TEAC V-6030S
¥70,000(1994年頃)
解説
Vシリーズのカセットデッキ。
ヘッド部には録音・再生が独立したコンビネーション3ヘッドを搭載しており、アンプ部を含む録音・再生プロセスの最適化によってハイパフォーマンスの録音を可能にしています。
ヘッドにはPCOCC巻線CAヘッドを採用しています。
このヘッドではコアにCA(コバルトアモルファス)を採用しており、電磁変換効率が高く微小信号を正確に記録再生し、かつ摩耗にも強いヘッドコアの理想を両立しています。また、非結晶のアモルファス構造を活かし、コアを14層にラミネート化することで電磁透過率を高め、渦電流損失が抑えられ、高域特性をさらに向上しています。
また、微小レベル信号の歪や伝送ロスを抑えるため、内部巻線には高効率伝送素材である99.997%PCOCC(単結晶高純度無酸素銅)を採用しています。
ヘッドブロックは亜鉛合金ダイキャストヘッドベースで支持しています。
一般の金属板と異なり、高質量によって微小な振動がヘッドに伝わるのを防いでいます。また、温度変化などの耐久性に優れているため、常にヘッド位置とアジマス角度を正確に保ち、優れた高域特性や位相特性を長期間にわたって維持する信頼性を得ています。
メカニズム部にはクローズドループデュアルキャプスタン方式を採用しています。
この方式ではヘッドの両側にある2組のキャプスタンとピンチローラーが巻き始めから巻終わりまでテープテンションを常に一定に保ち、安定したヘッドタッチによってテープに伝わる有害な微振動を遮断しています。
このメカニズムにはさらなるブラッシュアップが施されており、ピンチローラー径を左右極僅かに違える周波数分散型とすることで回転の周期的変動による影響を相互にキャンセルさせています。また、キャプスタン表面にはサブミクロンオーダーのエッチング処理を施し、テープのグリップ力を大幅に高め、スリップを防止しています。
キャプスタンモーター軸には高精度大型フライホイールを搭載し、慣性質量を大きくすることで回転ムラの発生を抑えています。
アンチスタティックカセットスタビライザーを採用しており、カセットハーフ全体をホルダーヘッド部に強力に圧着し、振動を徹底して抑えています。高剛性カセットホルダーやトライアングルカセットサポートシステムと相まってメカニズム系の共振を抑えています。
スタビライザー部にはティアック独自の帯電防止構造を採用しています。
ハーフ圧着部分に備えた高導電性の特殊パッドが静電気を放出させ、トラブルの発生を大幅に減少しています。
カセットホルダー部にはトライアングルカセットサポートシステムを採用しています。
この方式ではホルダー部に3点の突起を設けており、従来の4ポイント支持方式に比べてガタツキの無いテープ支持を実現しています。
さらにホルダーベッド部に特殊制振ゴムを加え、ハーフを両面から圧着することで、より徹底した防振構造を実現しています。
カセットリッドには重量200gで6mm厚のアルミ材を採用しており、ホルダー部全体を高質量化しています。
さらに樹脂製ホルダー部は従来素材に比べ5倍の強度を持ち、内部損失が大きく振動減衰特性に優れた特殊高分子素材を採用しており、1.6mm厚鋼板と一体化して強化しています。
フロントパネルには5mm厚アルミ無垢材を採用しています。
内部構造にはセパレートブロック構造を採用しています。
この方式では走行メカニズム、アンプ系、走行系、電源部の各セクションを内部フレームによって完全に分離しており、さらにボリューム部、メカニズム部、ディスプレイ部もフルシールドすることで回路間の相互干渉を排除しています。
シャーシ構造にはハイリジッドシャーシを採用しています。
本体は底面を支えるボトムシャーシ上に設置し、両側のサイドシャーシ、フロントとリアを結ぶ2本の内部フレームをリジッドに構築しています。また、逆U字型のトップパネルはこれらフレームと10本のネジで強固に一体化されており、高い剛性を獲得しています。
特に2本の内部フレームは一種の梁構造となっており、ボディ全体を強化しています。
テープ走行メカニズム部はボトムシャーシから独立したメカニズム専用シャーシに固定されています。
これによりボトムシャーシと二重構造を形成することで剛性を大幅に高め、外部の振動を遮断するとともにメカニズム固有の微振動が内部に伝わるのを抑えています。
ティアックの伝統である3S(Soft、Smooth、Silent)を実現するため、キャプスタン、リール、メカニズムの各セクションを効率よく制御する3モーター方式やパワーロード/イジェクトを採用しています。
録音ボリュームコントロールにはマスターボリューム+L/Rバランスボリューム構成を採用しており、操作性を高めています。また、ボリューム位置によるレベル変動や位相変化も大きく抑え込んでいます。
さらに、測定器グレードの超精密カスタムメイド・ユニットを搭載しており、抵抗をはじめ高品位パーツを投入することで∞から0dBまでメモリ表示値と高精度に連動し、正確なコントロールを可能にしています。
また、ノブはアルミ削り出しの高級仕様を採用しています。
ノイズリダクションシステムとしてドルビーSを搭載しています。
この方式はドルビーB/CをベースにプロフェッショナルユースのドルビーSRの原理を導入したもので、ノイズの目立つ高域で24dB、低域で10dBのノイズ低減効果を実現しています。
また、高精度な信号処理技術によってNRシステム特有のブリージング(息づき)現象を抑えています。
ドルビーB/C/S NRの録音基準レベルをDIN250nWb/mとすることで録音マージンを拡大しています。
また、150kHzハイバイアス録音回路を採用することで高域信号との干渉を抑えて特性劣化を防いでいます。
高域の録音特性を改善するドルビーHXプロを搭載しています。
再生系アンプは2電源ダイレクトカップリング方式による全段モノラルオールDC構成を採用しています。
さらにヘッドアンプ部は入力カップリングコンデンサーを排除したDC構成とすることで低域ノイズや位相特性、リニアリティを改善しています。
テープに最適なバイアス値とレベル(感度)にファインチューニング可能な左右独立式のキャリブレーション機構を搭載しています。
この機能では自動的にメータースケールが切り替り、内蔵発振器によって正確に調整できます。
電源部には大型トランスと大容量電解コンデンサを搭載し、安定した余裕のある供給を確保しています。
さらにメカニズム系と録音再生アンプ系は巻線から分けた完全分離構成とすることで相互干渉を抑えた電源供給を可能にしています。
ワイドスケール(-40dB~+10dB)ピークレベルメーターを搭載しています。
また、テープ走行料を時間で表示する高精度リニアタイムテープカウンターを採用しています。
ディスプレイON/OFFスイッチをリモコンに搭載しています。
極性表示付きOFC電源コードを採用しています。
CDダイレクト入力を搭載しており、入力に直結したよりピュアな録音が可能です。
CDプレイヤー感覚での頭出しが行えるCPS自動選曲機能(15曲)を搭載しています。
リターンtoゼロ機能を搭載しており、カウンター0000位置に巻き戻した後、Stop、Play、Play-Pauseを指定できます。
録音レベル設定に使えるCDレベルチェック機能を搭載しています。
録音/再生モードに応じて自動的に切り替わるオートモニター機能を搭載しています。
オートテープセレクターを搭載しています。
約4秒のオートRECミュート機能を搭載しています。
タイマー録再機構を搭載しています。
パワーロード/イジェクト機構を搭載しています。
ゴールドとブラックの2色のカラーバリエーションがありました。
ワイヤレスリモコンが付属しています。
別売りのCDシンクロコードを用いることで、TEAC製CDプレイヤー(CD/Deck Sync端子付き)とのシンクロ録音が可能です。
機種の定格
型式 | カセットデッキ |
トラック形式 | 4トラック2チャンネル・ステレオ方式 |
ヘッド | 録音・再生:PCOCCコバルトアモルファスコンビネーションヘッド 消去:フェライトヘッド |
モーター | キャプスタン用:DCサーボモーター リール用:DCモーター メカニズム用:DCモーター |
ワウフラッター | 0.027%(W.RMS) ±0.048%(W.Peak、EIAJ) |
周波数特性(EIAJ) | 15Hz~21kHz ±3dB(メタルテープ) 15Hz~20kHz ±3dB(クロームテープ) 15Hz~18kHz ±3dB(ノーマルテープ) |
SN比 | 58dB(NR off、規定録音レベル、EIAJ) 70dB(Dolby B on、CCIR) 80dB(Dolby C on、CCIR) 84dB(Dolby S on、CCIR) |
早巻時間 | 約85秒(C-60テープ) |
入力感度/インピーダンス | ライン:100mV/50kΩ CDダイレクト:180mV/50kΩ |
出力 | ライン:0.41V/50kΩ ヘッドホン:2mW/8Ω |
電源 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 20W |
外形寸法 | 幅442x高さ149x奥行352mm |
重量 | 8.5kg |
付属 | ワイヤレスリモコン |
別売 | CDシンクロ・コード WR-7000(¥980) |