合> | |||||||||
定格消費電力 | 11W(電気用品取締法) | ||||||||
電源 | AC100V、50Hz/60Hz | ||||||||
外形寸法 | 幅440x高さ111x奥行337mm | ||||||||
重量 | 5.4kg |