
SONY STR-VA555ES
オープン価格(¥135,000前後、2001年12月10日発売)
解説
新開発の32ビットDSPと6chパワーアンプを内蔵したESシリーズのAVレシーバー。
サラウンドバックスピーカーを設置したストレート方式で6.1chサラウンドに対応できるようにパワーアンプ6ch分搭載しています。STR-VA555ESではストレート方式に加えてバーチャルマトリックス6.1再生が可能です。
さらに、サラウンドバックの音をステレオ化した7.1chサラウンドにも対応できるよう入力端子及びD/Aコンバーターやプリアンプは8回路分搭載しています。
搭載した6chのパワーアンプ部全てに同一のパワートランジスタを採用しており、SACDなどの広帯域な信号に対応できるよう100kHzまでのレスポンスを確保しています。
また、このトランジスタには温度補償回路を内蔵しており、電源ON直後でもしばらく通電して温まった状態でも安定して動作が可能です。
ドルビーデジタルやDTSに加え、DTS-ES(含むNEO:6)、DTS-ESディスクリート、Pro LogicII、MPEG-2 AACなどのフォーマットにも対応しています。
新開発の32ビットDSPを2種類搭載しています。
CXD9689では6.1chデコード機能を持っています。CXD9616では音場処理を専用に行っています。CXD9689ではビット長を従来の24ビットから32ビットへと拡大しており、再現される波形の誤差を大幅に改善しています。これによってよりリアルな表現を可能にしています。
音場処理ではDSPのビット長(バス幅)に加えて内部での演算処理と演算速度が重要となります。演算精度を知る一つの目安としてアキュムレーター精度があります。アキュムレーターとはDSP内部で演算結果を収納しておくメモリにあたる部分です。DSPではデータに係数をかけてその結果を何度も加算する処理(積和演算)を行いますが、その時のメモリ精度が高いと誤差の蓄積が少なくなり、音質が改善します。そのため、アキュムレーターのビット長を従来の52ビットから64ビットに拡大しています。また、演算速度も高速になればDSPのバス幅が拡大したことと同じ意味を持ち処理能力が向上します。この演算速度もアキュムレーター精度に依存しています。
STR-VA555ESではCXD9689を1個とCXD9616を2個搭載した構成とする事で、従来のDSPでおよそ4個分の能力を身につけています。
新開発の音量調整機能であるOPプロセッシング(Optimum Preamplification processing)を搭載しており、AVソフトやオーディオソースを実際に再生している時のS/N比を大幅に改善しています。
従来のアンプでは音量調整は入力とプリアンプの間にボリュームを挿入して行っています。この方式ではボリュームを通過してからの利得(増幅率)が大きくなるため、ボリュームそのものや、小さな信号を扱うプリアンプで付加されるノイズを増幅しやすく、結果的にS/Nが悪くなりやすい傾向がありました。
この問題を回避するため、プリアンプの増幅率を抑えて設定し、ボリュームをあまり絞らないで楽しむ方法があります。しかしこの方式ではボリュームを大きくしても必要なパワーが得られなくなってしまうという問題が生じます。特にAVアンプではフロントセンターとリアの音量をフロント左右より大きく調整した方が良い場合もあり、より複雑となります。
OPプロセッシングでは、従来固定して設計されていたプリアンプの利得を可変型に変更しています。これによりフルボリューム状態では従来までのノイズレベルと同じですが、フルボリューム以外の全てのポジションでノイズが小さくなり、特に実使用が想定される音量では10dBほどのノイズ改善を実現しています。
2系統のアナログマルチチャンネル入力端子を搭載しています。
第1系統は7.1ch対応となっており、第2系統は5.1ch対応となっています。これによりマルチチャンネル対応の複数のソースを同時に接続できます。
アナログピュアネスコントロール機能を搭載しています。
アナログ入力の音楽ソースを楽しむ際に、フロントパネルに設けられたアナログダイレクトボタンを押すと、不要回路がバイパスされると共に、その電源部も停止します。また、選んだ入力が映像を伴わないものの場合はアナログダイレクトボタンに関係無くビデオ回路の電源は停止する仕様となっています。
これによりデジタル回路による有害なノイズ発生を抑え、最大限の高音質を引き出しています。
D/A変換部には全チャンネルに192kHzのD/Aコンバーターを搭載しています。
新開発のシャッター付き光コネクターを採用しています。
従来の光コネクターは同軸コネクターと比較して電気的な絶縁が確実に取れるという特長を持っていますが、ジッターが付加しやすいという問題点がありました。この新開発のコネクターではシャッターを設けて外部からの埃が侵入しにくいという外観上の特長のほか、内蔵された半導体の能力を高めると共に内部にバネを設けて光プラグをしっかりと固定する構造になっています。これによりジッターの発生を低減しており、従来19nsec程度であったジッター値を2.5nsecにまで改善しています。
電源部には大型トランスを搭載しており、6基のパワーアンプ部に十分な電力を供給しています。
さらにトランスの構造には、コアを積層する際にE形とI形の鋼板を交互に重ねたラップ詰め構造を採用しています。この方式では磁路に断層的に切れている部分がなくなるため、磁束の漏れが激減します。また、トランスの巻線の取り出し方式として巻線を直接端子に導くピンタイプを採用しています。
電源部の整流用ダイオードにショットキーバリアダイオードを採用しています。
このダイオードはリンギングと呼ばれる整流ノイズが少ないという特長を持っています。さらに、改良を加えた電源用コンデンサーを採用し、優れた表現力と音質に貢献しています。
ヒートシンクにはsfヒートシンクを採用しています。
sfヒートシンクではフィンの一つ一つに位置の異なるリブが設けられており、音叉共振を防ぐとともに分割振動も抑え、音楽へのカラーレーションを最小限に抑えています。
シャーシ部には高剛性の新シャーシを採用しています。
ソニーのESシリーズではFBシャーシを採用しています。これはフレームとビームを接合して組み上げる事で振動を接合部で吸収しつつ全体としての剛性を高めています。STR-VA555ESではこの構造を守りつつ従来に比べて部材の厚みを平均で20%向上させる事で剛性を高めています。
脚部には偏心インシュレーターを搭載しています。
シャーシと連動するビス穴をセンター位置を避けて設けています。これにより脚底から伝わる振動の位相を変えることで振動を相互に打ち消し、シャーシに伝わりにくくしています。
映像端子はコンポジット信号用の同軸端子に加え、S2規格に対応したS映像端子を搭載しています。
さらにDVD/LDとTV/SATの2入力ではコンポーネントとD4端子を装備しています。両端子は内部では並列接続となっており、コンポーネント入力をD4出力でモニターに接続するなどのクロス使用が可能です。
オンスクリーン機能を搭載しており、現在使用中のサラウンド効果やスピーカー設定などを接続したモニターやテレビ画面に表示できます。
大型液晶を備えたワイヤレスリモコンが付属しています。
このリモコンはレシーバーへ指令を送るだけでなく、レシーバー本体の設定状態などをリモコン上の3行液晶部に表示できる双方向リモコンとなっています。バックライト付きとなっており、照明を落とした室内でも操作ができます。
さらに、マクロ機能を搭載しており、一連の操作を連続的に実効できます。
機種の定格
型式 | AVアンプ |
映像系機器(音声&映像)入力 | 5系統 |
映像系機器(音声&映像)出力 | 3系統 |
映像モニター出力 | 1系統 |
S映像入力 | 5系統 |
S映像出力 | 2系統 |
S映像モニター出力 | 1系統 |
コンポーネント映像入力 | 2系統 |
コンポーネント映像出力 | 1系統 |
D4映像入力 | 2系統 |
D4映像出力 | 1系統 |
デジタル入力 | 光:4系統 同軸:2系統 |
デジタル出力 | 光:1系統 |
オーディオ入力 | Phono MM:1系統 Line:3系統 マルチチャンネル入力:2系統(5.1ch+7.1ch) |
オーディオ出力 | Rec out:2系統 フロントL/R:1系統 センター:1系統 サラウンドL/R:1系統 サラウンドバック:1系統(L/R) サブウーファー:2系統 ヘッドホン:1系統 |
実用最大出力(JEITA、6Ω) | フロント:150W+150W センター:150W サラウンド:150W+150W サラウンドバック:150W |
全高調波歪率 | フロント:0.05%以下(6Ω負荷、100W+100W、20Hz~20kHz) |
周波数特性 | Line:10Hz~100kHz +0.5 -2dB(アナログダイレクト時) |
SN比(Aネットワーク) | Line:100dB(サラウンド、EQ全てoff) |
サラウンドモード | ノーマルサラウンド シネマスタジオEX A/B/C セミシネマスタジオEX A/B/C ナイトシアター モノムービー ステレオムービー ヘッドホンシアター バーチャルマルチリア バーチャルマルチディメンション バーチャルセミマルチディメンション バーチャルエンハンスドサラウンドA/B デジタルコンサートホールA/B オペラハウス ジャズクラブ ディスコクラブ ライブハウス チャーチ アリーナ スタジアム ゲーム |
ドルビープロロジックインプットバランス | オート |
トーンコントロール | フロント、センター、サラウンド、それぞれ独自に調整可能 Bass:±10dB(中心周波数:99Hz~1kHz) Mid:±10dB(中心周波数:198Hz~10kHz、フロント、センターのみ) Treble:±10dB(中心周波数:1.0kHz~10kHz) 増減ステップ:1dB |
チューナー端子 | FM:75Ω不平衡型 AM:外部アンテナ端子 |
ACアウトレット | 電源スイッチ連動:2系統 |
電源 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 370W |
外形寸法 | 幅430x高さ175x奥行465mm |
重量 | 約17.0kg |
付属 | ワイヤレスリモコン RM-LJ305 |