SONY CDP-555ESD
¥150,000(1986年発売)
解説
プレイヤー単体で高いレベルでのCD再生を目指すと共にデジタルセパレートにも対応したCDプレイヤー。
デジタルフィルターには高集積度4倍オーバーサンプリング方式を採用しています。
このデジタルフィルターではD/A変換前にサンプリング周波数44.1kHzのデジタル信号を4倍の176.4kHzにオーバーサンプリングし、オーディオ帯域に近接した不要成分の周波数下限を24.1kHzから156.4kHzへと追放しています。この結果D/A変換後のローパスフィルターの減衰特性を極めてなだらかにでき、群遅延特性が大幅に改善され、波形再現性が向上しています。また、段数も素子数も少ないフィルターが実現でき、部品による音質劣化も抑えられます。
D/A変換部には新開発D/Aコンバーターを左右チャンネル独立に搭載しています。
このD/Aコンバーターはデジタルフィルターの信号処理速度に対応した高速タイプとなっており、微小信号レベルでのゼロクロス歪やグリッチの発生が無視できます。この結果L/Rのスイッチング回路だけでなく、従来不可欠であったサンプル&ホールド回路も不要となり、D/A変換以降のオーディオ回路構成を大幅にシンプル化しています。
オーディオ回路は左右チャンネル分離の全段ツインモノ構成を採用しており、チャンネル間の干渉を排除しています。
さらに、極めて低次でかつ音楽信号が抵抗を通過するだけの3次GIC型ローパスフィルターを採用するなど、シンプル&ストレート伝送を徹底することで、明確な音像定位や歪を感じさせない音質を実現しています。
新開発のCD専用第3世代LSIによるユニリニア・コンバーターシステムを採用しています。
このシステムは全てのデジタル信号処理を一つのマスタークロックに完全同期させて行うシステムで、音質劣化を招くクロック干渉によるビート発生が原理的にありません。また、このシステムを構成するLSI群は集積度を高めることで周辺部品点数を半減しており、デジタル系の安定性や信頼性の向上と消費電力の低減に貢献しています。
デジタル処理によるソフトミューティング機能を搭載しています。
これは、演奏ストップやポーズ操作時にクリックノイズの発生を防ぐ機構で、信号処理をデジタル処理で行うことで音質劣化を抑えています。
電源トランスはCDP-553ESDと同等の大容量トランスを2個搭載しており、デジタル系とアナログ系でそれぞれ専用化しています。これにより、サーボ電流の増加による電圧低下や、デジタル信号に含まれる高調波成分の影響など、音質劣化の要因となるアナログ系への様々な干渉を排除しています。
しかも、アナログ系のトランスは必要量の10倍近く容量を確保し、整流・平滑回路も一段と強化しています。整流容量の大きい高速ダイオードの使用をはじめ、新開発した高音質の電解コンデンサーはトータル44,000μFもの大容量となっています。
また、トランスの取付位置や方向も十分に配慮したほか、ESフィルターを設けることでACラインからのノイズ混入を防止しています。
シャーシにはG(ジブラルタル)シャーシを採用しています。
Gシャーシは大理石の主成分である炭酸カルシウムを不飽和ポリエステルとグラスファイバーで強化したもので、十分な質量と剛性を持ち、かつ内部損失が大きく優れた振動減衰特性を持っています。しかも非磁性・非金属であるため、電磁歪の発生を極力抑える事も達成しています。
また、縦横にリブを走らせて剛性を高めるなど音響的に十分吟味した形状としたほか、脚部は無反発ゴムと金属を組合せ、かつGシャーシ底部との一体構造としています。これにより外部からの振動や電源部などで発生する内部振動を断ち、不要振動による音の汚れを排除しています。
CDP-555ESDでは、Gシャーシをベースに非磁性アルミ引き出し材の外装シャーシと磁気ひずみを低減する銅メッキ処理の内部シャーシによる二重構造を採用しており、剛性や強度が向上しています。
この高剛性シャーシにメカブロック部やデジタル、アナログ部、コントロール系を完全分離して配置し、各部の干渉や共振を抑えています。
光学メカニズムを支えるベースユニットには、内部損失が極めて大きいセラミックパウダー入りの特殊樹脂とメタルの複合成型品を採用しています。これにより共振鋭度大幅に下げ、同時に剛性も高めています。また、メカブロック全体もフローティング構造として外部振動の影響を遮断しています。
さらに、チャッキングアームも樹脂と金属の二重構造としたほか、ディスク回転時の面ブレを防ぐ空力学的な対策を施すなど、不要振動によるサーボ電流の乱れを抑え、音質向上を図っています。
聴感で吟味した高音質パーツを採用しています。
プリント基板はガラスエポキシ製を使用しています。しかも不要な静電容量の発生を防ぐレジスト(保護皮膜)処理を施したES基板としています。
また、出力アンプには高音質アンプを搭載しており、オーディオ信号系にはOFC線材を使用したほか、無誘導電極構造の複合コンデンサーや金メッキ・キャップの炭素皮膜抵抗エレメントを硬質樹脂でモールドした抵抗など、厳選したものを採用しています。
さらにリニリティに優れた大型ラインアウト・ボリュームを搭載し、リモコン時にはモーター駆動として音質劣化を防ぐなど、万全を期しています。
サーボ回路には新開発の予測制御方式であるSサーボを採用しています。
Sサーボではディスクの汚れなどによる信号のドロップアウトを予測し、サーボ電流の乱れを最小限に防いでいます。新開発のRFICがディスク上の汚れや埃の位置・大きさを検出することでディスクの回転周期から次に現れるタイミングを瞬時に予測し、トラッキングやフォーカスファーボ回路のサーボ量をマイコンで制御する構造となっています。
予測時間精度は1/8,000秒の高精度となっており、しかもCLV(線速度一定)に対応しており、内・外周のどの位置でもこの精度を維持しています。また、従来の方式とは異なり、ドロップアウトが生じる直前でサーボゲインを切替えるためトレースの安定性が大幅に向上しています。しかもサーボ電流も必要最小限で済むためアナログ回路への悪影響を減らしています。
デジタル出力にはラッチド・デジタル出力を採用しています。
この端子は出力直前に時間軸補正用のラッチが設けられており、より厳密にジッター成分を除去しています。また、アイソレーションパルストランスの使用に加え、デジタル出力時はアナログ出力を、アナログ出力時はデジタル出力をカットすることで相互干渉を防止しています。
この出力端子はサブコード情報も含めて出力する方式となっています。
メカニズム部にはハイスピード・リニアモータートラッキングメカニズムを採用しています。
このメカニズムでは光学ブロックにリニアモーターを一体化しており、ディスク1曲目から最終曲の頭出しまでの選曲時間が1秒以下を実現しています。また、ギアなどの伝達機構が無く、信頼性や耐久性も大きく向上しています。
ネクスト表示付きの多機能集中ディスプレイを搭載しています。
ディスプレイには収録曲のトラックナンバーを最大20曲までダイレクト表示するミュージックカレンダーを搭載しています。
20キーによるワンタッチダイレクト選曲が可能です。
メモリーバックアップつき20曲RMS機能を搭載しており、20キーによるワンタッチ選曲によって最大20曲まで好きな順序で予約してプログラム演奏が行えます。この機能では演奏中でもプログラムの追加・変更ができます。
また、メモリーバックアップ機能を搭載しているため、別売りタイマーを使用してプログラム曲での目覚まし再生が可能です。
1曲/ALL/A-B/プログラム/シャッフルの5モードリピートが可能です。
A-Bの部分間リピートを除く4モードではリピート回数の指定も最高9回まで出来ます。
シャッフルプレイ機能を搭載しています。
オートポーズ機能を搭載しており、1曲の演奏終了ごとにポーズ状態で待機させることができます。
曲間を自動的に3秒に設定するオーオトプセース機能を搭載しています。
なお、プログラム再生時は常にオートスペース機能が作動します。
AMS機能やインデックスサーチ、ミュージックサーチなどの機能を搭載しています。
ボリューム連動ヘッドホン端子や可変/固定出力端子を搭載しています。
ワイヤレスリモコンが付属しています。
機種の定格
型式 | CDプレイヤー |
読取り方式 | 非接触光学読取り(半導体レーザー使用) |
レーザー | GaAlAsダブルヘテロダイオード |
回転数 | 500~200rpm(CLV) |
エラー訂正方式 | ソニースーパーストラテジー (クロスインターリーブ・リードソロモンコード) |
チャンネル数 | 2チャンネル |
複合化 | 16ビット直線 |
周波数特性 | 2Hz~20kHz ±0.3dB |
全高調波歪率 | 0.0025%以下(EIAJ) |
SN比 | 106dB以上(EIAJ) |
ダイナミックレンジ | 97dB以上(EIAJ) |
ワウ・フラッター | 測定限界(±0.001%W.peak)以下(EIAJ) |
出力レベル | 2Vrms(MSB、Fixed) 0~2V(50kΩ、Variable) |
ヘッドホン出力レベル | 28mW(32Ω) |
デジタル出力レベル | 0.5Vp-p |
メモリー | 最小限3日保持(フル充電後) |
消費電力 | 16W |
外形寸法 | 幅430x高さ123x奥行395mm |
重量 | 13.5kg |
付属 | ワイヤレスリモコン RM-D502A |