Technics SU-V10
¥198,000(1979年頃)
解説
テクニクス独自のnew classA回路を採用したインテグレーテッドDCアンプ。
new classA回路は、A級動作とB級動作の優れた点だけを持つ回路として開発され、シンクロバイアス回路によって実現しています。
このシンクロバイアス回路は入力信号に同期して出力段のバイアスをコントロールする回路で、+側に信号が再生されている場合は−側の出力段に、−側の信号に対しては+側の出力段に一定のバイアス電流を流す構造となっており、いかなる場合にもカットオフ状態にならないように動作しています。これにより出力段のトランジスタは信号の有無にかかわらず常時能動状態となり、スイッチング歪が発生しません。
SU-V10の回路は、FET差動回路とカスコード回路で構成された初段、定電流負荷を持つ電圧増幅段、SEPP接続したトランジスタまでがAクラス動作するエミッタフォロワー出力の電圧ドライバー回路となり、次いでシンクロバイアス回路を介したダーリントン接続SEPP出力段が続く構成となっています。
ハイレベル入力以降、スピーカー出力端子までの段間と負帰還(NFB)から、時定数を持つコンデンサを追放したストレートDC方式を採用しており、超低域(直流域)から可聴帯域全般にわたって忠実な波形伝送を実現しています。
DCアンプ最大の問題点であるDCドリフトを抑えるため、差動、カレントミラーなどのペア素子の特性を厳密に揃えた上で、アクティブサーマルサーボ回路を搭載し、万全を期しています。
この回路では、素子間の温度特性のアンバランスを能動的に補正しており、ドリフト要因そのものを打ち消す構造となっています。回路は、信号系出力をリニアリティや精度に優れたオペアンプで積分し、その出力で信号系トランジスタと熱的に結合した発熱用トランジスタを駆動するという構成になっています。熱結合トランジスタは単にケースが接着されているだけで電気的には信号系トランジスタとは絶縁されているため、信号系に悪影響がありません。
この回路によって-10℃~50℃という広範囲な温度条件下で0±5mV以下の高い直流安定度を実現しています。
パワートランジスタには、高周波特性に優れた小信号用トランジスタを200個内蔵させたのに等しいSLPTを採用しており、100MHzオーダーの高域再生限界と、小電流時から大電流時まで極めてリニアリティに飛んだ増幅率を実現しています。
コンセントレーテッドパワーブロックを採用しています。
この方式では、一体の放熱器ブロックに、電解コンデンサ、ドライブ回路、パワートランジスタなどの大信号・大電流部をコンパクトに集中することで、電磁誘導をはじめとする高域特性を劣化させる回路構成上の問題を低減しています。
電源トランスには余裕をもたせた大容量トランスを採用しています。
このトランスはコイルを特殊樹脂中にフローティングさせシールド効果の高いケースに収納することで、余裕ある電力容量の効果と合いまってリーケージフラックスの発生を極小化しています。
フォノイコライザ回路は、初段にローノイズデュアルFETを差動増幅器として配し、入力段のカップリングコンデンサを追放したICl構成としています。
MCプリ・プリアンプを搭載しています。
独立型input/recセレクターを搭載しています。
リモートアクションスイッチを採用しており、特性劣化の無いストレートな回路配線を実現しています。
中点でフラットな周波数特性が得られる中点ディフィートトーンコントロールを装備しています。
電源on/off時のミューティングとしても働くリレーを用いた保護回路を搭載しています。
コンセントレーテッドパワーブロックに載せられた電解コンデンサには低インピーダンスのスーパーオーディオキャパシタを採用しており、電解コンデンサからの電磁波輻射も低減しています。
機種の定格
型式 | インテグレーテッドDCアンプ |
実効出力 | 160W+160W(4Ω、20Hz~20kHz、0.007%) 120W+120W(8Ω、20Hz~20kHz、0.003%) 120W+120W(8Ω、1kHz、0.0003%) |
出力帯域幅(THD 0.01%) | 5Hz~100kHz |
TIM | スペアナにて測定不能 |
周波数特性 | straight DC:DC~20kHz +0 -0.1dB DC~200kHz +0 -3dB via tone:2Hz~150kHz +0 -3dB |
SN比(IHF,98A) | straight DC:110dB |
残留ノイズ | 300μV |
ダンピングファクター | 100(8Ω) |
負荷インピーダンス | Main or Remote:4Ω~16Ω Main + Remote:8Ω~16Ω |
入力感度/インピーダンス | Phono1、2 MM:2.5mV/47kΩ Phono1 MC:100μV/47Ω Tuner、Aux、Tape:200mV/47kΩ Main in:1V/18kΩ |
Phono最大許容入力(1kHz、RMS) | Phono MM:250mV Phono MC:10mV |
プリ部全高調波歪率(20Hz~20kHz) | Phono MM → Rec out:0.0015%(5V output時) Phono MC → Rec out:0.005%(5V output時) Tuner、Aux → Pre out(via tone):0.005%(1V output時) |
Phono SN比(IHF-A) | Phono MM:90dB Phono MC(250μV):80dB Phono MC(100μV):72dB |
Phono周波数特性 | 20Hz~20kHz、RIAA標準カーブ ±0.15dB |
トーンコントロール | Bass:±7.5dB(50Hz、ターンオーバー500Hz) Treble:±7.5dB(20kHz、ターンオーバー2kHz) |
ターンオーバー周波数 | Bass:125Hz、250Hz、500Hz Treble:2kHz、4kHz、8kHz |
フィルター | EQ subsonic:20Hz、-12dB/oct high:7kHz、-6dB/oct |
ラウドネスコントロール | +7dB(100Hz、Volume -30dB) |
ミューティング | -20dB |
出力電圧 | Pre out(定格):1V Pre out(最大):7V Rec out:200mV |
電源 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 300W |
外形寸法 | 幅471x高さ172x奥行420mm |
重量 | 23.0kg |