Pioneer CT-970
¥115,000(1980年発売)
解説
リボンセンダストヘッドとAuto BLEシステムを搭載したステレオカセットデッキ。
ヘッド部にはリボンセンダストコンビネーション3ヘッドを採用しています。
リボンセンダストヘッドは、パイオニア独自の技術でセンダストを50ミクロンに薄帯化し、11枚ラミネートした構造となっています。この薄帯化によって渦電流の発生を抑え、高域特性の劣化を防いでいます。さらに、従来のセンダストヘッドに比べてバイアス効率は約2倍に改善しており、優れた性能を獲得しています。
さらに、優れたチャンネルセパレーションを得るため、リボンセンダストヘッドでは漏洩磁界に対するシールド効果が考慮されており、左右両チャンネルが隣接するコアスペーサーには静電シールド効果の高い非磁性高電導材料と、磁気シールド効果に優れたパーマロイによるシールド板を採用しています。高い周波数に効果を発揮する静電シールドと、低い周波数に対しての磁気シールドを組み合わせた二重シールドによって音質を高めています。また、両チャンネル間は適度に振り分け角度をもたせた構造としており、精度の高いコア加工技術とギャップを深くとる設計によってチャンネルセパレーションをより優れたものとしています。
録音ヘッドと再生ヘッドはそれぞれの周波数特性、歪、感度を総合的に分析して最適ギャップが選べるコンビネーションタイプとしており、再生ヘッドは0.8ミクロン、録音ヘッドは2.5ミクロンにギャップ幅を設定することで各ヘッドの性能を引き出しています。また、アジマスずれやテープタッチの変動による音質劣化も抑えています。
テープの性能を引き出すためAuto BLE(オート・バイアス・レベル・イコライザー)システムを搭載しています。
Auto BLEシステムでは4ビットのマイクロプロセッサーが1本1本のテープに最適な録音バイアス、録音レベル(テープ感度)、録音イコライザーを自動的にサーチし、ベストな録音ができるよう調整しています。
チューニングは、まずAuto BLEユニットからメカニズム制御回路へ録音状態になるように指令が送られます。そして、1kHzの発振信号が選択され録音アンプを経て録音ヘッドに供給されます。その際同時に録音バイアスもバイアス可変回路を経て1kHzの発振信号と重畳されて録音ヘッドに供給されます。こうして録音されたテスト信号は再生ヘッドに取り出され、AutoBLEユニットの整流回路に供給され、録音・再生のループを作ります。
自動調整はまずバイアスの設定から開始されます。これは1kHzのテスト信号を録音しながらバイアス電流を16ステップで可変させ、その再生レベルの中から±0.5dBの高精度で最適なピークバイアス量を検出する方式となっています。Auto
BLEユニットの整流回路に与えられた再生信号をDC電圧になおし、その電圧をさらにデジタル量に変換することでマイクロプロセッサーの再生レベルの最大値を判別しています。
バイアス量が設定されると次に最適録音レベルの調整が開始されます。この時もテスト信号は1kHzが使われ、録音電流を16ステップで変化させながら両chの再生出力レベルが0dBの規定レベルとなるよう設定します。
録音イコライザー調整時には、マイクロプロセッサーが10kHzのテスト信号を選択し、録音イコライザーの補償量を16ステップで変化させ、周波数特性をふらっとにさせます。
調整中はフロントパネルのLEDが点滅し、調整が終われば自動的にスタート位置にまで巻き戻されて録音スタンバイ状態となります。
メカニズム部には2モーター・クローズドループデュアルキャプスタン方式を採用しており、キャプスタン駆動用にクォーツPLL
DDモーター、リール駆動用にコアレスモーターを採用しています。
クローズドループデュアルキャプスタン方式では、ヘッドの両側に配置された2つのキャプスタンとピンチローラーでテープを挟んでそいう項するため、テープテンションが常に一定に保たれ、良好なヘッドタッチを得ています。これによりドロップアウトやレベル変動、テープ振動による変調雑音を低減しています。
ディスプレイ部には集中表示ボードを採用しています。
この集中表示ボードでは、レベルメーターをはじめ、4桁電子カウンター、信号ルート、Auto
BLE動作、テープの種類、ドルビーNRシステムのON/OFFなどをLEDで表示します。
レベルメーターには応答速度に優れた16セグメントのワイドレンジ2色LEDピークレベルメーターを装備しています。このメーターは-30~+10dBの表示が可能で、約2秒のオートリセットピークホールド機能を装備しています。
メモリーストップ/プレイ機能を搭載しています。
タイマースタンバイ機構を搭載しており、別売りタイマーをつなぐことで留守録音や目覚し再生が可能です。
Recミュート機構を搭載しています。
バイアスマニュアル可変機能を搭載しています。
ノイズリダクションシステムとしてドルビーシステムを搭載しています。
Norml、CrO2、METALの3ポジションテープセレクターを搭載しています。
機種の定格
型式 | カセットデッキ | ||
ヘッド | 録音:リボンセンダスト(コンビネーション型) 再生:リボンセンダスト(コンビネーション型) 消去:特殊合金ヘッド |
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モーター | 定速ドライブ用:クォーツPLL DDキャプスタンモーター リールドライブ用:コアレスモーター |
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早巻き速度 | 90秒以内(C-60にて) | ||
回転ムラ | 0.023%以下(WRMS) | ||
周波数特性 |
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SN比 | ドルビーOFF:60dB以上 ドルビーON:70dB以上(5kHz以上) (第3次高調波歪率3%、聴感補正) |
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歪率 | 1.2%以下(0dB) | ||
操作部 | フェザータッチ式ダイレクトチェンジ | ||
入力感度/最大許容入力 /インピーダンス |
Mic:0.3mV/100mV/10kΩ、6mmφジャック (適合マイクインピーダンス:250Ω~30kΩ) Line:60mV/15V/65kΩ、ピンジャック |
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出力基準レベル/最大レベル /負荷インピーダンス |
Line:450mV/640mV/50kΩ、ピンジャック Headphone:70mV/90mV/8Ω、6mmφステレオジャック |
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付属機能 | Auto BLEシステム(自動バイアス・レベル・イコライザー調整) ドルビーシステム(LED表示付) ピークホールド機能付き2色LEDレベルメーター(-30~+10dB) 4桁LEDテープカウンター バイアス微調整用ボリューム メモリーストップ/プレイ タイマースタンバイ機構 自動テープたるみ除去装置/ATLC RECミュート カセット背面照明 パワーイジェクト機構 テープ走行インジケーター テープ残量インジケーター |
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外形寸法 | 幅420x高さ130x奥行358mm | ||
重量 | 9.2kg |