Pioneer T-1100S
¥120,000(1993年発売)
解説
ワイドレンジシステム、ドルビーS、FLAT SYSTEMを搭載し、新しいリファレンスモデルとして開発されたカセットデッキ。
録・再周波数特性の高域限界を大幅に向上したワイドレンジシステムを搭載しています。
この技術は、メタルテープの持つ強力な磁気特性に着目したもので、録音ヘッドと再生ヘッドのアジマス平行度をサブミクロンのオーダーで3次元的にチューニングしたファイン・チューンド・アジマス・ヘッドによって実現しています。このヘッドによって高域でのアジマス・ロスを大幅に低減すると共に、高域の左右の位相特性が改善され、定位感の向上も得ています。
さらに、録音・再生アンプも広帯域化を実施し、イコライザーの共振ポイントのピークを30kHzまで高めています。これにより過渡応答特性を向上し、鋭い立ち上がりを得ると共に、立下り時の不要なリンギングも低減しています。
再生イコライザーアンプには、2段で構成した新開発のハイスピード再生アンプを採用しています。
1段目に低ノイズのFET差動アンプを採用し、2段目は高性能ハイスピードOPアンプで構成することにより、ローノイズ化、広帯域化を実現しています。
また、録音アンプの出力部にAクラス動作FETバッファーアンプを採用しており、録音ヘッドの負荷に影響されない安定した電流供給を実現しています。
オーディオ回路に流入する制御系の電流による音質劣化を防ぐため、システム制御からオーディオ系へのインターフェース部に低電流動作が可能なMOS FETを採用しています。これによりコントロール電流の影響を排除し、より純度の高い音楽伝送を実現しています。
電源部は、プラス電源とマイナス電源を電源トランスの巻線からアースパターンに至るまで分離し、プラスとマイナスの信号がランダムに変化する信号dめお独立した動作を実現しています。
また、可聴帯域内の出力インピーダンスを0.001Ω以下に抑え、低ノイズ化を得ると共に過渡応答特性を向上させています。
高域で最大24dB、低域で最大10dBのノイズ低減効果を持つドルビーSを搭載しています。
さらに、微小レベルの音やブリージングノイズ(息つぎ現象)も大幅に低減しています。
テープの周波数特性をフラットに補正しテープの性能を引き出すため、FLAT SYSTEMを搭載しています。
FLAT SYSTEMは、バイアス、イコライザー感度を低域(400Hz)、中高域(3kHz)、超高域(15kHz)の3つのポイントで補正する構造となっており、バイアスで64ステップ、イコライザーで中高域16ステップ、録音レベルで32ステップの分解能を持つマイコンが短時間で自動調整を行います。
さらに、マニュアル操作で好みに応じた微調整も可能です。
伝送ロスやノイズを排除するためダイレクトコンストラクションを採用しています。これにより入力端子から録音ヘッド、再生ヘッドから出力までの信号の経路を大幅に短縮しています。
さらに入力ボリュームを入力端子に接近させるためロングシャフトでコントロールしたことや、バランスボリュームをバイパスするラインストレート機能を装備するなど、伝送ロスやノイズの低減を徹底しています。
テープトランスポート部全体を10゜傾斜させたスラントメカニズムを採用しており、重量級フライホイールの滑らかな回転と軸方向への微振動の排除を実現しています。
また、振動、共振の排除のため、カセットスタビライザーをはじめ、高比重材料を使用したドアポケット、モーターとメカシャーシの間に特殊強化樹脂モーターブラケットと無反発ゴムを使い振動エネルギーを吸収するモーター・バイブレーション・インシュレーター、外部振動を遮断するアイソレーテッドドアの採用など高音質化を図っています。
ピークレベルキャリブレーション機能を搭載しており、入力信号のピークレベルをいったんホールドさせると、マイコンがアシストし、録音ボリュームを適正なレベルに調整することで、過大な信号の入力による歪を解消することができます。
また、メーターレンジは-35dB~+8dB、-7dB~+8dBに切り替え可能となっています。
ラストメモリー機能を搭載しており、FLAT SYSTEMの各データやドルビーHX PRO、ドルビーNR、メーターレンジ、スイッチのon/off位置、電子カウンターの数字などを記憶することができます。
信号系へのノイズの流入を排除するため、メカニズムを中央に配置したミッドシップマウント構造を採用しています。
テープの巻取りトルクを自動的に調整するデジタルテンションコントロールを搭載してます。
ヘッドにはPC-OCC(単結晶高純度無酸素銅)巻線を採用したレーザーアモルファスヘッドを採用しています。
また消去ヘッドには、音楽信号の高周波とバイアス電流との干渉によるビートや混変調歪の発生を抑える210kHzのハイバイアス方式の消去ヘッドを採用しています。
広帯域化に対応するため、厳選したパーツを採用しています。さらにヘッドコネクターまで金メッキ化するなど高音質化を図っています。
また、接続ロスを排除するため、入出力ピンジャックや付属のピンコードも金メッキ処理がされてます。
CD-DECKシンクロ機能を搭載しており、パイオニア製のCD-DECKシンクロ対応機能付CDプレイヤーと連動した録音が可能です。
パイオニアのシステムと連動を可能にするSR端子を搭載しています。
シャーシ及びインナーシャーシを銅メッキ化しています。
ワイヤレスリモコンが付属しています。
機種の定格
型式 | 3ヘッドデッキ |
トラック方式 | 4トラック・2チャンネルステレオ |
ヘッド | 録再ヘッド:コンビネーション型 (PC-OCC巻線レーザーアモルファス/PC-OCC巻線レーザーアモルファス) 消去ヘッド:センダストガード付ダブルギャップフェライト |
モーター | キャプスタン用:DCサーボモーター リール用:DCモーター メカニズム駆動用:DCモーター |
ワウ・フラッター | ±0.04%W・peak(EIAJ) 0.022%WRMS(JIS) |
早巻き時間(C-60) | 約75秒 |
周波数特性 | TypeIV(メタル):10Hz~30kHz ±3dB TypeII(クローム):10Hz~20kHz ±3dB TypeI(ノーマル):10Hz~20kHz ±3dB |
SN比(TypeIV) | 58dB(EIAJ/ピーク録音レベル、聴感補正) Dolby NR off:64dB以上(第3次高調波歪率3%、聴感補正) Dolby B NR:73dB以上(第3次高調波歪率3%、聴感補正) Dolby C NR:80dB以上(第3次高調波歪率3%、聴感補正) Dolby S NR:86dB以上(第3次高調波歪率3%、聴感補正、20Hz~20kHz、B.P.F) |
入力感度/インピーダンス | Line:95mV/47kΩ |
出力レベル/インピーダンス | Line:0.5V/0.9kΩ Headphone:5.5mW/8Ω(ボリューム最大時) |
電源電圧 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 25W |
外形寸法 | 幅440x高さ144x奥行375mm |
重量 | 8.6kg |
付属 | リモコン CU-T018 |