Threshold SA/12e
¥2,000,000(1台、1989年発売)
解説
ピュアクラスA回路によるモノラルパワーアンプ。
eシリーズでは電圧増幅、電流増幅の全段をA級としたピュアクラスAオペレーションを採用しています。
また、スレッショルド独自のステイシス回路を採用しています。
ステイシス回路の出力段では、電流変動の影響を受けないピュアクラスA電圧増幅段を設け、さらにスピーカードライブに必要とされる電流供給を電圧増幅段とパラレルに配した複数のトランジスタから成るピュアクラスA電流増幅回路で行っています。そして、この二重構造の出力段をスピーカーに直結させた構成としています。
これにより電圧増幅段は高いリニアリティのままスピーカーへ電圧を送る一方、カレントミラー電流回路が電圧増幅段を安定状態に保ちつつスピーカーへ電流供給することで増幅素子が常に安定した状態でスピーカーを駆動しています。
入力段には特性的にマッチングのとれたローノイズ高入力インピーダンスのJ-FETを使用しており、これを一定の電圧で安定して動作できるようカスコード接続としたピュアクラスA設計になっています。
このFETの出力は同じくカスコード接続のバイポーラ・カレントミラー、コンプリメンタリー電圧フォロワー回路へと送られます。最初の2つのステージは定電流ソースによってバイアスをかけられており、さらに2重にレギュレートされて電源による変動要因を排除しています。
独自のオプティカルバイアス技術を採用しており、温度変化等による増幅素子の特性変動を抑えています。
これは、フォトアイソレーターによってユニット各部の電気的干渉を排除しつつバイアス電流を制御し、信号に影響する要素を信号系から排除しています。
電源部には1,200Wのトロイダルトランスを2個と合計216,000μFに及ぶ大容量コンデンサーを採用しており、瞬間的に定格の約2倍もの供給能力を確保することで安定した電力供給を実現しています。
空冷システムは、出力トランジスタを厚さ18mmのアルミ無垢材に直付した上、大型フィンで放熱するという2段構造を採用しています。これによりピュアクラスA設計で回避できない温度上昇を体積と表面積で効果的に拡散しています。
さらにヒートシンクに取り付けられた温度センサーはオプティカルバイアス回路と連動しており、温度変化による増幅素子の特性変動を抑えています。
入力端子にはテフロン絶縁を施した金メッキの特注RCAコネクターと、特別に設計されたXLRバランスコネクターを採用しています。また、出力端子にも金メッキ接点の大型カスタムメイド端子を採用しています。
回路基板はミリタリー規格のガラスエポキシ製を採用しています。また、メタルフィルム/巻線の高精度抵抗などの厳選したオーディオ専用パーツを採用しています。
デザインは、ネルソン・パスの僚友であるインダストリアル・デザイナーのルネ・ベズネによります。
機種の定格
型式 | モノラルパワーアンプ |
定格出力 | 連続:275W(8Ω、20Hz~20kHz) |
入力インピーダンス | アンバランス:50kΩ バランス:600Ω |
歪率(定格出力時) | 0.1% |
周波数特性 | DC~100kHz |
SN比 | -100dB以下 |
スルーレート | 50V/μ秒 |
ゲイン | +26.6dB |
出力段 | 250W/200V/20A トランジスタ:64個/ch |
出力インピーダンス | 0.05Ω(20Hz~20kHz)以下 |
電流供給能力 | 連続:70A ピーク:200A |
保護機構 | 自然空冷、 過熱時内部温度検出にてシャットダウン |
電源部 | 1200Wトロイダルトランス 216,000μF |
消費電力 | 480W |
外形寸法 | 幅483x高さ222x奥行705mm |
重量 | 59kg |