オーディオの足跡

PR:SONY/ESPRITの製品をヤフオク!で検索
PR:ヤフオク!で中古オーディオを検索

TAN-8550の画像
 解説 

入力と出力信号の波形をそのまま相似形とする波形伝送というテーマを実現するため、新開発のV-FETを採用した最高級ステレオパワーアンプ。

V-FETは、従来のFETがヨコ型構造であるのに対し、タテ型構造をしたパワーFETで、独自の製法と選択酸化法によりタテ型構造を実現しています。
このV-FETは、三極真空管に似た静特性を持ちながら、三極真空管よりも一桁以上も大きな電流を扱うことができ、しかも出力抵抗も小さくなっています。また、NチャンネルとPチャンネルの両極性の素子が得られるため、真空管のような位相反転回路が必要なく、ピュアコンプリメンタリーの出力段が得られます。
さらに、V-FETはリニアな伝送特性を示しており、V-FETに加わる大振幅の入力電圧に対して出力電流が比例し、出力波形は高次の高調波歪が非常に少ない、リニアリティの良い増幅が可能です。
また、V-FETはトランジスタのようなキャリア蓄積効果が無いためスイッチング速度が格段に速く、ストレージタイムも殆ど認められないため、スイッチング歪を大幅に減少させています。
しかも、VーFETのASO(安全動作領域)はバイポーラ・トランジスタに比べて広く、しかもチャンネル領域が並列に分散されているため、電流集中が置きにくくなっています。また、温度係数が負であるため、発熱に対し自己制御作用を持っています。この結果、熱的破壊(2次破壊)に強い性質を持っています。さらに、温度による動作点の変動が極小なため、温度補償の必要がありません。

Bクラス段には新開発のNチャンネル、PチャンネルV-FETを用いたトリプルプッシュプル・ピュアコンプリメンタリー回路を採用しています。この回路にはチャンネルあたり6個のV-FETを使用することで大出力を実現しています。さらに、V-FETの持つ特性によって高域での歪率特性が改善されるとともに低インピーダンス負荷に対しても良好な動作領域を得ています。
また、V-FETの高入力インピーダンス、低出力インピーダンス特性によって優れたAクラス段の特性をスピーカーに伝送しています。

Aクラス段は3段差動アンプ構成となっています。
初段は特性の揃っている高入力インピーダンスのFETを2本1パッケージとした新開発デュアルFETを採用しており、温度ドリフトが無いため不平衡電圧が起こりません。また、2段目、3段目は裸特性の良いPNP、NPNを用いた差動アンプ構成となっています。
Aクラス段は全て定電圧回路を内蔵しており、電源電圧の変動に対しても常に安定を保つことで電源からのノイズ混入を防いでいます。

電源部には新開発の2電源用電解コンデンサを採用しています。
このコンデンサは1パック内に2つのコンデンサ素子を封入したもので、従来のものに比べて抵抗値が一桁小さくなっています。また、相互インダクタンスや自己インダクタンスもそれぞれ減少しています。
さらに、同心円上に巻き取られた2つの素子を最短距離でアースターミナルに接続することで、アースインピーダンスを軽減しています。各々の素子は無誘導構造なため、高周波インピーダンスやリーケージフラックスも大幅に改善されています。また、接続もワンタッチ・ウェルド方式を採用しており、シンプル化しています。

ヒートシンクには新開発のチムニー型ヒートシンクを採用しています。
チムニー型では空気の対流を利用しており、暖められた空気がダクトを上昇し、冷たい空気がヒートシンク下部から吸い込まれる構造となっています。これにより、大出力時でもV-FETの安定した動作を可能にしています。

パワーメーターにはオプティカル・ピークプログラムメーターを採用しています。
このパワーメーターはライトビーム式(光指示方式)を採用しており、パルシブな信号に対して追従性が良くピーク指示ができ、しかもメーターのダイナミックレンジが極めて広くなっています。
このメーターの目盛はW表示で8Ω負荷のRMS値0から200までの表示ができます。また、20W以下の出力で聴く場合でもメーターを見易くするため、前面にx1/10のメーター感度切換を装備しており、実際の出力の10倍の大きさで見ることが出来ます。

3系統のスピーカー端子を搭載しています。
A端子は通常の出力端子で、B端子はレベル調節が可能となっています。また、ダイレクト端子はスピーカースイッチによるダンピングファクターの悪化を気にする場合に有効です。このダイレクト端子はBポジションに合わせるとレベル調整が可能です。

レコードのソリなどによる超低域ノイズ対策としてサブソニックフィルターを装備しています。
この回路はノーマル/テスト切換えスイッチでON/OFFができ、テストポジションではそのまま出力し、ノーマルポジションではオーディオ帯域外をカットします。

保護回路にはフルプロテクションサーキットを採用しています。
スピーカー保護回路として純電子式DC検出回路を採用しており、DC電圧を制限することでスピーカーの破損を防いでいます。また、万一のショートなどからV=FETを保護するため、PCリミッタ併用の負荷インピーダンス検出型保護回路を採用しています。
さらに、異常発熱によるトランジスタの破損を防ぐため、熱検出型保護回路を採用しています。

入力レベルコントロールを搭載しています。

機種の定格
型式 ステレオパワーアンプ
回路方式 フェイズ・リニアDCアンプ構成
V-FETトリプルプッシュプル・ピュアコンプリメンタリーシンメトリー回路
<アンプ部>
実効出力(両ch動作、高調波歪0.1%)
1kHz: 110W+110W(4Ω)
110W+110W(8Ω)
20Hz~20kHz: 100W+100W(8Ω)
出力帯域幅 5Hz~50kHz(IHF規格、8Ω)
高調波歪率 0.1%以下(定格出力時)
0.05%以下(1W出力時)
混変調歪率(60Hz:7kHz=4:1) 0.1%以下(定格出力時)
0.05%以下(1W出力時)
周波数特性(8Ω負荷、1W出力時) Test:DC~100kHz +0 -1dB
Normal:20Hz~100kHz +0 -3dB
ダンピングファクター(1kHz) 200以上(8Ω、スピーカーDirect端子)
入力感度/インピーダンス 1V(定格出力時)/50kΩ
2系統
出力端子 Speaker A、B、Direct
残留雑音 0.01μW以下
S/N比 100dB以上クローズド・サーキット)
<オプティカル・ピークプログラムメーター部>
周波数特性 30Hz~30kHz +0 -3dB
メータ指示範囲 0W~200W
<総合>
使用半導体 トランジスタ:56個
Dual FET:2個
V-FET:12個
ダイオード:54個
SCR:2個
電源コンセント 電源スイッチ非連動:1系統、200W
電源 AC100V、50Hz/60Hz
消費電力 260W
外形寸法 幅440x高さ170x奥行410mm
重量 約19kg