オーディオの足跡

SCD-1の画像
 解説 

SONYのSACDプレイヤー1号機。

SCD-1は2chステレオ専用となっており、SACDのマルチチャンネル再生には対応していません。

サーボ回路にはSACDとCDのそれぞれに最適な処理を行う信号処理サーボシステムを採用しています
SACDとCDでは光ピックアップやモーター系のサーボ制御内容が大きく異なります。そこでSCD-1ではDSPを用いたデジタルサーボを採用しており、それぞれに最適な制御を行うことで安定した信号読取りを可能にしています。また、光ピックアップで読み取った信号はRFプロセッサーでデータの復調やエラー訂正を行いますが、SCD-1ではこの工程も全て1チップ化し、サーボ動作やRF信号処理の専用LSI化を図り、高い信頼性の獲得とデジタルノイズの低減を両立させています。

DSDデコーダーLSIによってSACDに記録されたでj値あるデータを解読して1bitのオーディオ信号を生成しています。
まず、SACDの特徴であるウォーターマーク(透かし)の解読を行い、RFプロセッサーから出力されるデータを復号化し、正確なクロックに従って1bitのオーディオデータストリームとして出力します。ここで生成される1bitのオーディオ信号の品質が最終的に出力される音楽信号に大きな影響を与えるため、高精度な処理能力を持つDSDデコーダーLSIを独自に開発、搭載しています。このDSDデコーダーLSIではTOC(曲数、演奏時間、テキスト情報)などのサブコードの解読も行います。

SACDのDSD信号はパルスの密度によって音楽信号を表現しており、高い精度を維持するにはパルスをいかに正確に再現するかが重要となります。このパルス再生の精度を決定する要素には「振幅軸方向の精度」と「時間軸方向の精度」があります。SCD-1では、振幅軸方向の精度のためにACPシステムとカレントパルスD/Aコンバーターを、時間軸方向の精度向上のためにS-TACTパルスジェネレーターを搭載しています。

スイッチング歪の影響を除去するため、新開発のACPシステム(Accurate Complementary Pulse Density modulation System)を搭載しています。
パルス信号は形の整った矩形波であることが理想ですが、実際にICから出力されるパルス信号は立ち上がりや立ち下がりの部分が垂直にならず、オーバーシュートやアンダーシュートが付加されることで正確な形状になりません。これが0→1あるいは1→0の変化時に発生するスイッチング歪となります。
ACPシステムでは、本来パルスを出力しない0の信号でもパルスを出力し、かつ1と0のパルス幅を互いに補数の関係になるように処理することでパルスの「あり/なし」という情報をパルスの「幅が広い/狭い」という情報に変換しています。これによりスイッチング歪が生じていてもDSD信号そのもの精度には影響を与えないようにすることができ、広帯域の音楽信号を高純度のままアナログ信号に変換することが可能となっています。

時間軸の揺らぎを改善するため、S-TACT(Syncronus Time Accuracy ConTroller)を搭載しています。
パルスジェネレーターは入力されたデジタルデータを読み取って高精度なパルス信号を生成する役割を持っています。パルスの生成には水晶振動子による高純度のクロックを使用しており、クォーツ精度という極めて時間軸精度の高いものとなっています。
S-TACTでは専用に独立したLSIを搭載しておりパルス生成部をデジタルフィルターやノイズシェーパーなどのデジタル演算部から完全に分離しています。これにより、デジタル演算部で発生するスイッチングノイズが電源変動を通じて信号の精度を劣化させるなどの悪影響を排除し、クォーツ精度のパルス生成を可能にしています。

D/A変換部にはカレントパルスD/Aコンバーターを搭載しています。
ACPシステムとS-TACTによってスイッチング歪や時間軸の揺らぎが改善されたDSD信号は高精度な電圧パルスとなっています。しかし、電圧パルスの場合スイッチング時の応答によってパルスの振幅が微妙に変化することがあります。
カレントパルスD/Aコンバーターでは内部に安定した定電流源を持っており、電圧パルスを用いて電流源をスイッチングすることでよりクリーンな電流パルスに変換しています。

カレントパルスD/Aコンバーターから出力される電流パルスはI-V変換され、アナログローパスフィルターを通過してアナログ信号に戻ります。このローパスフィルターにはGIC型フィルターを採用しています。この方式では信号が半導体などのアクティブ素子を通過しないため、より純度の高い音質を保つことができます。
SACDは理論上1.4MHz程度までの周波数特性を持っていますが、実際の再生周波数帯域は回路設計や構成するパーツの要素を考慮し、音質的にも最良のポイントが選ばれています。SCD-1のローパスフィルターは50kHz付近よりなだらかに減衰する特性となっており、100kHzを超える信号の再現も可能となっています。

CD再生時に使用されるデジタルフィルターには24ビット可変(V.C.)デジタルフィルターを搭載しています。
このフィルターは従来のものに比べて優れた演算能力を持っており、24ビット精度の演算能力と、一度の演算で直接8倍オーバーサンプリングが可能となっています。また、音色の変化が楽しめるフィルターポジションは5ポジション備えています。
フィルターポジションには、信号をより滑らかにする処理を加えた#1クリアーや、ソニーとしては初めての偶数次フィルターである#3ファインのポジションなどが追加されています。

ピックアップ部には新開発のツインピックアップを採用しており、SACD用に波長650nm、CD用に波長780nmのピックアップを搭載しています。それぞれのディスクに最適な波長のピックアップを備えることで信号読取りの信頼性を向上させています。
また、信号読取り方式には光学系固定メカニズムを採用しており、振動の影響を受けやすいピックアップを固定し、重量のあるディスク側をゆっくりと水平移動させる方式としています。これによりピックアップを制御するサーボ電流の変動を減らし、安定した信号読取りを可能にしています。

駆動用のスピンドルモーターには新開発の高剛性アルミダイキャスト製を採用しています。
支持部にはサファイア軸受け、回転部にはルビーボールを使用し、接点での回転系摩擦ロスを低減することでサーボ電流を減少させています。

メカベースには板厚6mmにおよぶアルミニウム削り出し素材を採用し、不要な振動を抑える開口部を設けた補強板を加えるなど、剛性向上と共振防止を徹底しています。

強固な構造を持ち、振動にも強いトップローディング方式を採用しています。
ローディングパネルは横方向にスライドする新開発の電動ローディング機構を採用しており、天板パネル面には移動のためのガイドレールが見えず、ローディングパネルはわずかに浮上してスムースにスライドする構造となっています。
また、内部構造もモーターカバーとフローティング機構によって防音・防振対策を施し、ディスクが回転するハウジング内も防振塗装処理が施されています。さらに、スライドメカの主軸にはステンレス材を使用し、軸受けには真鍮無垢材を、シャーシベースには厚さ1.6mmの鉄板を用いて剛性を高めています。

シャーシ構造にはBPシャーシを採用しています。
このシャーシはベース(Base)シャーシを金属板を2枚貼り合わせた10mm厚とし、そこに鋳鉄製の支柱(Pillar)を7本立て、側板や天板を取り付けていくシンプルな構造となっています。構成素材そのものの強度を高めることでシンプルな構造ながら十分な剛性を確保しており、シャーシ内部に広いスペースを確保しています。
また、支柱となる鋳鉄には減衰特性の良いハイカーボン材料を使用しており、天板と底板間の共鳴を抑えています。

脚部には新開発の偏心インシュレーターを採用しており、中高域の濁りを無くす点接触と、適切な面積で支えることで重低音を再現する面接触の両方の特長を兼ね備えています。
このインシュレーターはハイカーボン鋳鉄を使用したベース内部にピンポイント構造を設けたもので、ピンポイント部を真鍮とすることで異種金属による共振の分散を図ったほか、ソニー高級オーディオ機器で採用された偏心構造によって振動低減を図っています。

オーディオ基板にはガラスエポキシ基板を使用しており、両面基板やバスバーの採用によって左右対称のレイアウトとかいろの合理的な配線を可能にしています。
まず、S-TACTパルスジェネレーターや24ビット可変デジタルフィルター、D/Aコンバーターなどのデジタル系ブロックは、最短距離のデータ伝送とノイズ低減を目指し、部品の表面実装を多用しています。そして、アナログローパスフィルター以後のアナログ部は音質的に優れたパーツを選び、ゆとりのあるレイアウトで配置し、出力バッファーアンプはディスクリート素子で構成しています。
さらに、オーディオ基板上にアナログ用ディスクリート安定化電源を配置し、左右独立の3層バスバーによってブロックごとの低インピーダンス給電を実現しています。また、オーディオ出力端子のグランドとオーディオ基板を厚い銅板でメカニカルに直結するなど、アースラインの強化も測っています。
一方、デジタルサーボ信号処理システムなどを持つメイン基板は4層パターン構造の表面実装基板を採用しており、複雑で大規模な回路をブロックごとに集積化させたLSIと小型チップを使用し、小面積の1枚基板にまとめるデジタルミニマム基板としています。このメイン基板はドライブメカの下部に配置されており、最短距離で処理回路への伝達を可能にし、不要輻射ノイズの低減を図っています。
こうしたレイアウトによって残りの部分に大型部品の多い電源部やオーディオ基板をゆとりを持って配置でき、よりストレートな信号経路及び電源供給ラインのコンストラクションを実現しています。

電源部では、オーディオ系とデジタル・サーボ系のそれぞれに専用の電源トランスを搭載しています。トランスには樹脂を充填したシールドケース入りRコアトランスを採用しており、リーケージフラックスの低減や不要振動を排除しています。さらに、リモート操作型パワースイッチを採用しており、AC電源一次ラインの引き回しを最小限に抑え電源ノイズの混入を抑えています。
また、オーディオ系電源回路は音質的に有利なディスクリート方式を採用しており、オーディオ基板上に配置することで低インピーダンスでの給電を図っています。この他、デジタルフィルターやD/Aコンバーターなどのブロックごとに安定化電源を独立搭載することで各部の干渉を抑えています。

スタンダード/カスタム切換えスイッチを搭載しています。
従来のアンプやスピーカーはCDを主とする20kHz前後までの周波数帯域に合わせた特性をベースに設計されています。このため、超高域特性を持つSACDの再生時に不用意にボリュームを上げるなどの不足の事態に備え、アンプやスピーカーを保護するスタンダードポジションを設けています。
従来のアンプとの接続時はスタンダードポジションを推奨しており、TA-E1やTA-N1などの機器と接続する場合はカスタムモードを推奨しています。

SCD-1ではディスクの自動判別が可能ですが、ディスク選択キーであらかじめ切り替えておくことで判別時間の短縮が可能です。
また、ハイブリッドディスクを再生する場合にはそれぞれの層の再生が選択できます。

SACD、CDともにテキストエリアに記録されているテキストデータ(英数字)の表示が可能です。

同軸と光の2系統のデジタル出力を搭載しています。SACDはデジタル出力できませんが、CD再生時はデジタル出力が可能です。また、デジタル出力のON/OFFも切換えできます。

バランス出力選択スイッチを搭載しており、アンバランス出力の使用時にはバランス出力のON/OFFが可能です。

ワイヤレスリモコンが付属しています。
このリモコンはクリック感のあるキースイッチや1mm厚のアルミニウムプレートを配した薄型設計となっています。

機種の定格
型式 SACDプレイヤー
周波数特性
SACD:

CD:
2Hz~100kHz
2Hz~50kHz -3dB
2Hz~20kHz(EIAJ)
ダイナミックレンジ
SACD:
CD:
105dB以上
100dB以上(EIAJ)
全高調波歪率
SACD:
CD:
0.0012%以下
0.0017%以下(EIAJ)
ワウフラッター 測定限界以下
デジタル出力 光:-18dBm
同軸:0.5Vp-p
※CD再生時のみ
アナログ出力 アンバランス:2Vrms
バランス:4Vrms
※固定、ON/OFFスイッチ付き
電源 AC100V、50Hz/60Hz
消費電力 30W
外形寸法 幅430x高さ149x奥行436mm
重量 約27kg
付属 ワイヤレスリモコン RM-DS1
スタビライザー
電源ケーブル
オーディオ接続ケーブル
電源プラグ変換アダプター
可変デジタルフィルターのポジションとその概要
ポジション 遮断特性 音の印象
シャープロールオフ
スタンダード 情報量が最も多く、広いレンジ感と空間表現が特徴。
クラシック等の再生に好適。
スローロールオフ
No1
クリアー
滑らかなタッチでしかもエネルギー感があり、音像定位が明瞭。
ジャズバンド、ジャズボーカルなどに好適
No2
プレーン
鮮度が高くエネルギッシュで、特にボーカルの艶めかしさの表現力が豊か。
ボーカル主体の音楽に好適。
No3
ファイン
バランスのとれた自然な音で、しかもスケール感があり、残響表現が豊か。
音楽のジャンルを問わずリラックスした気分で楽しむ時に好適。
No4
シルキー
スケール感と繊細さを兼ね備える。
オペラなどのボーカルとBGMの渾然一体とした音楽の再生に好適。