オーディオの足跡

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ST-J88の画像
 解説 

ESPRITシリーズの最高級チューナーとして開発されたFMステレオチューナー。

局部発振回路にはPLL方式を採用しています。
ST-J88ではST-A7Bに採用されたクリスタルロック・システムをさらに発展させ、シンセサイザーチューナーで重要な電圧制御発振器(VCO:Voltage Controlled Oscilator)を用いた局部発振回路を採用しています。そして、加える直流電圧の大小によって100kHzステップで発振周波数を変化させ、この発振周波数を基準信号と位相比較し、常に一定の周波数を保つよう直流電圧をコントロールしています。
基準信号には温度係数5x10-5/℃以下の安定度が得られる水晶発振子を用いています。この基準信号は局部発振器の出力を分周したプログラマブルディバイダーからの制御信号をもロックし、バリキャップを用いた同調回路をコントロールしています。これにより正確な同調が得られ、バリコンによる従来の同調方式に起こりがちな同調ズレによる歪の増加を防いでいます。

最大7局までのプリセットチューニング機能を搭載しています。
この受信周波数のプリセットメモリーはマルチプロセスメモリーとなっており、モード(stereo/mono)、ミューティング(on/off)、セレクティビティ(normal/narrow)といった受信状態も同時に記憶させる事ができます。これにより放送局を切り替えるたびに受信状態のファンクションを操作する手間を解消しています。

自動選局機能には両方向オートチューニングを採用しており、ワンタッチで周波数が素早く変化し、放送局をキャッチすると停止して同調します。この自動選局機能は周波数の高い方向にも低い方向にもどちらにも使用できます。
また、マニュアルチューニングとしてステップチューニングを搭載しており、STEP/STOPボタンを押しながらオートチューニングボタンを押して選局すると、オートチューニングボタンを押すたびに0.1MHzずつ周波数が動きます。これにより弱電界の局を受信する時にも活用できます。

単に選択度や感度を良くするだけでなく、スプリアス妨害や相互混変調などの排除も徹底した設計となっています。また、プリアンプTA-E88の設計思想を踏襲し、一つ一つの部品にも最良と思えるものを採用する事で、FM放送のハイクオリティ化に対応しています。

フロントエンド部は従来のバリコンの代わりにツインバリキャップを6個用いた電圧制御方式を採用しています。また、高周波増幅段には伝送特性の優れたデュアルゲートMOS-FETを採用しており、混変調や相互変調による妨害を抑えると共に感度を向上させています。
同調回路にはダブルチューン回路を縦続接続したクォドループルチューン構成となっており、アンテナ段の同調回路を含めて合計5段の同調回路によってイメージ周波数などの妨害信号を十分に減衰し、ミキサー段に混入するのを防いでいます。また、ミキサー段にもデュアルゲートMOS-FETを用いており、相互変調妨害を抑えています。
ミキサー出力はダブルチューンの10.7MHzIFTで不要信号をカットしています。また、局部発振回路(VCO)はベース接地のバッファアンプを介してミキサー段とシンセサイザーのプリスケラーに接続しています。

中間周波(IF)増幅部にはIF帯域切換方式を採用しており、normalとnarrowの切換が可能です。
IF増幅部の前段は共通となっており、後段はnarrow時のみの回路として設計・調整されています。前段は2素子1パックのユニフェイズフィルターを3個、FETアンプを介て使用しており、一つ一つのフィルターの特性を最大限に引き出しています。後段はnormal帯域はパスし、narrow帯域のみFETアンプを介した表面弾性波(Surface Acoustic Wave)フィルターとユニフェイズフィルターとさらに実効選択度を向上させています。
各回路にはICリミッターアンプ、ディスクリドライバー、レシオ検波器を用いています。また、メータードライブやオートチューン、ストップ回路はnarrow帯域から取り出しています。また、narrow側の検波出力には遮断周波数60kHzのビートカットフィルターを採用しており、不要信号を抑えています。
帯域切換スイッチには特性の良いC-MOSアナログスイッチを採用しています。

MPX部にはパイロット信号キャンセル回路を内蔵したPLL-ICを採用しており、ローパスフィルターと組み合わせる事で15kHzまでほぼフラットな周波数特性を獲得しています。また、セパレーション特性についてはIF帯域幅の切り替えによって生じる誤差を補正しており、normal帯域でもnarrow帯域でも最良の状態になるよう調整されています。

ローパスドライバーアンプと出力アンプには音質的に優れたオペアンプを採用しており、±15Vの電源で駆動する事で十分なダイナミックレンジを確保しています。
出力アンプはDCアンプ構成となっています。

電源部には大容量のトロイダルトランスを採用しており、VCO制御電圧用の30V、コントロール回路用の5V、チューナー回路用の±15Vを独立させています。そして、それぞれにICを用いた定電圧回路を挿入する事で万全を期しています。

受信状態が一目でわかる5ステップのデジタルチューニングインジケーターを搭載しており、電波の強さ20dBf以上を10dBステップで60dBまで表示できます。

7セグメントの蛍光表示管を採用しており、0.1MHzステップでデジタル周波数を表示します。

局名表示板が付属しており、メモリーしてある局を表示できます。
また、0.1MHzステップの表示シートも付属しています。
リードリレーを用いたミューティング機構を採用しており、音質を損なわずに局間ノイズをカットできます。

出力端子は固定と可変の2系統を装備しています。
端子には金メッキ仕上げが施されています。

機種の定格
型式 FMステレオチューナー
回路方式 FMスーパーヘテロダイン
受信周波数 76.0MHz~89.9MHz
アンテナ 300Ω平衡型
75Ω不平衡型(同軸ケーブルコネクター)
実用感度 1.8μV(IHF)
10.3dBf(新IHF)
SN比50dB感度 mono:3.2μV(IHF)/15.3dBf(新IHF)
stereo:35μV(IHF)/36.1dBf(新IHF)
SN比 mono:80dB
stereo:75dB
キャプチャーレシオ normal:1.0dB
narrow:1.7dB
AM抑圧比 60dB
イメージ妨害比 110dB
IF妨害比 110dB
スプリアス妨害比 110dB
実効選択度
normal: 25dB(300kHz)
65dB(400kHz)
narrow: 65dB(300kHz)
高調波歪率
mono stereo
normal narrow normal narrow
100Hz: 0.04% 0.08% 0.07% 0.3%
1kHz: 0.04% 0.08% 0.07% 0.3%
10kHz: 0.04% 0.08% 0.15% 0.6%
ステレオセパレーション
normal: 50dB(100Hz)
50dB(1kHz)
45dB(10kHz)
narrow: 45dB(100Hz)
45dB(1kHz)
40dB(10kHz)
周波数特性 30Hz~15kHz +0.2 -0.5dB
出力レベル/インピーダンス 固定出力:750mV/2kΩ(※別カタログでは7.5kΩ記載)
可変出力:0V~1.2V/470Ω
使用半導体 トランジスタ:44個
MOS FET:7個
IC:66個
ダイオード:24個
電源電圧 AC100V、50Hz/60Hz
消費電力 25W
外形寸法 幅480x高さ80x奥行370mm
重量 約7.0kg
付属 接続コード(RK-112相当品)
FMフィーダーアンテナ
F型同軸プラグ
局名表示板