- Pioneer PL-70LII
- ¥170,000(1981年発売) 
解説
プレイヤーの本質に真正面から取り組んだPL-70の思想をそのままに、トーンアーム、モーターに最新のテクノロジーを採用し、さらにサイレントリフトアップ機能も搭載したレコードプレイヤーシステム。
            
アーム素材には、内部損失が大きく剛性が高い素材として、独自に開発したカーボングラファイトを採用しており、高純度のアルミパイプのベースと組合わせる事によって共振に強くローマス、高剛性なアームを実現しています。また、アームパイプ形状は重量の面で有利で高強度が得られるストレートタイプを採用しており、さらにアーム中心に近づくにしたがい断面二次モーメントが増加するテーパー形状とすることで、ローマス化を計りながら剛性を高めています。さらに、アーム根元部分のコネクターにはヤング率の大きい真鍮を用いて十分な強度を得ています。
また、ヘッドシェルにも軽量、高剛性のカーボン繊維複合材を採用しており、素材の良さに加えて、形状をリブ付きとすることによって強度を高めています。
            
トーンアームの形状の決定には振動解析理論を応用しています。これはコンピューターモーダルアナライザーによってアームの共振全体をリアルタイムに把握し、全体のバランスをコントロール、振動特性をフラットにするというもので、測定法は、トーンアームの各部にセンサーを取付け、振動分布をコンピューターにより、実際の振動変位の1000倍程度に拡大しアニメーションとして観測しています。
            
レコードのソリや偏芯によって発生する有害な低域共振を抑制しながら高感度が実現できるレベル可変オイル制動方式を採用しています。
これは、アーム軸上部に設けられたオイルカップにシリコンオイルが注入されており、先端を45度にカットしたリング状の制動フィンを沈める事でダンピングをかける構造となっています。垂直方向・水平方向にそれぞれ適した制動量がワンポイントでかけられるため、低域共振のQを低下させており、これにより再生音を濁らせるコン変調歪の抑制に対しては9dB改善しています。
また、制動オイルには、経時変化や温度による粘性変化が少ないシリコンオイルを採用しており、さらにこのシリコンオイルを高精度成型したオイルカップの中に収納することで、オイルのにじみ漏れがない構造とし、信頼性を高めています。
レベル可変型オイル制動方式のレベル調整リングの目盛りが0の位置ではフリー、1~5へと大きくなるにつれて制動量も大きくなる設計となっています。このレベル調整リングには精度の高いラッピング加工を施したヘリコイド式を採用しており、部分共振を防いでいます。
            
トーンアーム部は、メインウェイトをアーム軸に近づけ、針先の等価質量を低減させた質量集中方式を採用しています。トーンアームの慣性モーメントを軽減させることにより、オイル精度をかける以前の基本性能も向上させています。
            
ホール素子とマグネットによるシンプルな無接触エンド検出方式と、動作音の全くないムービングコイル駆動方式アームエレベーションによるサイレントリフトアップ機構を採用しています。
また、演奏が終了するとアームが静かに上昇し、ターンテーブルが自動停止する純電子クイックストップ機構を搭載しています。
            
駆動部のモーターには、原理的に回転ムラの原因となるコギングが一切発生しないコアレス構造のクォーツPLL DCサーボモーターを採用しています。これは駆動コイルを空芯としてコアを使用せず、偏平コイルで磁界を発生させることにより、部分的な磁場の強弱を無くし、コギングが起きない構造となっています。
さらに、サーボ以前の裸特性を高めるためにSH・ローター(Stable Hanging Rotor)方式を採用しています。これは、これまでモーター底部にあったローターの支点をターンテーブルのすぐ下へ移動した構造となっており、これによりターンテーブルの重心と支点をほぼ一致させることに成功しています。さらに回転系の心臓部である軸受けに加わる側圧を低減し、ターンテーブルの安定度を高めています。
            
ターンテーブルには従来の製法とは異なる低圧鋳造法を採用しています。これは、極めて精密に成型された型の中に、ゆっくりと金属を流し込み、時間をかけて自然冷却させる手作りの製法で、スや気泡が少なく、内部が均一に保たれるため、従来の方法より高密度で優れたダイナミックバランスを実現しています。
また、ターンテーブル自身の共振をデッドニングするため、裏面に特殊防振材を施し、音質に悪影響を与える鳴き等を防止しています。
            
キャビネットには、様々な素材での試作・検討の末に選ばれた針葉樹ソリッドボードを積層して設計された8.5kgの重量級キャビネットを採用しています。
またインシュレーターには、プレヤーシステムの重心とインシュレーターの支点をほぼ同じ高さにし、構造図のようにスプリングでサポートする新開発の低重心構造のインシュレーターを採用しています。
            
トーンアームのリード線や出力コードおよびそれらの接点での伝送ロスを最少に抑えるために、低容量の無酸素銅線と金メッキのターミナルを採用しています。
            
ハンドクラフトで一つ一つ作り上げられた5mm厚のスモークドアクリルフードを標準装備しています。
            
音響特性に優れたターンテーブルシートを採用しています。
            
ヘッドシェルの交換が容易なS字型交換アームパイプを搭載してます(大型ウェイト付)
また、カーボングラファイトのシェル一体型ストレートアームも別売りであり、使用するカートリッジの数だけストレートアームパイプを揃え、簡単にカートリッジ交換することも可能です。
			
機種の定格
| 型式 | カートリッジレス・プレイヤーシステム | 
| <フォノモーター部> | |
| モーター | コアレス・クォーツPLL DCサーボ・ホールモーター | 
| 駆動方式 | ダイレクトドライブ | 
| 軸受構造 | SH・ローター方式 | 
| ターンテーブル直径 | 31cm | 
| ターンテーブル慣性質量 | 480kg-cm2(ターンテーブルシート含む) | 
| 回転数 | 33・1/3、45rpm | 
| 回転数切換え | ショートストロークスイッチによる電子式 | 
| 回転ムラ | 0.008%以下(WRMS/FG直読法) 0.018%以下(WRMS/JIS) | 
| S/N | 85dB以上(DIN-B) 68dB以上(JIS) | 
| 負荷変動 | 0%(針圧300g以内) | 
| 起動特性 | 1/3回転以内 | 
| 起動トルク | 2kg-cm | 
| 速度検出方式 | 全周積分方式FG | 
| 回転数偏差 | 0.002%以下 | 
| ドリフト | 時間ドリフト:0.00008%/h 温度ドリフト:0.00003%/℃ | 
| ブレーキ機構 | 純電子式 | 
| <トーンアーム部> | |
| 型式 | 可変型オイル制動方式 スタティックバランス・ツインパイプ交換方式パイプアーム | 
| 実効長 | 282mm | 
| オーバーハング | 13.5mm | 
| トラッキングエラー | +1.2゜、-1.3゜ | 
| 針圧調整 | ウェイト1回転1g | 
| 適合カートリッジ自重 | ストレート:3g~14g S字型:6g~32g(シェル込み) | 
| 高さ調整範囲 | +2 -4mm | 
| ヘッドシェル | 炭素繊維複合材 | 
| <総合> | |
| 付属機構 | クォーツロックインジケーター クイックストップ サイレントリフトアップ(電子式) | 
| 使用半導体等 | 水晶:1 IC:10 ホール素子:3 LED:4 トランジスタ:14 ダイオード:6 | 
| 電源 | AC100V、50Hz/60Hz | 
| 消費電力 | 20W | 
| 外形寸法 | 幅550x高さ214x奥行440mm | 
| 重量 | 21.5kg | 
| 別売 | シェル一体型ストレートアーム JP-516(¥9,000) |