解説　

放送局、ホール、録音スタジオ等の業務用に設計されたステレオ/モノラル円板再生機。
1979年のオーディオショウで参考出展され、その後業務用として販売されたようです。

FR-956Aは、ターンテーブル及びピックアップが搭載されたターンテーブルデッキ部と、音声回路、制御部、操作パネル部、照明棚等からなる本体部とで構成されています。

ターンテーブルは超低速ブラシレスDCモーターによって直接駆動されており、高速回転部分が無いため機械雑音を少なく抑えています。また、機械的な消耗が極めて少ないため特性劣化が殆ど無く、保守が容易となっています。この駆動モーターは起動トルクの大きい直流モーターのため、立上り時間が短くなっています。
モーターの回転検出は、モーターにビルトインされたFG(周波数発電機)を用いており検出精度と安定性を高めてます。さらに、モーターの回転数はクォーツ発振器による精度の高い信号を基準にロックされているため、正確なレコード演奏時間を実現しています。
モーター駆動回路の基準信号発生部にDN860、制御部にAN660、モーター駆動部にAN640の専用ICを採用しており、優れた制御特性と高信頼性を得ています。

トーンアームには、ジンバルサスペンション方式の軸受構造やインサイドフォースキャンセラを搭載するとともに、低域共振ダンプのためのダイナミックダンピング機構を搭載しています。
ジンバルサスペンション方式は、トーンアームの回転の支点が1点に定まり、自社製ベアリングの低摩擦とあいまって水平・垂直方向とも均一な動きを実現しています。
インサイドフォースキャンセラーは一部の業務用機では省略されていますが、レコードや針先の片減り防止や歪の低減などのためにFR-956Aでは採用されています。構造はスプリング方式を採用しており、針先に応じてインサイドフォースをキャンセルできます。
ダイナミックダンピング機構はレコード盤の音溝のうねりや表面の凹凸、そり等によるピックアップ系の低域共振によって再生信号が変調するのを防止する機構で、分割ウェイトの反共振によって有害なうねりを制御しています。

カートリッジにはFR-956A用に新開発されたプロフェッショナル用カートリッジ(LP用、SP用)を採用しています。

床から伝わる振動を抑えるためダブルインシュレーション方式を採用しています。
FR-956Aでは、本体下部に取り付けられた4個のインシュレーターで減衰し、さらにデッキ部と本体の間に取り付けられたインシュレーターによって減衰することで優れた振動遮断特性を実現しています。

円板再生機としてフォノイコライザを内蔵しています。
このイコライザはLP/SPの切換えができ、音質補正のためのトーンコントロールも備えています。また、モニターアンプとスピーカーも内蔵しており、曲の頭出しを正確に行ったのちに放送ラインに送り出すことができます。

ターンテーブルのブレーキ機構を一時解除し、手でターンテーブルを正逆方向に回転させることができるようになっており、正確な頭出しが可能です。

主音量調整ボリュームを搭載しており、出力信号のフェードイン、フェードアウトが可能です。

アッテネーターにはCP(コンダクティブ・プラスチック)をしようしており、褶動ノイズが少なく、長寿命を実現しています。

ミキシング回路を内蔵しており2台連結使用も可能です。

リモートコントロール機能を搭載しており、外部からPlay/Stopの制御が可能です。

大型VU計を搭載しています。

外部スイッチによって点灯するCUEランプを装備しています。

機種の定格

型式	円板再生機(レコードプレイヤー)
<ターンテーブル部>
駆動方式	クォーツロック形超低速直流モーターによる直接駆動
ターンテーブル	アルミ合金339φ
公称回転数	33・1/3、45、78.26rpmの3速度切換
センターピンの直径	7.126±0.01mm
ターンテーブルの上下動	±0.15mm
ワウ・フラッター	0.04%以下(WRMS)
ドリフト	認知し得ない程度
ランブル	50dB以上
起動時間	45゜以内(0.3sec以下、33・1/3rpm時) 75゜以内(0.4sec以下、45rpm時) 120゜以内(0.7sec以下、78rpm時)
<等化増幅器>
SN比	55dB以上
L/Rの位相差	50Hz～10kHzにて5゜以内
クロストーク	50dB以上
バランス	±2dB(L/R、逆連動)
<モニター増幅器>
入力インピーダンス	高インピーダンス不平衡
最大出力レベル	+27dBm
<トーンアーム部>
全長	365mm
オフセット角	18゜
トラッキングエラー	1.8゜MAX
オーバーハング	12.5mm
アーム回転角	68゜
アーム材質	軽合金パイプ
全上表面処理	黒色アルマイト
バランス方式	スタティック
軸受方式	ジンバルサスペンション方式
インサイドフォースキャンセラー	スプリング方式
<総合>
周波数特性	50Hz～15kHz(RIAA規格)
SN比	50dB以上
クロストーク	20dB以上(カートリッジ含む、80Hz、1kHz、5kHz)
定格出力レベル	-20dBm/-14dBm (オプション+6dBm/0dBm)
出力インピーダンス	600Ωに適合(平衡)
等化特性	RIAA及びSP
周囲温度	0℃～40℃
電源	AC100V、50Hz/60Hz
消費電力	約50VA
重量	約80kg