SONY DTC-1000ES
¥200,000(1987年発売)
解説
ソニーのDATデッキ1号機。
DATの基本フォーマットには、標準モードでサンプリング周波数48kHz、16ビット直線量子化が採用されています。これにより、2Hz~22kHz
±0.5dBの周波数特性と90dB以上のダイナミックレンジが確保されています。
その他に、標準モードのほかにサンプリング周波数44.1kHzの再生専用モード、32kHzの録音/再生モードを搭載しています。また、コピー禁止コードの入った録音物は、DTC-1000ESではデジタル録音ができません。
DATは、8ミリビデオなどと同じく、信号をテープの長手方向に対し斜めに記録していくヘリカルスキャン方式を採用しています。
テープが走行すると同時にヘッドドラムが回転し、テープスピードは8.15mm/sと低速ながら相対速度は約3m/sを確保し、テープ1巻に2.2Gbyteの情報量を収めつつ、コンパクト化を可能にしています。
エラー訂正方式には、テープ/ヘッド系でおこり得るランダムエラーやバーストエラーを徹底的に分析し、強力な訂正・補正が可能なダブルエンコーデッド・リードソロモン方式を採用しています。
これは、CDに採用されたものよりさらに能力を向上させたリードソロモン符号を各トラックに配すると同時に、L/Rの信号を交互にしつつさらに偶数/奇数を入れ替えて2トラックインターリーブをかけて記録し、テープの長手方向のバーストエラーや2つのヘッドの一方が再生不能になった場合でも訂正/補正が出来るようにしています。
さらに、訂正アルゴリズムはソニー独自のスーパーストラテジーに加え、エラー情報を先取りして最適訂正を行うフィードフォワードスーパーストラテジー方式を採用し、高速サーチの繰り返しに耐える高い信頼性と、振動にも強い耐振性を実現しています。
テープトランスポートメカニズムには、ソニーの8ミリビデオの開発で培ったメカニズム設計技術を応用した新開発のトランスポートメカニズムを採用しています。
まず、テープ走行をつかさどる駆動モーターは、キャプスタン用とテイクアップ・リール用、サプライ・リール用、そして、ヘッドドラムの回転用に独立して配置し、全てに経年変化をおこすブラシが無いBSLモーターを採用しています。さらに、4つのモーターが各部をダイレクトにドライブする4D.D.方式を採用しており、ベルトなど経年変化のもととなる介在物を排除し、優れた回転特性を得ています。
また、サーボ系は通常スピードの走行安定性の確保とともに、高速サーチ時の相対速度を一定に保つコントロールを行っています。
さらに、回路系のメカブロック全体を支えるベースユニットの素材には、鋼の剛性の高さと、アルミのQ(共振モード)の低さを合わせ持つ非磁性の素材である高硬質アルミ合金が採用されており、長期にわたる平面度の維持と、共振の低減を図っています。
また、メカニズム全体を効果的にダンプすることにより、さらなる無共振化を図っています。
メカニズム部は、構成部品を4つのブロックに整理し、組立による精度のバラツキを減少させています。
ヘッドには、8ミリビデオのPCM録音などで実績がある3S(Sendust Slope Spattering)ヘッドを採用しています。
これは、センダスト・コアを斜めに配する特殊構造により、コア境界に発生する擬似ギャップを無くしたソニー独自のヘッドで、擬似ギャップからの再生波による干渉を一掃しています。
デジタル処理回路には、膨大なデジタル処理を2個のICチップで行う、集積度の高いLSIを新開発して採用しています。
採用されたLSIの1個の規模は、トランジスタ20万個以上に相当しており、デジタル部のコンパクト化に寄与しています。また、これらのLSIの入った基板を全て一つのクロックで処理し、クロックが異なることによって起こる、干渉による音への悪影響を排除しています。
A/Dコンバーターには、CDマスタリング用のPCMプロセッサーに使用されているものを採用しており、高い信頼性を実現しています。
再生系には、16ビット4倍オーバーサンプリングデジタルフィルターを採用しています。これは、デジタルデータの段階でサンプリング周波数を48kHzから4倍の192kHzに拡大し、D/A変換後に発生する高域の不要雑音を音楽信号から遠ざけ、ローパスフィルターの負担を軽減しています。これにより、ローパスフィルターは3次というシンプルな構成を可能にし、音質への悪影響を最小限に抑えています。さらに、フィルターの減衰特性が極めて緩やかなため、高域の群遅延特性の劣化を大幅に減少させています。
また、A/Dコンバーター、D/Aコンバーターには、それぞれL/R独立型を採用しており、L/Rチャンネル間の位相ズレを排除しています。
デジタル部、オーディオ部、システムコントロール部を独立させたセパレート構造を採用しています。
各ブロックの境界はシールドシャーシで遮断されており、さらにデジタル信号処理部をシールオケースでカバーすることにより、デジタル信号処理部及びシステムコントロール部からの不要輻射がオーディオ部に飛び込むのを防止しています。
オーディオ部はL/Rチャンネル独立のツインモノラル構成となっており、信号の引き回しを可能な限り避けたシンプル&ストレート伝送を徹底させています。また、オーディオ部を囲むシャーシには銅メッキシャーシを採用しており、音楽信号に及ぼす時期的な悪影響を防ぐとともに、ボディ全体の剛性を高め耐振性を向上させています。
電源部は、デジタル部とサーボ系の電源と、オーディオ部の電源をトランスの段階から完全独立させており、デジタル部及びサーボ系の急激な電流変動にともなうオーディオ部への電源干渉を断っています。
また、アースポイントを共通化するため、2つのトランスを1つのケースに充填材を介して密封し、音質に影響が大きいトランスの振動を大幅に抑えています。
オーディオ回路の構成パーツを全て厳選使用しており、信号劣化が少ない無酸素銅によるワイヤリングをはじめ、アースインピーダンスの低い純銅製バスアース、電源回路のセラファインコンデンサーなど、高品質パーツを投入しています。
アナログ入出力端子に加え、デジタル入出力端子を搭載しています。
サブコードによる多彩なテーププレイが可能となっており、スタートIDによるAMS(オートマチック・ミュージック・センサー)機能をはじめ、スタートIDの自動書き込みや、スタートIDのマニュアル書き込み/リハーサル機能、ミュージックスキャン、プログラムナンバーによるダイレクト選曲、リナンバー機能、スキップ機能、イレース機能などを搭載しています。
3モードのリニアカウンターやワイドレンジのピークレベルメーター、プログラムNo、AMS、メモリー表示などの基本的な動作表示をはじめ、スタートID/スキップIDの表示、サンプリング周波数の表示、結露警告表示といった動作状態の情報を集中表示するマルチディスプレイを搭載しています。
テープの走行時間を示すカウンター表示、テープエンドまでの残量時間を示すリメイニング表示、演奏中の曲の経過時間を示すプログラムタイム表示の3モード切替がかのうな3モードリニアカウンターを搭載しています。
L/R各28セグメントで-50dB~0dBのワイドレンジ・ピークレベルメーターを搭載しています。
また、業務用デジタルオーディオ機器と同じ、フルビット0dB表示を採用しています。
カセット装着時にトレイが引出され、クローズ後テープローディングされるリニアスケイティング方式を採用しています。
また、カセットを誤った方向でセットした場合や、開閉時に障害物が合った場合でもトラブルの心配の無いフェールセーフ設計を行っています。
約2倍の速度で録音内容が聴けるキュー/レビュー機能や、1度も録音したことが無い部分を自動的に探し出すブランクサーチ機能、巻戻し後にすぐ再生に移るオートプレイ機能、カウンターゼロセットの位置まで巻き戻し自動的に再生するメモリープレイ機能などを搭載しています。
フルビット録音による音質を重視し、あえてプリエンファシス(録音)をOFFとし、ディエンファシス(再生)は自動ON/OFF機能を搭載しています。
サイドウッド、大型インシュレーターを採用しています。
極性表示付き無酸素銅電源コードを採用しています。
別売りタイマーを組み合わせる事で留守録音や目覚まし再生が可能です。
録音/再生/早送り/巻戻しなどの基本操作のほか、サブコードの書き込みや消去、カウンターモードの切替えなどの操作ができるワイヤレスリモコンが付属しています。
機種の定格
型式 | DATデッキ |
チャンネル数 | 2チャンネルステレオ |
サンプリング周波数 | 48kHz(録音/再生) 44.1kHz(再生のみ) 32kHz(Digital inのみ録音/再生) |
量子化ビット数 | 16ビット直線 |
エラー訂正 | ダブルエンコーデッドリードソロモンコード |
エンファシス | プリエンファシス(録音時、アナログ入力に対して)offに固定 ディエンファシス(再生時)on/off自動切換 |
変調方式 | 8-10変換 |
周波数特性 | 2Hz~22kHz ±0.5dB |
ダイナミックレンジ | 90dB以上(録音時、エンファシスoff) |
SN比 | 92dB以上(録音時、エンファシスoff) |
全高調波歪率 | 0.005%以下(1kHz)(録音時、エンファシスOFF) |
ワウ・フラッター | 測定限界(±0.001% W.Peak)以下 |
入力端子 | ライン入力 基準レベル:245mV(-10dBs) 最小レベル:77.5mV(-20dBs) インピーダンス:50kΩ デジタル入力:0.5Vp-p/75Ω |
出力端子 | ライン出力 基準レベル:245mV(-10dBs) 最大レベル:2.0mV(8.2dBs) インピーダンス:470Ω 負荷インピーダンス:10kΩ以上 ヘッドホン 基準レベル:可変 最大レベル:28mW 負荷インピーダンス:32Ω インピーダンス:150Ω デジタル出力:0.5Vp-p/75Ω |
電源 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 32W |
外形寸法 | 幅470x高さ100x奥行420mm |
重量 | 約12kg |
付属 | ワイヤレスリモコン RM-R1 |