
SANSUI AU-D907X
¥189,000(1984年発売)
解説
Xバランス・アンプを採用したインテグレーテッドアンプ。
AU-D907Xでは、アンプの基本的構成にXバランス・アンプを採用しています。
Xバランスアンプは、差動バランス入力構成、バランス出力構成、バランス・フィードバック構成、バランス電源方式、バランス電流ドライブ構成、ツイン・ダイアモンド・バランス差動回路という6つの技術で構成されており、入力から出力、電源、フィードバックに至るまでの全てをバランス・アンプとすることで伝送・増幅系をアースから完全分離しています。
出力段は2組のダーリントン出力段と差動プッシュプル増幅段によるバランス構成としています。
2つのアンプをもつバランス出力段によってスピーカーを+側と−側から対等にドライブすることで、シングルドライブ方式で問題となるアースによる音質劣化を排除し、回路自体の歪発生を極少に抑えています。
また、バランス出力段の2つのアンプそれぞれにNFBをかけるバランス・フィードバック構成としており、実動作時の歪や特性が大幅に改善されています。
入力段には差動バランス入力を採用しています。これにより入力差動段はCMRR(コモン・モード・リジェクション・レシオ)が90dBと高く、差動入力はアースから1/30,000の影響しか受けなくなっており、クリーンな入力を可能にしています。
プリドライブ段にはダイアモンド差動回路を活用したツイン・ダイアモンド・バランス差動回路を採用しています。
この回路は、ダイアモンド差動回路が本来4つの出力を持っていることに着目したもので、4つの出力を利用して2組の出力段アンプをバランス・プッシュプル・ドライブすることに成功しています。
この回路は定電流源を持たない差動回路でありながら、差動動作が完全であり、非常に高い安定度を誇っています。また、ダイアモンド差動回路がもつ高速応答性やアンプ内部で必要とする動作電流の十分な供給といった長所を生かしたことで優れた動特性を実現しています。
ノンアース・アンプを実現するため、信号伝送にはアースと無関係な電流伝送が必要となります。そこで、ツイン・ダイアモンド・バランス差動回路を用いて電圧-電流変換を行い、バランス電流伝送を実現しています。
電源部にはバランス電源構成を採用しています。
バランス電源ではアースが完全に分離されており、また、従来電源では不可欠だったセンタータップもなく、スピーカーへアンバランス電流やリップル電流が流れこむことがありません。
さらに、電源部構成は完全なクローズドループとなっているため、アンプへの供給電流やスピーカーからの逆起電力と信号は無関係となり、音質に有害なIHM歪が発生しないようになっています。また、家庭用電源(100V)に含まれるノイズ成分もバランス電源構成のためキャンセルされ、アンプに混入することがありません。
この電源部には高性能トロイダルトランスと50φx110mmのピュア・フォーカスコンデンサーとαコンデンサーを4本採用しており、トータル160,000ミリ・ジュールの静電エネルギーによってピーク時にも十分な電流エネルギー供給を可能にしています。
また、パワーアンプ部はプリドライブ段とパワー部、左右チャンネルを独立させた4電源方式によって安定度を高めています。
CDダイレクト端子を搭載しており、入力セレクターを通さずに伝送することができます。
フォノ入力にはMMポジションとイコライザー直結のHi-MCポジション、MCトランス(High、Low切替)が設けられています。
MCトランスには、磁性特性の優れたマグネティックINC.社(USA)製スーパー・パーマロイコアを用いたモノラルタイプを2個搭載したスーパー・リニアステップ型となっています。
イコライザーアンプ部にはDCアンプ構成Hi-Precisionイコライザーを採用しており、20Hz~300kHzの広帯域にわたって±0.2dBという優れた特性を獲得しています。
また、この回路には高速応答性に優れたダイアモンド差動回路を搭載しています。
主要小型電解コンデンサーにはAWD高性能タイプを使用し、小容量フィルムコンデンサーには銅箔スチロールコンデンサーを採用しています。また、音質に優れたRM抵抗も使用しています。
優れた放熱効果とパワートランジスタ内振動による変調歪防止を兼ねた大型重量級アルミブロックヒートシンクを採用しています。
電磁気歪を防止する銅メッキシャーシを使用しています。
サイドウッドにはミラー仕上げが施されています。
ブラックとシルバーの2色のカラーバリエーションがありました。
機種の定格
型式 | インテグレーテッドDCアンプ |
<パワーアンプ部(Xバランス・アンプ(Twin Diamond Balanced Drive Amp)方式)> | |
実効出力(両ch駆動) | 180W+180W(6Ω、10Hz~20kHz) 160W+160W(8Ω、10Hz~20kHz) 250W+250W(4Ω、1kHz) 210W+210W(6Ω、1kHz) 180W+180W(8Ω、1kHz) |
全高調波歪率 | 0.003%(8Ω、10Hz~20kHz、実効出力時) 0.005%(6Ω、10Hz~20kHz、1/2実効出力時) |
混変調歪率(60Hz:7kHz=4:1) | 0.003%(8Ω、実効出力時) |
出力帯域幅(IHF、両ch動作、THD0.03%) | 5Hz~80kHz |
ダンピングファクター(新IHF、20Hz~20kHz) | 100(6Ω) |
周波数特性(1W) | DC~300kHz +0 -3dB |
エンベロープ歪 | 測定限界以下 |
TIM歪(Sawtooth法) | 測定限界以下 |
スルーレイト | ±300V/μsec(6Ω) |
ライズタイム | 0.5μsec |
<イコライザーアンプ部(Hi-Precisionイコライザー)> | |
入力感度/入力インピーダンス(1kHz) | Phono MM:2.5mV/47kΩ Phono High MC:2.5mV/100Ω Phono MC Low:100μV/3.2Ω(MCトランス採用) Phono MC High:300μV/40Ω(MCトランス採用) CD、Tuner、Tape1、2:150mV/47kΩ |
Phono最大許容入力(1kHz、THD 0.01%) | MM:300mV High MC:300mV MC High:35mV(トランス方式) |
出力レベル/インピーダンス | Tape rec:150mV/600Ω |
RIAA偏差(MM、Rec out) | 20Hz~300kHz ±0.2dB |
SN比(Aネットワーク、ショートサーキット) | Phono MM:90dB Phono MC:80dB以上(100μV) CD、Tuner、Tape:110dB |
トーンコントロール | Bass:±10dB(20Hz) Treble:±10dB(20kHz) |
トーンセレクター | Bass:100Hz、200Hz Treble:4kHz、8kHz |
サブソニックフィルター | 16Hz(-3dB、6dB/oct) |
オーディオミューティング | -20dB |
<総合> | |
定格消費電力(電気用品取締法) | 370W |
外形寸法 | 幅466x高さ161x奥行431mm |
重量 | 20.5kg |