TANNOY G.R.F. Memory
¥560,000(1台、1981年頃)
解説
タンノイの創設者であるG.R.ファウンテンが残したスケッチを基に、T.B.リビングストンとR.H.ラッカムが誕生させたフロア型スピーカーシステム。
G.R.F.はGuy R.Fountainの略です。
タンノイ伝統のデュアルコンセントリックユニットとして、クラシックモニターの血統である38cm同軸型ユニット
3839Mを搭載しています。
デュアルコンセントリックは、中心部にあるホーントゥイーターの幾何学的延長がウーファーのコーンとなった同軸型ユニットで、2ウェイ方式でありながら、シングルコーンスピーカーと同様に一点から音を放射する特長を持っています。
ウーファー部のコーンにはドイツのクルトミューラー社特注のハードコーンを採用しています。このコーンは、薄いコーン紙に特殊な薬品をコーティングするとともに、裏面に8本のリブを放射状に接着したタンノイ独自のもので、ガードアコースティックコーンと名づけられています。このガードによりコーンの分割振動を抑え、トランジェント特性やパワーハンドリング特性を向上させています。
また、エッジにはタノプラス・サラウンドと呼ばれる特殊な高分子系の材料を独自の形状に成型したものを採用しています。
ボイスコイルには一つ一つ手で巻かれたものを採用し、240度の高音に耐える特殊な処理が施されています。
トゥイーター部には、ロール状のエッジまで一体プレスにした、軽量硬質アルミニウム合金の逆ドーム型ダイアフラムと、アルミニウム線のボイスコイルから構成されています。この振動板は6段階プレス法で除々にドームが形成され、1回のプレスごとに過熱されて内部歪を除く処理がされています。また、ダイアフラムの反対側には音響的にバランスがとられた空洞が設けられており、トランジェント特性の向上を図り、歪を軽減しています。
また、ホーンのネック部には19個のスロートが開けられており、位相の補正を行っています。
クロスオーバーネットワークは、前面バッフルからロールオフとエナジーの二種類の調整が可能です。
ロールオフ調整は5kHz以上の高い周波数を4段階で調整でき、エナジー調整は1kHzから20kHzまでのトゥイーターのレベル全体を5段階に増減できます。それぞれの調整つまみのLevelの位置がノーマルポジションとなります。
ネットワークには厳選した部品を使用し、低損失の無極性コンデンサーと、容量が大きく精度が高い抵抗やコイルを使用しています。
エンクロージャーにはウォルナットの無垢材をふんだんに使い、容積220Lのバスレフ型に設計されています。
また、前面バッフルにはコルク材が貼られており、共振を防いでいます。
ネットグリルには、アイボリーと茶の混紡による特別製のものを採用しています。
さらに、サランネットボードを確実に固定し、ハイパワー時における共振を防ぐため、鍵によるロック方式が採用されています。
鍵にはダイキャスト製の金色に輝く重厚なデザインのものを採用しています。
前面バッフルのネットワークプレートには「ファウンテンよ永遠に」という願いが込められ、イギリスの地図と、R.H.ラッカムの献辞「私は、ファウンテンから音の心を教えられた」の刻印がされています。
エンクロージャーのメンテナンス用に特別製のワックスが付属しています。
機種の定格
方式 | 2ウェイ・1スピーカー・バスレフ方式・フロア型 |
使用ユニット | 全帯域用:38cm同軸コーン型(3839M) |
再生周波数帯域 | 29Hz~20kHz、±3dB |
出力音圧レベル | 92dB/W/m(40Hz~20kHz) 113dB/120W/m(40Hz~20kHz) 119dB/500W/m(ピーク) |
許容入力 | 120W連続(50Hz~1kHz) 500Wピーク(1kHz~20kHz) |
公称インピーダンス | 8Ω(5.5Ω最小) |
第三高調波歪率 | 0.5%以下(90dB SPL、40Hz~20kHz) 2.0%以下(110dB SPL、80Hz~20kHz) 5.0%以下(113dB SPL、80Hz~20kHz) |
クロスオーバー周波数 | 1kHz、12dB/oct |
コントロールネットワーク | 1kHz~20kHz(±6dB/oct、5ポジション) 5kHz~20kHz(+3dB~-6dB/oct、4ポジション) |
内容積 | 220L |
外形寸法 | 幅800x高さ1100x奥行480mm(脚部含む) |
重量 | 62kg |