Pioneer PL-70
¥150,000(1980年頃)
解説
高い精度の追求により桁違いの安定性を実現し、プレヤーの本質を究極まで見つめた高精度プレイヤーシステム。
駆動部には、サーボをかける以前の回転の裸特性そのものを見直し、SH・ローター(Stable Hanging Rotor)方式を開発・搭載することで桁違いの回転精度を実現しています。
SH・ローター方式は、これまでモーター底部にあったローターの支点をターンテーブルのすぐ下へ移動したユニークな構造を採用しており、これによりターンテーブルの重心と支点をほぼ一致させることに成功しています。
これは、モーターシャフトを固定し、その上にボールベアリングを設け、ローターを回転させるという従来と逆の構造によって実現しており、支点の一致によって不安定な逆円錐運動をするのを解消しています。
またモーターには、直径31cm、慣性質量480kg-cm2のターンテーブルを1/3回転以内(約1秒)で定速回転させる2kg-cmのハイトルクDCサーボモーターを搭載しており、優れた安定性を実現しています。
ターンテーブルは、より安定した回転と優れた音響特性を得るため、従来のターンテーブル製法とは異なる低圧鋳造法を採用しています。
これは、極めて精密に成型された型の中にゆっくりと金属を流し込み、時間をかけて自然冷却させる手作りの製法で、スや気泡が少なく内部が均一に保たれるため、従来の方式より高密度ですぐれたダイナミックバランスを実現しています。
また、ターンテーブル自身の共振をデッドニングするため、裏面に特殊防振剤を施し、音質に悪影響を与える鳴き等を防止しています。
モーターの磁極切換え(スイッチング)機構には、パイオニアが独自に製法を開発したホール素子による無接触切換え方式を採用しています。
また、駆動部をSH・ローター方式にすることにより、これまでモーターシャフトと軸受け間で発生していた微細なノイズを追放し、さらにフォノモーターユニット内部に特殊防振加工を施す事で、高いSN比を実現しています。
アームベースには、真鍮無垢材をハンドメイドでひとつひとつ切り出した1kgの重量級アームベースを採用しています。さらに、アーム軸を固定する支持部には、8枚の金属羽根がアーム軸全面を均等につつんで締め付けるチャッキングジョイント方式を採用しています。
これにより、ワンポイントあるいは数ヶ所をビス止めする一般的な支持方式と異なり、ガタを追放して部分共振の発生を防いでいます。また、ヘッドシェルの装着部にもチャッキングジョイント方式を採用しており、徹底した無共振化による音質追及を図っています。
市販されているレコードが持つ偏芯やソリによって発生する低域共振を抑制しながら高感度を実現するため、新開発のレベル可変オイル制動方式を採用しています。
これはアーム軸受部に設けられたオイルカップにシリコンオイルが注入されており、先端を45度にカットしたリング状の制動フィンをしずめることでダンピングをかける構造で、垂直方向・水平方向にそれぞれ適した制動量がワンポイントでかけられる方式となっています。これにより低域共振のQを低下させるとともに、機械インピーダンスの平坦化を実現しています。
レベル調整リングの目盛りが0の位置ではフリー、1~5へ大きくなるにつれて制動量も大きくなる設計となっており、これにより比較的ローコンプライアンスタイプが多いMC型から、ハイコンプライアンスなMM型まで幅広い使いわけが可能です。また、レベル調整リングには精度の高いラッピング加工を施したヘリコイド式を採用し、部分共振を防いでいます。
トーンアーム部には、メインウェイトをアーム軸に近づけ、針先の等価質量を低減させた質量集中方式を採用しており、トーンアームの慣性モーメントを軽減させることにより、オイル制動をかける以前の基本性能も向上させています。
また、トーンアームの軸受部には、ミクロンオーダーを誇るパイオニアの精密加工技術を駆使し、ピボットをピボットホルダーに収納してスプリングでサポートするスタビリティサポートを採用しています。
トーンアームは高剛性アルミパイプを使用した実効長282mmのロングタイプ設計となっており、軽質量・高剛性のカーボンファイバー製ヘッドシェルを標準装備しています。
キャビネットには8.5kgの重量級キャビネットを採用しています。このキャビネットは、様々な素材での試作・検討の末に選ばれた高剛性・高比重・内部損失の大きい針葉樹ソリッドボードを4層積層した強固な設計となっています。
さらにインシュレーターには、プレイヤーシステムの重心とインシュレーターの支点をほぼ同じ高さにし、スプリングでサポートする新開発の低重心構造のインシュレーターを採用しています。
トーンアームのリード線や出力コードおよびそれらの接点での伝送ロスを最少に抑えるため、低容量の無酸素銅線と金メッキのターミナルを採用しています。
純電子式のスタート・ストップボタンを採用しています。
ハンドクラフトで作り上げられた5mm厚のスモーク度アクリルフードを標準装備しています。
音響特性に優れたターンテーブルシートを採用しています。
機種の定格
型式 | カートリッジレス・プレイヤーシステム |
<フォノモーター部> | |
型名 | MU-70 |
モーター | クォーツPLL DCサーボ・ホールモーター |
駆動方式 | ダイレクトドライブ |
軸受構造 | SH・ローター方式 |
ターンテーブル直径 | 31cm |
ターンテーブル慣性質量 | 480kg-cm2(ターンテーブルシート含む) |
回転数 | 33 1/3、45rpm |
回転数切換え | ショートストロークスイッチによる電子式 |
回転ムラ | 0.009%以下(WRMS/FG直読法) 0.018%以下(WRMS/JIS) |
S/N | 78dB以上(DIN-B) 68dB以上(JIS) |
負荷変動 | 0%(針圧300g以内) |
起動特性 | 1/3回転以内 |
起動トルク | 2kg-cm |
速度検出方式 | 全周積分方式FG |
回転数偏差 | 0.002%以下 |
ドリフト | 時間ドリフト:0.00008%/h 温度ドリフト:0.00003%/℃ |
ブレーキ機構 | 純電子式 |
<トーンアーム部> | |
型名 | PA-70 |
型式 | 可変型オイル制動方式スタティックバランスS字型パイプアーム |
実効長 | 282mm |
オーバーハング | 12.5mm |
トラッキングエラー | +1.8゜、-1.1゜ |
針圧調整 | ウェイト1回転1g(0.1g目盛り) |
適合カートリッジ自重 | 4g~24g(付属シェル使用時) |
高さ調整範囲 | ±3mm |
ヘッドシェル | カーボンファイバーヘッドシェル自重7.6g |
<総合> | |
付属機構 | クォーツロックインジケーター クイックストップ |
使用半導体等 | 水晶:1 IC:6 ホール素子:3 LED:3 トランジスタ:9 ダイオード:4 |
電源 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 9W |
外形寸法 | 幅550x高さ214x奥行440mm |
重量 | 23kg |