PLATINUM Air Pulse 3.1
¥20,000,000(2台1組、1997年9月発売)
解説
プラチナム・オーディオが革新的な設計手法によって開発したオールホーン型スピーカーシステム。
Air Pulse 3.1は、電気的には3ウェイ、音響的には4ウェイ構成となっており、多高品位な重低音再生を実現するため大型サイズになっています。このため、運搬や設置上の便宜を考えて3つのサブ・アッセンブリーによるモジュラーシステムとして構成されています。
3つのモジュールのうち上部と下部のものは同一の形をした低域用ホーンで、このモジュールに低域/中低域用のユニットが納められています。また、真ん中のモジュールは低域/中低域用ユニットにカップルされる2個の中低音用ホーンと、それらに挟まれる形の中域/高域ホーン・アッセンブリで構成されています。
低域用ホーンの配置は、リスニングルームの条件や好みに合わせて回転させることが可能です。
低域/中低域には30cmコーン型ウーファーを2個搭載しており、振動板の前面は中低域ホーン用、背面は低域ホーン用に使用されています。
振動板は積層された特製の複合素材によって形成されており、受け持ち再生帯域全域にわたって完全なピストン運動を行います。また、11kgの重量をもつマグネット・アッセンブリーと、100mm径のボイスコイルが使用されています。
このユニットは、低音域と中低音域を分かつための電気的なクロスオーバー・ネットワークを使用しておらず、低域ホーン及び中低域ホーンの音響的なカットオフ・ポイントを正確に計算することでそれぞれの再生帯域を決定しています。低域用のドライバーの場合、ダイアフラムが接する空気の容積が生むインダクタンスとホーン・スロートのアコースティック・リアクタンスで形成されるキャパシタンスの組み合わせによって、2ポール型のネットワークと等価の音響的なフィルターが形成され、これによって再生する上限の周波数が決定されます。これを中低域用ホーンのカットオフ周波数と合致させることで、中低音域とのクロスオーバーを実現しています。この方式を使用することで、余分な部品を排除でき歪を減少させるとともに、過渡特性及び位相特性を改善しています。
低域用ホーンには、コーナー・ホーンとしての動作を前提とするスプリット・コンポジット・ホーン方式を採用しており、これによってカットオフ周波数をおよそ20Hz近くまで伸ばしています。形状は、渦巻き型に形成された緩やかな開口率を持つ3.5mのハイパーボリック・エクスポネンシャル・ホーンとなっています。
このホーンは、低域用ユニットの背面に設けられたスロット付きの円筒に送り込まれた空気振動によって動作しています。また、ダイアフラム~ホーン・スロート間でスロートに対する空気負荷を注意深く整合することにより、再生帯域内でのフラットなレスポンスを実現しています。
なお、スロート~ダイアフラムの圧力比は、ウーファーダイアフラムの弾性係数に適合する最適値として3対1に設定されています。
中低域用ホーンには全方位放射型のホーンを採用しており、ウーファー・コーンの前面を使用して出力しています。このホーンは集成材のブロックから削りだされた直径812mmのホーンで、125Hzから900Hzの帯域を再生しています。
中域にはアルミ合金製ダイアフラムを用いた10cmドーム型ミッドレンジを搭載しており、中低域用ホーンと同様に集成材からホーンによって音を水平全方位に放射しています。
高域にはアルミ合金製ダイアフラムを用いた9.5cmリング型トゥイーターを搭載しており、独特のフレーム構造と上下のホーン部を利用することで、音を水平全方位に放射しています。
また、75mm径のボイスコイルには銅クラッド・アルミのフラットリボン線を採用しています。
3バンドのクロスオーバーネットワークは台座に収納されています。
このネットワークに使用されたコンデンサーやコイル、レジスターの全ての部品は、個別に選ばれた入手可能な最高品質のものを採用しており、結線は全て純銀線により行い、ハンダ箇所には銀結合が用いられてます。
また、ネットワーク回路をエンクロージャーから隔絶することで、エンクロージャー内に生じる音響的エネルギーの影響を排除しています。
エンクロージャーは木工技術の専門家であるスコット・シュミットの協力によって実現しています。スコット・シュミットは、その作品がニューヨーク近代美術館にも収蔵されているアーティストです。
Air Pulse 3.1の木工部材は、全て入手可能な最高の素材が使用されています。中域用及び高域用ホーンは特殊な集成材で構成されており、ホーン各部はこれらの集成材のブロックから削り出され、殆ど共振を起こしません。また、バッフルは全て木工加工機(コンピューター制御のNCマルチヘッド・ラウターCMS
PF102R8)によって精密に切削加工されています。
渦巻き型になっている低域用ホーンの壁は、高密度ファイバーボード、フェノール樹脂、高質量のエラストマー・ダンプ材、木材の組み合わせにより形成されており、非常に高い剛性と非共振性を実現しています。
機種の定格
方式 | 4ウェイ・4スピーカー・オールホーン方式・フロア型 |
ユニット等 | 低域用:30cmコーン型x2 中域用:10cmドーム型 高域用:9.5cmリング型 |
周波数特性 | 20Hz~20kHz 25Hz~17kHz ±2.5dB(軸上、非軸上を問わず) |
感度 | 96dB/2.83V |
最大音圧(1m) | 127dB(連続) 147dB(ピーク) |
公称インピーダンス | 12Ω(システム) |
推奨アンプ出力 | 25W~10,000W |
クロスオーバー周波数 | 125Hz、900Hz、6.5kHz |
外形寸法 | 幅820x高さ1,830x奥行1,220mm |
重量 | 約400kg |
<ドライブ・ユニット> | |
ウーファー | |
マグネット | フェライト、11kg |
ボイスコイル | 100mm口径エッジ巻き銅線、Kapton Formerボビン |
インピーダンス | 8Ω(各ボビン)、2ユニット直列接続 |
コーン | ロング・ファイバー・ウッドパルプ(樹脂含浸)300mm口径 |
エッジ | クロス |
QTS(Total Q) | 0.12 |
最大許容入力 | 600W(連続) |
ミッドレンジ | |
マグネット | フェライト、11kg |
ダイアフラム | 100mm口径アルミ合金製ドーム |
ボイスコイル | 100mm口径エッジ巻き銅クラッド・アルミ線、磁性液体冷却 |
インピーダンス | 8Ω |
最大許容入力 | 10,000Wpeak |
トゥイーター | |
マグネット | フェライト、5kg |
ダイアフラム | 95mm口径アルミ合金(リング状) |
ボイスコイル | 75mm口径エッジ巻き銅クラッド・アルミ線、磁性液体冷却 |
インピーダンス | 8Ω |
最大許容入力 | 10,000Wpeak |
<クロスオーバー・ネットワーク> | |
ウーファー | アンプ直結(フィルター無し、電気回路無し |
ミッドレンジ | 12dB/oct(900Hz) 12dB/oct(6.5kHz) |
トゥイーター | 12dB/oct(6.5kHz) |
※クロスオーバー内にイコライゼーション回路を含まず | |
<ホーン構成> | |
全体 | スピーカー(片側)は、低域用x2、中低域用x2、中域用、高域用の計6個のホーンで構成 |
低域用ホーン | 35m長スパイラル型ハイパーボリック・エクスポネンシャル・ハイブリッド・ホーン 圧縮比(ウーファー・コーン部:ホーンスロート部)3:1 開口部面積:1.2m2 ホーン開口部は360度回転可能 |
中低域用ホーン | 水平方向全方位、垂直方向45度の放射パターンを持つエクスポネンシャル型ホーン |
中域用ホーン | 水平方向全方位、垂直方向45度の放射パターンを持つエクスポネンシャル型ホーン |
高域用ホーン | 水平方向全方位、垂直方向40度の放射パターンを持つエクスポネンシャル型ホーン |