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TRIO LS-505
¥66,000(1台、1977年頃)
解説
音楽性にとってパワーリニアリティはどうあるべきかを追求した3ウェイスピーカーシステム。
65Hzから16kHzにわたり出力音圧偏差±2dBを実現しています。
低域には33cmコーン型ウーファーを搭載しています。
このユニットでは磁気回路の磁束分布の均一化によるパワーリニアリティ改善を図っており、磁気回路にはツボ型ヨークとアルニコ鋳造マグネットを採用しています。ツボ型ヨークは従来のものに比べてプレートとポールピースのギャップ部の対向面積が等しくなるため磁束分布が均一となり、マグネットの磁力を効果的に利用することができるためパワーリニアリティを高めることが可能です。
また、ダンパー、フレーム、トッププレートに囲まれる空気室の空気によってリニアリティ悪化が起こるのを防ぐため、ダンパーとフレームの間に通気孔を設け、再生レスポンスを平坦化するとともに第3次高調波を抑制しています。
振動板はCFコーンに酸化チタンをコーティングすることで再生レスポンスを改善しています。この振動板は断面が非対称なS字型をした反共振の少ないエステル系発泡ウレタンエッジで支えています。
中域には12cmコーン型スコーカーを搭載しています。
このユニットでは磁気回路のポールピースにT字型の切削加工を施しており、均一な磁界を得ています。さらにダンパー、フレーム、トッププレートの間に空気抜きを設けることで第3次高調波を抑制しています。
コーン紙は大入力時における振幅を光学測定した結果を基にして設計されており、エッジの可動範囲を±1.5mmという値に抑える事が好ましいという結論から開発されたエクスポーネンシャルカーブドコーンを採用しています。
高域にはリングダイアフラムを用いたホーン型ツィーターを搭載しています。
一般的なホーン型ツィーターにはドーム型ダイアフラムが使用されていますが、ドーム型はボイスコイルの駆動面からドーム頂点の距離が長く強度的にも弱いため、高い周波数においてピストン運動を行わなくなり、周波数特性上多くのピーク・ディップが生じてリニアリティの悪化を招き、過渡応答にも悪影響を与えています。
LS-505のツィーター振動板はスーパージュラルミンを成型したV字状のリング型ダイアフラムを採用しており、駆動面からエッジまでの距離が短くなることで分割振動の生じる周波数が高くなり、高域共振が起こりにくく、ピストン振動帯域から分割振動帯域への転移がスムースでフラットになっています。さらに、V字型ダイアフラムでは内周および外周に小さなV字型のエッジを設けることでリニアリティをさらに改善しています。
磁気回路には15,000gaussの磁束密度を持つ80φ20mmフェライトマグネットを採用しています。まt,あポールピースとマグネット間の空気室にはミクロングラスウールを装填することで音の反射を防ぎ、ダンピング特性を改善しています。
レベルコントロール部にはリッツ線ステップダウン型アッテネーターを採用しています。
従来のスピーカーシステムのレベルコントロールには連続可変型アッテネーターを採用していましたが、この方式はボリュームレベルの位置で音質が劣化するという問題点を持っていました。スピーカーはアンプからの入力でドライブされますが、その時ボイスコイルには逆起電力が生じ、これがアンプに戻されてダンピングの良く聞いた状態となります。ところが連続可変型アッテネーターを絞っていくとアンプとスピーカー間の直流抵抗分が増加するためダンピングファクターを低下させ、音質劣化を招きます。
LS-505ではリッツ線を使ったステップダウン式アッテネーターを採用することでステップポジションによるダンピングファクターの劣化を抑えています。このアッテネーターは高い周波数においても表皮効果がでずに高域が伸び、中域や高域のインピーダンス特性にアッテネーターの周波数特性が影響されないというメリットも持っています。
LS-505ではツィーターとスコーカーのクロスオーバー付近の位相歪みにも注目し、スコーカーとツィーターの音源が同一平面上にくるように設計しています。これによりクロスオーバー付近の位相歪みによる再生レスポンスの悪化を防いでいます。
エンクロージャーの側板と天地板には高密度ホモゲンチップボードを使用し、バッフル板と裏板には強度と減衰特性の優れた米松ランバーコアを採用しています。補強材の配置にも配慮することで減衰特性に優れたエンクロージャーを実現しています。
また、バスレフダクト内にSWC(定在波キャンセラー)を設けており、中音域特性を劣化させて中音域の音質を混濁させる定在波を抑制しています。
機種の定格
方式 | 3ウェイ・3スピーカー・バスレフ方式・ブックシェルフ型 | ||
ユニット | 低域用:33cmコーン型(LC-0062) 中域用:12cmコーン型(ML-0057) 高域用:ホーン型(HH-0054) |
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周波数特性 | 32Hz~20kHz | ||
出力音圧偏差 | 65Hz~16kHz ±2dB(後面壁に密接、台45cm) | ||
歪率 | 0.3%以下(1kHz) 第2次高調波:64Hz~7kHz 第3次高調波:64Hz~20kHz |
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最大入力 | 100W | ||
定格入力 | 65W | ||
インピーダンス | 8Ω | ||
出力音圧レベル | 93dB/W/m | ||
クロスオーバー周波数 | 1.3kHz、6.5kHz | ||
レベルコントロール | 中域:-2、0、+2dB(3ステップ) 高域:-3、0、+3dB(3ステップ) |
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外形寸法 | 幅376x高さ676x奥行325mm | ||
重量 | 26kg | ||
別売 | スピーカースタンド SR-2000S(2台1組、¥12,000) | ||
<ユニット特性> | |||
型番 | LC-0062 | ML-0057 | HH-0054 |
型式 | 33cmコーン型 | 12cmコーン型 | リング振動板ホーン型 |
再生帯域 | fo~2.7kHz | 400Hz~10kHz | 3kHz~20kHz |
出力音圧レベル | 93dB/W/m | 95dB/W/m | 104dB/W/m |
インピーダンス | 8Ω | 8Ω | 8Ω |
磁束密度 | 10,000gauss | 12,000gauss | 15,000gauss |
総磁束 | 145,000maxwell | 44,000maxwell | 28,400maxwell |