解説　

計測用データレコーダーの技術を投入し、オープンリールに迫る音質を実現したエルカセットデッキ。

AL-700では駆動系にデータレコーダーの技術を盛り込んだ計測機なみの高性能駆動系を採用しており、4つの新技術によってクローズドループデュアルキャプスタンの安定したテープ走行系のメリットを押し進めています。
4つの新技術は、ツインベルト方式クローズドループデュアルキャプスタン、取付精度の高い準固定ヘッド、自動調芯ピンチローラー、マグネフロートキャプスタンとなっています。

メカニズム部にはツインベルト方式のクローズドループデュアルキャプスタン方式を採用しています。
クローズドループデュアルキャプスタン方式では2組のキャプスタンとピンチローラーによってテープをしっかりと挟んで駆動します。そして2組のキャプスタンの僅かな回転差によってテープテンションを与える事で、外乱による数10Hzから数kHzの非常に細かなテープの振動(フラッター成分)をシャットアウトし、安定したテープ走行を実現しています。
この方式は非常に優れた構造となっていますが、何らかの外的な影響によって2組のキャプスタンの回転差が大きくなった場合にピンチローラーに挟まれたテープの間に非常に強いテンションがかかる問題を持っています。これを解消するために採用されたのがツインベルト方式で、駆動ベルト以外に外側のフライホイールに直接かかった幅の広い補助ベルトを採用しています。これによりリール台の負荷変動や駆動ベルトの弾性変化などによってキャプスタン同士の回転差が大きくなった場合でも補助ベルトがサーボの役目を果たし、自動的に正常な回転差に修正する事で常に一定のソフトなテープテンションを与えます。この補助ベルトは駆動ベルトにかかる負担を軽減すると共にフライホイールにかかる側圧を少なくし、耐久性を向上させています。

固定式ヘッドを採用しており、ヘッドの取付精度を高めています。
ヘッドの後部に突き出た一体構造のダイキャスト治具と中央部にあるキャプスタンシャフトと同じ精度で研磨されたピンにより、ヘッドの高さ(ハイト)、首ふり(タンジェンシー)、顎出し(チルト)を厳密に決定しています。これにより従来の3点調整方式に比べてヘッドの取付精度が飛躍的に向上しています。
また、残る垂直(アジマス)調整は1本の調整ビスで調整でき、中央部のピンを中心にシーソー式にアジマス調整ができるため、調整ビスを動かしてもヘッドの高さは変わりません。
この方式は、激しい振動の中でデータを記録するティアックの車載用データレコーダーの技術とノウハウから生まれた方式となっています。

ピンチローラーには自動調芯ピンチローラーを採用しています。
このピンチローラーはローラーシャフトを取り囲む数個の金属ボールによってローラーをサポートしており、普通のピンチローラーに対して約3倍の遊びが設けられています。ボールはワンポイントでローラーに接しているため、ローラーシャフトが斜めになったりローラーのゴムが片減りを起こしても遊びの範囲内で常にキャプスタンシャフトを均等に圧着します。
この方式は頻繁に圧着を繰り返し、高速でテープを駆動するデータレコーダーに必要な機構となっており、信頼性の向上とともにエルカセットテープを安心して使えるよう配慮がされています。

キャプスタンにはマグネフロートキャプスタンを採用しています。
この方式ではフライホイールと軸受の近接する部分にそれぞれマグネットを設け、同極同士の磁気反発力によって常にキャプスタンシャフトを底部の一点に押し付けています。この方式はスプリング等の機械的に圧着する方式とは異なり、キャプスタンシャフトが接触する部分は軸受けと底部の2ヶ所のみとなります。このため機械的なノイズや摩擦が極めて少なく、シャフトの前後動によるテープ走行への悪影響を防いでいます。しかもマグネフロート方式は温度変化によっても圧着力が変わらず、摩耗も少ない耐久性の高いメカニズムとなっており、長期にわたって高い信頼性を保つ事が可能です。

キャプスタン用にFGサーボDCモーター、左右のリール用にコアレスDCモーターを採用しています。

録音、再生ヘッドには高硬度パーマロイヘッドを採用しています。
また、消去ヘッドには効率の良いフェライトヘッドを採用しています。

バイアスとイコライザーの自動切換機構を搭載しています。
エルカセットテープの3種類のテープタイプには選別用の穴が設けられており、この穴を利用してバイアスとイコライザーの切換えを行います。

ドルビーシステム自動切換え機構を搭載しています。
エルカセットテープのシェルにはノイズリダクション(ドルビーシステム)選択用の爪が設けられています。AL-700ではNR SystemのスイッチをドルビーAutoの位置にするとこの爪の有無を検出して自動的にドルビーシステムを選択し、録音・再生を行います。

光電式のオートエンドストップ機構を搭載しています。
エルカセットテープ終端に設けられた透明なリーダーテープによってオートストップします。
純電子式で、しかもリーダーテープのところで動作するため、終端まで巻き取られてテープに強い張力がかかるのを防ぎ、テープを保護します。

操作部にはマイクロスイッチとロジックコントロールによるソフトタッチオペレーションを採用しています。

Rec Muteを搭載しており、ワンタッチで無信号録音が可能です。

入力信号の平均レベルを表示する大型VUメーターと、瞬時の過大入力を警告するピークレベルインジケーターを搭載しています。
ピークレベルインジケーターは左右独立式となっており、細かいレベルセッティングに活用できます。

タイマー機構を搭載しています。

メモリーオートストップ/オートプレイ機構を搭載しています。

ドルビーコピースイッチを搭載しており、ドルビーエンコーデッドテープからのコピーに活用できます。

MPXフィルターを搭載しています。

カセットホルダーカバーはソフトな開閉を採用しています。また、取り外しが可能となっています。

マイクジャック連動のモノ/ステレオ切換機構を搭載しています。

出力ボリュームを搭載しています。

別売りのdbxユニットRX-10を接続できます。

別売りのリモートコントロールユニットRC-90を使用できます。

機種の定格

型式	エルカセットデッキ
トラック形式	4トラック・2チャンネル・ステレオ
ヘッド構成	消去、録音、再生、3ヘッド
使用テープ	LC-60、LC-90 エルカセットテープ(TypeI/II/III)
モーター構成	キャプスタン用:FGサーボDCモーター リール用:コアレスDCモーターx2
ワウ・フラッター	0.04%(WRMS)
早巻時間	70秒以内(LC-60テープ)
周波数特性	25Hz～20kHz ±3dB(Type-I) 25Hz～22kHz ±3dB(Type-II) 25Hz～22kHz ±3dB(Type-III)
SN比	59dB(TypeI) 62dB(TypeII) 62dB(TypeIII) ※NR off、315Hz、3%THDレベル、IHF-A) ドルビーシステムによって録音再生において1kHzで5dB、5kHz以上で10dBの改善が可能
総合歪率	0.8%(TypeII)
入力	Mic:0.25mV/-72dB(適合インピーダンス600Ω) Line:60mV(-24dB)/50kΩ
出力	Line:0.3V(負荷インピーダンス10kΩ以上) Headphone:8Ω
電源	AC100V、50Hz/60Hz
消費電力	37W
外形寸法	幅440x高さ230x奥行310mm
重量	18kg
別売	dbxユニット RX-10(Type1、￥78,000) リモートコントロールユニット RC-90(￥10,500)