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SANSUI AU-D907F
¥168,000(1980年頃)
解説
スーパーフィードフォワードシステムを採用したAU-Fシリーズのプリメインアンプ。
出力段にはスーパーフィードフォワードシステムを採用しています。
一般的なアンプに採用されたNFB回路は歪を改善するだけでなく周波数特性やS/N比、入出力インピーダンスも改善する技術ですが、完全には歪をゼロにはできず、高域で効果が低下するなどの問題点も持っています。この問題に対処するためフィードフォワード理論が考案されました。この理論は出力に発生する歪と全く同じ歪打消し信号をアンプ内部で作り出して合成する事で歪をキャンセルするというものでしたが、実現不可能とされていました。サンスイではNFBと組み合わせたスーパーフィードフォワードシステムとする事でそれを実現にしています。
スーパーフィードフォワードシステムではNFBは可聴帯域内の歪改善に主に動作しており、フィードフォワードのための逆位相歪を取り出す役割を担っています。また、歪打消し信号の増幅にA級動作のエラーコレクションアンプを設けています。そして、コンピューター技術を駆使して2ポール位相補償に対しても歪キャンセルが可能なシンメトリカル2ポール出力サミング・ネットワークを開発する事で広帯域にわたって歪除去を可能としています。
この回路により、パワー段で発生する高調波歪や混変調歪、スイッチング歪、クロスオーバー歪などの歪を原理上ゼロにすると同時に、動的歪であるTIM歪やエンベロープ歪も低減しています。さらに聴感上の音質も改善しています。
パワートランジスタには新開発のNM-LAPT(ノン・マグネティック・リニアパワートランジスタ)を採用しています。
ドライバー段の初段にはデュアルFETを使用しており、カスコードブートストラップ付きの定電流差動回路を採用しています。2段目にはデュアルコンプリメンタリーによるダイアモンド差動回路を採用しています。
MCヘッドアンプにはプッシュプル入力・出力回路によるシンメトリカルサーキットを改良して採用しており、2段ダーリントンDC構成の出力部を装備しています。
また、HighポジションとLowポジションの切換によって幅広いカートリッジに対応しています。
イコライザー回路にはダイレクトカップル方式によるダイアモンド差動回路を搭載したDCアンプ構成を採用しています。
初段にはペア特性が良く、ローノイズ、ハイgmのデュアルFETを用いた差動入力回路を採用しており、入力インピーダンスの影響を受けないカスコード・ブートストラップ回路を構成しています。また、2段目・3段目はドライブ能力に優れたダイアモンド差動回路と電流差動プッシュプル回路で構成しています。
出力はダーリントン接続によるSEPP回路で十分な電流余裕があり、低出力インピーダンスと低インピーダンスNF回路設計で負荷インピーダンスの変化に対しても十分なダイナミックレンジを取り、S/N比を向上しています。また、DCサーボを採用する事でDC領域を安定化させながら出力コンデンサーを排除しています。
電源部にはレギュレーションに優れたCIコアによるバランス巻線の大型トランスを採用しています。また、トータル8本の大容量・低倍率エッチング、低インピーダンスのカスタムコンデンサーとファーストリカバリーダイオードを採用しており、強力で立ち上がりの良い電源部を構成しています。
さらに、L/R独立構成で、ステージ間の干渉も排除したトータル5電源とする事で強力な電源部を構成しています。
内部レイアウトはシンプル&ストレートを追求し、最短距離でシンプルな信号経路としています。
また、放熱器にヒートループを用いた新しい放熱システムを採用しています。これにより従来のヒートシンクでは難しかった電源部とパワー段を近づける設置を実現しており、大電流が流れる出力トランジスタ付近の線材の引き回しを排除し、ここで発生する電磁波フラックスがプリアンプ部へ飛ぶのを防いでいます。
磁界による信号波形の変調作用であるマグネティックディストーションに注目し、サブシャーシまで銅メッキを施すと共に、ウッドボンネットやNM素子を採用する事で磁気歪の影響を排除しています。
16Hzのサブソニックフィルターと20kHzのスーパーソニックフィルターを装備しています。
ターンオーバー周波数切換機能付きのトーンコントロールを搭載しています。
2回路テープモニターやレコーディングセレクター/コピー機能を搭載しています。
フォノ入力端子には金メッキ端子を採用しています。
ブラックとシルバーの2色のカラーバリエーションがありました。
機種の定格
型式 | スーパー・フィードフォワード&DD/DCアンプ |
<パワーアンプ部> | |
実効出力 | 120W+120W(8Ω、10Hz~20kHz、THD 0.005%) 120W+120W(8Ω、1kHz、THD 0.003%) |
全高調波歪率(10Hz~20kHz、実効出力時) | 0.005%以下(8Ω) |
混変調歪率(60Hz:7kHz=4:1、SMPTE) | 0.005%以下(8Ω) |
出力帯域幅(IHF、両ch動作、THD 0.02%) | 5Hz~80kHz(8Ω) |
ダンピングファクター(新IHF、20Hz~20kHz) | 100(8Ω) |
周波数特性(1W) | DC~300kHz +0 -3dB |
エンベロープ歪 | 測定限界以下 |
TIM歪(Sawtooth法) | 測定限界以下 |
スルーレイト | ±250V/μsec(8Ω) |
インサイド・スルーレイト | ±350V/μsec(8Ω) |
ライズタイム | 0.8μsec |
<プリアンプ部> | |
入力感度/入力インピーダンス(1kHz) | Phono1、2 MM:2.5mV/47kΩ Phono1、2 MC:100μV(high)、250μV(low)/100Ω Tuner、Aux、Tape play1、2:250mV/27kΩ |
Phono最大許容入力(1kHz、THD 0.01%) | MM:200mV MC:26mV(Low) |
出力レベル/インピーダンス(1kHz) | Tape Rec:250mV(47kΩ)/600Ω |
全高調波歪率(20Hz~20kHz、5V出力時) | Phono1、2 MM:0.005%以下 Phono1、2 MC:0.005%以下 |
RIAA偏差(MM、Rec out) | 20Hz~20kHz ±0.2dB |
S/N比(Aネットワーク、ショートサーキット) | Phono1、2 MM:90dB以上 Phono1、2 MC:74dB以上(Low) Tuner、Aux、Tape play1、2:110dB以上 |
Phono入力換算雑音(Aネットワーク、ショートサーキット) | Phono1、2 MM:-142dBV Phono1、2 MC:-154dBV |
チャンネルセパレーション(1kHz) | Phono1、2 MM:60dB以上 Phono1、2 MC:50dB以上 Tuner、AUX、Tape Play:80dB以上 |
トーンコントロール | Bass:±8dB(50Hz) Treble:±8dB(15kHz) |
トーンセレクター | Bass:150Hz、300Hz Treble:3kHz、6kHz |
フィルター | Low:16Hz(-3dB、6dB/oct) High:20kHz(-3dB、6dB/oct) |
オーディオミューティング | -20dB |
<総合> | |
定格消費電力(電気用品取締法) | 320W |
外形寸法 | 幅445x高さ163x奥行443mm |
重量 | 17.5kg |