SONY TA-F333ESXII
¥79,800(1987年発売)
解説
TA-F333ESXをベースにさらに検討を加え、完成度を高めたプリメインアンプ。
無振動・無共振設計の理想を追求し、素材の選定や形状及び構造を徹底追及したアコースティカリーチューンドG(ジブラルタル)シャーシを採用しています。
Gシャーシには、大理石の主成分である炭酸カルシウムを不飽和ポリエステルに加えグラスファイバーで強化して使用しています。この素材は、金属に比べて内部損失が大きく優れた振動減衰特性を持ち、かつ強度が高く、高精度な加工も可能という特長を持っています。そして、この素材を音響的に十分に吟味した形状に一体整形することで、優れた剛性を獲得しています。
Gシャーシの形状は、シャーシ各部の厚さを十分に大きくとり、縦横にリブを設けて剛性を高めています。また、リブの厚み、リブとリブの間隔をランダムに変えることで特定の共振モードを持たないように配慮がされています。
これにより、外部振動や電源部などで発生する振動を抑え、オーディオ回路の共振による信号変調を低減しています。また、この素材は非磁性・非金属であるため、トランスやコンデンサーなどの磁界に誘発される電磁歪や渦電流の発生が無く、電気的な面からも音質劣化を減少させています。さらに、熱にも強いため、温度差による伸縮などの経時間変化も無視できています。
Gシャーシをベースに、各パーツの実装時に一段と剛体化する構造としています。
オーディオ回路のプリント基板やパワートランスなどの主要パーツは、Gシャーシに直付けして強固に固定しています。また、ヒートシンクは大型アルミ押出材を使用し、十分な板厚のプレートでGシャーシに強固に固定するとともに、放熱板の固有の鳴きを抑える防振対策を徹底しています。さらに、パワートランジスタの取付け部は10mmもの厚さで、放熱特性と強度に十分な余裕を持たせています。
さらに、フロントシャーシ、端子パネル、ケースをGシャーシの上に、要所要所に連結アングルを入れ相互に補強し合うように取り付けることで、より強固なシャーシ構造を実現しており、各部の剛体化の相乗効果で、不要振動による音の汚れを抑えています。
電源部にはS.T.D.(Spontaneous Twin Drive)電源を採用してます。
S.T.D.電源では、パワーアンプを構成するAクラス段とパワー段の整流回路を独立しており、Aクラス段用にA電源、パワー段用にB電源を搭載しています。これにより、Aクラス段は、大出力時にもパワー段の干渉を受けず、安定した動作を実現しています。
TA-F333ESXIIでは、整流回路の電解コンデンサーは、Aクラス段合計13,400μF、パワー段合計25,000μFを搭載しています。さらに、電源トランスは350VAクラスの大容量大型トランスを搭載しています。
整流回路を構成する電解コンデンサーは、箔の鳴きを抑えるなど防振対策を徹底したもので、音質的に十分に吟味されたものが使用されています。さらにESXIIシリーズでは、電解コンデンサーを一体型のバイブレーションプルーフプラットホームで締め付けることで振動を追放しています。
また、パワートランスを亜鉛ダイキャストのフレームで頑強に締め付けることで、トランスの振動を抑えています。
ACラインからのノイズ混入を防ぐESフィルターを搭載しています。
回路構成は、トーン回路をパッシブ素子のみで構成しており、アンプ回路がフォノ・イコライザー部とパワーアンプ部の2ヶ所だけのシンプルな構成となっています。
パワーアンプ部には、出力段のスイッチング歪やクロスオーバー歪を広帯域/広ダイナミックレンジで低減させるS.L.L.(スーパーレガートリニア)方式を採用しています。これにより、実効出力時に低歪率化が図れただけでなく、実使用時の再生レベルでの歪率が改善されています。
MCカートリッジに対応したフォノイコライザーアンプには、高域応答特性に優れ、TIM歪を追放するローノイズHi-gmFETを採用しています。また、TA-F333ESXIIには、MM/MC40Ω/MC3Ωの3ポジションのカートリッジロードセレクターを搭載しています。
トーン回路をパスできるTONEスイッチを搭載しています。また、ターンオーバー周波数を切替えできます。
ソースダイレクトスイッチを搭載しています。このスイッチを押すと、トーンコントロール、サブソニックフィルター、バランス、モードスイッチなどの回路をジャンプし、入力された信号は、アッテネーターとパワーアンプだけの最短経路で出力されます。
InputセレクターやRec outセレクターにはリモートタイプのロータリースイッチを採用するなど、線材の引き回しを大幅に削減して、シンプル&ストレート伝送を徹底しています。
グラフィックイコライザーなどの接続に便利なアダプター端子を搭載しています。
機種の定格
型式 | プリメインアンプ |
実効出力(20Hz~20kHz) | 140W+140W(4Ω) 120W+120W(6Ω) 105W+105W(8Ω) |
出力帯域幅 | 10Hz~100kHz(50W出力、高調波歪率0.04%、8Ω負荷) |
高調波歪率 | 0.002%以下(10W出力時、8Ω負荷) |
混変調歪率 | 0.004%以下(定格出力時、8Ω負荷、60Hz:7kHz=4:1) |
スルーレイト | 125V/μsec 250V/μsec(インサイド) |
ダンピングファクター | 100(1kHz、8Ω負荷) |
周波数特性 | Phono MM:RIAAカーブ±0.2dB CD、Tuner、Aux、Tape:2Hz~200kHz +0 -3dB |
SN比 | Phono MM:87dB Phono MC:68dB CD、Tuner、Aux、Tape:105dB |
入力感度/インピーダンス | Phono MM:2.5mV/50kΩ Phono MC(40Ω):170μV/1kΩ Phono MC(3Ω):170μV/100Ω CD、Tuner、Aux、Tape:150mV/50kΩ |
出力レベル/インピーダンス | Rec out:150mV/1kΩ Speaker:適合インピーダンス4Ω~16Ω Headphone:25mW/8Ω |
トーンコントロール | Bass:+4 -3.5dB(100Hz、ターンオーバー周波数200Hz) +6 -5dB(100Hz、ターンオーバー周波数400Hz) Treble:+7 -8dB(10kHz、ターンオーバー周波数3kHz) +4 -5dB(10kHz、ターンオーバー周波数5kHz) |
サブソニックフィルター | 15Hz以下、6dB/oct |
電源 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 245W |
外形寸法 | 幅470x高さ161x奥行436mm サイドウッド取外し時:幅430mm |
重量 | 19.6kg |