Pioneer T-858
¥79,800(1990年発売)
解説
録再の周波数特性をフラットに保つFLAT SYSTEMを搭載したステレオカセットデッキ。
キャリブレーションを自動的にしかも高精度で行い、テープの性能を最大限に引き出し、ドルビーNRの効果をフルに発揮させるFLAT SYSTEM(Frequency-response and Level Auto Tuning System)を開発・搭載しています。
従来の低域(400Hz)と高域(10kHz)の2ポイントの補正ではなく、低域(400Hz)、中高域(3kHz)、超高域(15kHz)の3ポイントを監視してキャリブレーションを行っており、しかもバイアスは7bit相当、レベルは5bit、イコライザーは中高域が4bit・超高域が2bitの分解能を有するマイコンにより、テープに適正なデータを高精度に短時間でサーチしています。
また、バイアス調整には電動ボリュームを使用し、自動調整終了後にもマニュアル調整が可能なため、自分の好みのサウンド創りも可能です。
リールトルクをマイコンでコントロールするデジタルテンションサーボをカセットデッキで初めて搭載しています。
巻き径の大きさに応じてマイコンがリールモーター電圧をコントロールしながら、適正なテープテンションで巻取りを行い、これまで不安定になりがちだったテープの巻き始めのワウ・フラッターを改善しています。
また、ワンタッチテープリターン時には、高速→中速→低速とトルクを調整し、カウンター0000に向かってテープをソフトに停止します。
さらに早送り時間の短縮化も図り、従来より約10%スピードが向上しています。
メカニズムには新開発のリファレンスマスターメカニズムNEW Zを搭載しています。
Zメカの高度な基本技術を受け継ぎながら、より高度なテープの走行安定を実現するため、ワウ・フラッターに最も関係深いキャプスタンシャフトの回転精度の改善に着目し、キャプスタンシャフトとピンチローラーとの間の圧着力によるモーメント荷重を低減するために、シャフトを支える軸受け部を延長し、滑らかな回転を実現しています。
また、テープ蛇行や微振動の抑制には、亜鉛ダイキャストの二重構造による高剛性・高精度ヘッドブロックを採用しています。さらに、FS処理を施したサブミクロンオーダーのキャプスタンシャフトを使用し、テープとキャプスタンシャフトの滑りを抑制しています。
録音・再生ヘッドにはコイル巻線にPC-OCC(単結晶状高純度無酸素銅)を使用したレーザーアモルファスヘッドを採用しています。
また、消去ヘッドにはセンダストガード付ダブルギャップフェライトヘッドを採用しています。
NASAが開発した大型汎用プログラムNASTRANから得たカセットハーフの振動解析を基に開発された、カセットスタビライザーを搭載しています。
カセットハーフの共振を起しやすい部分に、特殊無反発ゴムと剛性の高い部材を使ってダンピングを施すことで、振動レベルの低減を実現しています。
キャプスタンモーターによる高次振動を防ぐためM・V・I機構を搭載しています。
この構造はモーターとメカシャーシとの間に、重量のある特殊強化樹脂製のモーターブラケットと無反発ゴムを使ったインシュレーターを設置しており、モーターから発生する振動エネルギーを構造と材質の両面で効果的に吸収しています。
スピーカーからの外部音圧による振動をハーフに伝えないために、ドア部とカセットポケット部を分離したアイソレーテッドドアを採用しており、ドア部で振動を遮断し、音の劣化を防ぎます。
デッキ本体には銅メッキハニカムシャーシや大型ハニカムインシュレーター、ハニカムシールドケースなどを採用し、振動を多方面に拡散させて瞬時に減衰し、音のにごりを解消しています。
音楽信号の高域成分を検知し、バイアス量を適正値にコントロールしオーバーバイアスを抑制するドルビーHX PROを内蔵しています。
ラインストレート機能を搭載しており、バランス調整の必要が無いソースの場合などに、バランスボリュームをバイパスし、最短経路で信号を録音アンプへ導きます。
また、ダイレクトコンストラクション設計により、電源部、制御部、アンプ部、メカ部、FLメーター部をそれぞれ最短距離で接続し、さらに入力端子の間近にボリュームを配置し、シャフトでコントロールするなど、配線距離の最短化も実現しています。
電源部には、トランス巻線をアンプ、制御、FL表示などの各ブロック別に分けた独立4巻線による構成を採用しています。特に無酸素銅線によるバイファイラ巻をアンプ系トランス巻線に採用し、+電源と−電源のバランスを向上しています。
210kHzのハイバイアスを採用しており、高調波とバイアス電流の干渉によるビートや混変調ノイズの発生を抑制しています。
正確な録音レベルセッティングをマイコンがアシストするピークレベルキャリブレーション機能を搭載しています。
録音ソースのピークレベルを一旦ホールドし、録音ボリュームを調整することで、適正レベルが簡単にセットできます。
また、17セグメントのメーターには、メーターレンジ切換機能を搭載しており、通常時は-30dB~+12dB、エクスパンドレンジモードでは-3dBから+12dBまでを1dBステップで表示し、シビアな録音調整が行えます。
CDプレイヤーとの連動が可能なCD-DECKシンクロに対応しています。
FLディスプレイ部からのノイズ発生を防ぐディスプレイOFF機能を搭載しています。
テープカウンター、タイムカウンター、リメインカウンターとして使える3モードカウンターを搭載しています。
カウンター0000までをワンタッチで巻き戻し、自動的に再生を始めるワンタッチテープリターン&リターンプレイ機能や、テープ片面を繰り返し再生するリピート再生、4秒間の無音部が創れるオートスペースRECミュートを搭載しています。
ワイヤレスリモコンが付属しています。
機種の定格
型式 | リファレンス3ヘッドデッキ |
トラック方式 | 4トラック・2チャンネルステレオ |
ヘッド | コンビネーション型 (レーザーアモルファス録音ヘッド/レーザーアモルファス再生ヘッド) センダストガード付ダブルギャップフェライト消去ヘッド |
モーター | キャプスタン用:DCサーボモーター リール用:DCモーター アシスト用:DCモーター |
ワウ・フラッター | ±0.04%W・peak(EIAJ) 0.022%WRMS(JIS) |
早巻き時間(C-60) | 約75秒 |
周波数特性(EIAJ) | メタルテープ:15Hz~22kHz ±3dB(-20dB録音) クロームテープ:15Hz~20kHz ±3dB(-20dB録音) ノーマルテープ:15Hz~20kHz ±3dB(-20dB録音) |
SN比(メタルテープ) | 57dB(EIAJ/ピーク録音レベル、聴感補正) Dolby C on:76dB(第3次高調波歪率3%、聴感補正) |
歪率(EIAJ/1kHz) | 0.5%(メタルテープ、第3次高調波歪率) |
入力感度/インピーダンス | Line:60mV/47kΩ |
出力レベル/インピーダンス | Line:316mV/1.8kΩ Headphone:2.3mW/8Ω(ボリューム最大時) |
電源電圧 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 17W |
外形寸法 | 幅420x高さ135x奥行370mm |
重量 | 8.1kg |
付属 | リモコン CU-T012 |