解説　

回路、パーツ、機構の全ての要素を突き詰め、高次元での音のバランスを追求したステレオパワーアンプ。

真のバランスアンプを実現するため、B-2302 VINTAGEにはバランス出力段・NEWダイアモンド差動回路・バランス電源の3つで構成されたα-Xバランス回路を採用しています。

出力段にはスピーカーをホット側とコールド側の両端から対等にドライブするバランス出力段を採用しています。これによりアースに起因する音質劣化が根本的に無く、スピーカーの逆起電力による歪も排除され、強力で正確なスピーカードライブを可能にしています。一般的なBTL接続アンプの場合には、2つのアンプがそれぞれ単独で動作しているため特性差が生じ、出力信号の対称性が崩れてしまう恐れがありますが、α-Xバランス回路にはこうした問題がありません。
また、NFBは独自のバランスフィードバック構成としており、ホット側出力からコールド側入力へ、コールド側出力からホット側入力へクロスで行っています。これにより、ホット側とコールド側の2つのアンプのNFBが互いに効果して特性改善を行い、1つのアンプとして働くバランス出力段となっています。

出力段にはオーディオ用バイポーラ・トランジスタであるNM-LAPT(ノンマグネティック・リニアアンプリケーション・パワートランジスタ)を採用しています。B-2302 VINTAGEでは大電力増幅に適したPc200Wのものを新たにカスタム開発して搭載しています。
このNM-LAPTはマルチエミッター構造を採ることにより電流容量をアップするとともに、ベース幅を狭めてf_T(遮断周波数)を向上し、超高域に至るまでリニアな入出力特性を確保しています。さらに、音質的に問題となるニッケルメッキをチップ面から排除するとともに、リードも非磁性の純銅材とすることで有害な磁気歪の発生を排除しています。ちなみに、一般的なパワートランジスタのf_Tは5～20MHzなのに対し、NM-LAPTでは約3倍の60MHzとなっています。
出力段はこのNM-LAPTを片チャンネル当たり8個使用したバランスドライブ・4パラレルプッシュプル構成となっており、音の分解能や定位感を向上させています。

初段からドライバー段にはNEWダイアモンド差動回路を採用しています。
一般的なバランスアンプではホット側の正相信号に加えてコールド側の逆相信号を入力させるために位相反転用のアンプなどを設ける事が多いですが、NEWダイアモンド差動回路は反転アンプを必要としない回路構成となっています。
ホット側とコールド側の信号はそれぞれ2入力2出力を持つ初段・差動アンプの両端にダイレクトに入力され、そのままプリドライバー段のダイアモンド差動回路へバランス伝送されます。ダイアモンド差動回路は2組4出力のバランスダブルエンド出力を持ち、出力段をバランス・プッシュプルドライブしています。
また、特性面への配慮として初段・差動アンプにはリニアリティに優れたローノイズFETを4個使用し、2個ずつソース接地とゲート接地で組み合わせたカスケード接続とし、高域特性を大幅に改善しています。併せて外部インピーダンスの変動に対する安定度をより一層高めています。
また、プリドライバー段・ダイアモンド差動回路はスルーレート±350V/μsに達する瞬時の大電流・高速応答性を誇り、立ち上がりの速い大入力信号に対して回路が追従できないことで発生するTIM(過渡混変調)歪の発生がありません。

電源回路にはバランス電源を採用しています。
一般的なアースを持つ電源回路では、供給電流に含まれるリップルなどが電源のアースを経由して信号入力側に戻され、それがオーディオ信号との間で混変調を生み、音質に有害なIHM(干渉ハム変調)歪を発生させています。
バランス電源では、センタータップを持たない電源トランスとデュアルブリッジ整流回路を飛躍させることにより、アースからのアイソレーションを実現しています。これにより完全なクローズドループ構成とし、アースに起因するノイズ混入などの諸問題を一掃しています。また、ACラインを経由してのノイズ成分もバランス電源では軽減されるため、音質への影響も最小となっています。

各回路に採用されたパーツは、オーディオ信号の純度を高く維持すること、長期にわたって信頼性を保てること、回路全体のクオリティを高められること、の3点を重視し、厳選したものを採用しています。

回路部品には、金メッキリード/キャップのカーボン抵抗や、OFCリードのブチルゴム巻き銅箔スチロールコンデンサーに加え、出力段のエミッター抵抗にはNM-LAPTの持つ特性を生かすセラミックケース入りラムダII抵抗、銅ケース入りOFC位相補正コイルを使用しています。
また、電解コンデンサーには従来のマニラ麻やクラフト紙によるセパレーターに代わり、電解液の含浸保有能力の高いシルク繊維を混抄した新開発のシルミック電解コンデンサー、及び低インピーダンス・低歪率のAXF電解コンデンサーやSa特殊フィルムコンデンサーを採用しています。
さらに回路基板には、蒸着プロセスによらず圧延銅板張りとし、折り曲げ強度・引き剥し強度を向上するとともに高周波信号の伝送特性を高めたOFC回路基板を採用しており、ジャンパーリードには金メッキOFCリードを採用しています。

電源部のトランスには重量級・巨大トロイダルトランスを採用しています。
このトランスの電源容量は1.4kVAあり、倍の出力を持つパワーアンプに比肩するトップクラスの容量となってます。また、トランスケース内部への高密度充填材の封入をはじめ、コイル巻線には独自のノウハウを盛り込むなど、振動・発熱問題への万全の対策が施されています。
さらに、整流ダイオードには有害なリップルの発生が少なく、高いスイッチングスピードを誇る木メッキペレットの超高速ファーストリカバリーダイオードを採用し、電解コンデンサーには低倍率エッチング箔を採用したグレートピュアフォーカス電解コンデンサーとシルミックスーパーゴールドコンデンサーを採用しています。

キャノンコネクターにはスイス・ノイトリック社製のものを採用し、RCAピンジャックとスピーカーターミナルには切削加工精度2/100ミリ以下を誇るOFC合金24カラット硬化金メッキ処理を施したWBT社製ターミナルを採用しています。
また、スピーカーターミナルはダブルポールターミナルとなっており、バナナプラグによる接続も可能で、極太スピーカーケーブルやバイワイヤリング接続も可能です。

電源ケーブルには、原子配列が極めて均一で電子の流れに乱れがなく、シース構造には制振対策を施したストレスフリー・6N(銅純度99.9999%)ケーブルを特注の金メッキプラグで採用しています。

内部コンストラクションには、ツイン・モノラル・コンストラクションおよびシンメトリック・インプット/アウトプット・レイアウトを採用しています。
この構造では、アンプの最大重量を占める電源をシャーシの中央に置き、LとRの各パワーユニットを電源を挟んで左右対称に配置することで、左右チャンネルの完全な分離を実現するとともに均等な距離での電力供給を可能にしています。また、耐振性に優れた良好なバランスも得ています。
また、リアパネルの端子レイアウトも左右対称のシンメトリックとし、パワーユニットの入出力パターンに合わせて入力端子は上部、スピーカー端子は下部に配置されています。これによりアンプ内部での信号ラインの引き回しを最少にするとともに最短距離での信号伝送を実現しています。

制振性と耐振性を高めるとともに磁気フラックスに対するシールド効果やアイソレーション効果を得られるため、シャーシには純銅材を多用しています。このためB-2302 VINTAGEではトランスとコンデンサーのマウントベースや入出力パネル、センター天板の内側、両サイドパネルの内側にも銅を使用しており、さらにパワーユニットは回路基板を全面で覆う2枚合わせの銅シールドプレートを採用しています。
また、底板は銅板と銅メッキ鋼板の2重構造を採用するとともに、大型純銅脚によってインシュレーター効果を実現しています。

パワートランジスターの実装には素子鳴きを抑えながら効果的な放熱ができるよう1個1個に純銅製ブロックをしようし、そののちヒートシンクに連結・固定する設計が施されています。

ヒートシンクには、放熱効果・磁気歪・不要振動を考慮し、高剛性の非磁性アルミ押し出し材を使用するとともにヒートシンク全面にフッ素樹脂コーティングが施されています。フッ素樹脂は無極性の分子構造でありながら分子間の結合強度が高く、長時間高温に晒されても特性が換わらない化学的安定性を持っています。また、柔軟性・延伸性があり、ヒートシンクの不要な共振や共鳴を抑えています。

バランス/ノーマルの入力切替がワンタッチで行えるオフ・ポジション付きのインプットセレクターを装備しています。
また、バランス/ノーマルの各入力ごとに金メッキリード/キャップ・カーボン抵抗で構成した6段階アッテネータータイプの入力ボリュームを設けています。

出力レベルをリアルタイムで表示する視認性に優れたL/R独立の液晶パワーメーターを装備しています。
このメーターはパルシブな音に対する追従性が高く、ピークホール表示への切替も可能です。また、信号はトランスを用いたフローティング回路で送られるためアンプ部に悪影響を与えません。さらに、オン/オフ・スイッチで消灯も可能です。

DC入力や負荷ショート、過大入力などのトラブルに対処するとともに、異常動作による温度上昇を検知してアンプとスピーカーを保護するプロテクション回路を内蔵しています。
また、"High Temp"、"Protector"、"Overswing"の各警告インジケーターも搭載しています。

ブラックとゴールドの2種類のカラーバリエーションがありました。

機種の定格

型式	ステレオパワーアンプ
定格出力(20Hz～20kHz)	300W+300W(8Ω)
高調波歪率	0.003%(20Hz～20kHz)
混変調歪率	0.003%(60Hz:7kHz)
周波数特性	DC～300kHz +0 -3dB
入力感度/インピーダンス	Normal:1V/15kΩ Balanced:2V/10kΩ
スルーレイト	±300V/μsec
ライズタイム	±0.5μsec
SN比	120dB
TIME歪	測定限界値以下
エンベロープ歪	測定限界値以下
外形寸法	幅474x高さ215x奥行500mm
重量	46.0kg