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SONY TC-K88
¥158,000(1979年頃)
解説
高級ラインナップである88シリーズの思想を生かし、アンプ回路や部品をじっくりと吟味したリニアスケイティング方式のカセットデッキ。
当時のソニーの薄型アンプである88シリーズとデザイン的な統一を考慮し、各ブロックに最新の電子技術を導入しています。
また、内部レイアウトは左に電源部、右にアンプ部を配置しており、シャーシ内でできる限り離す事で相互干渉を抑えています。
メカニズム部にはリニアスケイティング方式を採用しており、ボタン操作でカセット収納部が静かにスライドして前面に出てくるデザインとなっています。
スライド動作には専用のコアレスモーターを採用しています。また、このメカニズムにはメカデッキとシステムコントロールブを内蔵しており、出したままでの操作も可能です。
さらに、セーフティ機構を装備しており、カセットの装着が不十分な際の誤作動を防止しています。
メカニズムにはキャプスタンと左右のリール台をそれぞれ専用のモーターでダイレクトドライブする3DD方式を採用しています。
キャプスタンドライブにはクリスタルロック・マグネディスクサーボ方式による大型BSLグリーンモーターを採用しており、水晶発振器の精度で回転数を維持する事で正確かつ安定したテープスピードを実現しています。
また、リールのテイクアップとサプライ用には扁平型BSLグリーンモーターを採用しています。BSLグリーンモーターはソニーのDDプレイヤーにも使用しているリニアBSLモーターと同一の方式で、コギングの原因となるスロットやブラシの無いシンプルな構造となっています。しかもTC-K88では軸受部はキャプスタンモーターの軸受とともに亜鉛ダイキャストベースに一体化した構成となっており、これにより3つの回転系の機械的な距離を精確に取る事でトルクムラや回転精度、制御特性、ノイズなどの問題を解消しています。リール用モーターは専用の電子回路を用いて高速巻取り(FF/REW)時のテープ走行速度を制御しています。
マイコンやIC、トランジスタ、ダイオードを用いたロジカルコントロールを採用しています。
メカニズムの各動作タイミングはゆとりを持って時系列的に管理されており、カセットハーフ内のテープ駆動に負担がかからず、テープの伸び縮みを防ぎます。さらに電磁ソレノイド駆動によって複雑な伝達機構を単純化し、信頼性を高めています。
ヘッドにはメタルテープにも対応したS&Fヘッドを採用しています。
このヘッドはフェライトの高域特性の良さとセンダスト合金の飽和磁束密度の高さを併せ持つ特殊3段構造のヘッドとなっています。
消去ヘッドにはF&F消去ヘッドを採用しています。
このヘッドは磁気レンズで強力な磁束をテープに加える磁気収束構造のマグネ・フォーカス4Gap消去ヘッドで、ローパワーでも十分な消去特性を実現しています。
再生イコライザーアンプはDC領域まで利得をもたせた回路構成となっており、低歪や優れた過渡応答特性を得ています。
また、アンプ初段とヘッドをダイレクトカップリングする事で微少レベルでの歪や低域位相特性を向上させています。
ノイズリダクションシステムとしてドルビーNRを搭載しています。
TC-K88ではドルビーNR・ICを採用しており、複雑な回路引き回しによる音質への影響を防ぐと共に、録再切換スイッチを省略し、アンプ部の信頼性も向上させています。
MPXフィルターON/OFFスイッチを搭載しており、FMエアチェック時にドルビーNRの誤動作を防ぎます。
電源に起因する音の歪を低減できるFETバッファ電源を採用しています。
バイアス/イコライザー独立4段切換式のテープセレクターを装備しています。
イコライザーは、Type1(normal)、JHFカセット用のType2(CrO2)、DUADカセット用のType3(Fe-CR)と、Type4(Metal)の4ポジションとなっています。
プリアンプTA-E88で実績を持つ部品を採用しています。
誤差1%以下の金属被膜抵抗や無誘導タイプのポリプロピレンコンデンサ、ダイキャスト製の高精度録音ボリューム、無酸素銅線によるヘッドのリード線に加え、信号系には電磁波の影響を考慮して銅製のビスやヒートシンクを採用しています。
入出力端子には金メッキ端子を採用しています。
メーター部にはテープ残量機能付きの多機能液晶ピークプログラムメーターを採用しています。
左右各々33個のエレメント構成となっており、青と赤のエレメント表示などの特長を持っています。また、テープ残量機能では、テープの巻取り量の変化をマイクロコンピューターが処理し、メーターのスケール上にポイント表示します。テープ残量はC-60タイプ使用時で1エレメント約1分の単位で残量表示されます。
4桁電子カウンターを搭載しています。
このカウンターは2つのリール台から信号を取り出し、電子回路で処理してデジタル表示しています。無接触で信号検出しているため、回転系への影響がありません。
オートスペース付きのRec Mute機能を搭載しています。
オートスペースは約4秒です。
AMS(オートマチック・ミュージックセンサー)やCUEモニターを搭載しています。
AMSでは曲間の無音部分をヘッドが検出して目的の曲の頭出しを行います。また、CUEモニター機能で曲の途中での一時的な早送りや巻き戻しが可能です。
メモリーストップ、メモリープレイ、オートプレイ機能を搭載しています。
タイマースタンバイ機能を搭載しており、別売りタイマーを組み合わせる事で留守録音や目覚まし再生が行えます。
自照式の操作ボタンを採用しています。
再生から録音にダイレクトチェンジできる後追い録音機能を搭載しています。
オートシャットオフメカを採用しており、メカやテープが痛むのを防ぎます。
芯線にウレタン被膜銅線を用いた低用量接続コードが付属しています。
別売りワイヤードリモコンにより離れた場所からの操作が可能です。
機種の定格
型式 | カセットデッキ |
トラック形式 | 4トラック2チャンネルステレオ |
ヘッド | 録再:1 消去:1 |
モーター | BSLグリーンモーターx3(キャプスタン用x1、リール用x2) コアレスモーターx1(スケイティング用) |
サーボ方式 | クリスタルロック・マグネディスクサーボ |
SN比 | 60dB(ドルビーoff、ピークレベル、メタルカセット) ドルビーon時:5dB(1kHz)、10dB(5kHz以上)改善 |
歪率 | 0.9%(メタルカセット、DUADカセット) |
周波数特性 | 20Hz~19kHz、30Hz~17kHz ±3dB(メタルテープ) 30Hz~13kHz ±3dB(メタルテープ、0VU録音時) 20Hz~20kHz(メタルカセット、別カタログ記載) |
ワウ・フラッター | 0.03%wrms |
入力端子 | Mic(標準ジャック2) 最小入力レベル:0.25mV(-70dB) ローインピーダンスマイク用 Line(ピンジャック2) 最小入力レベル:77.5mV(-20dB) 入力インピーダンス:50kΩ |
出力端子 | Line(ピンジャック2) 規定出力:0.435V(50kΩ負荷) Headphone(ステレオ標準ジャック) 出力レベル:-26dB(8Ω負荷時) |
メーター部 | 指示範囲:-40dB~+8dB 周波数特性:20Hz~20kHz ±1.5dB アタックタイム:1msec リカバリータイム:750msec オーバーシュート:0 表示エレメント数:33(L/R各チャンネル) |
電源 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 30W |
外形寸法 | 幅480x高さ80x奥行385mm(把手含む) |
重量 | 10kg |
付属 | 接続コード(2本) ヘッドクリーニング棒(1式) |
別売 | ワイヤードリモコン RM-50(¥6,000) |