Pioneer A-838
¥120,000(1989年10月発売)
解説
無振動・無共振化設計に加え、クリーングランドシステムなどの新技術を投入したプリメインアンプ。
電源部や大電流部で発生する有害なノイズ電流を電気回路からシャットアウトするため、クリーングランドシステムを採用しています。
ノイズの発生源となっている電源トランスとヒートシンクをシャーシから絶縁して取り付け、ノイズが信号経路へ流れ込むのを防いでいます。さらに、回路とシャーシの接点を適切なポイントに結線しノイズ電流をノイズ発生源へ戻すバイパスを用意することで、信号電流にノイズが混入しないよう配慮されています。
信号経路を短くし信号の劣化や干渉を防ぐためダイレクトコンストラクションIIを採用しています。従来のダイレクトコンストラクションの技術を継承しつつ、パワーアンプ基板とメインボリューム基板を一体化し、配線ステップ数を大幅に削減するとともに信号経路長85cmを実現しています。
入力ブロックではインプットセレクターおよびメインボリュームを機械的にリモートコントロールする構造とし、信号経路の最短化を図っています。
さらに、ソースダイレクトスイッチをONにすることで入力信号はフロントパネル側には一切流れず、よりピュアな音が楽しめます。
パワーアンプブロックは信号の流れに沿ってレイアウトされており、パワー段の出力をストレートにスピーカーブロックに導き、また、電源部からの距離が最短化するようにしています。
スピーカーブロックではリレーを取り付けた基板にスピーカー端子を直接取り付け、最短化を図っています。
無振動・無共振化対策のため、コンピューターによるモーダル解析を駆使して振動伝達メカニズムの解明に力を注いでおり、その結果をもとにシールドケースやボトムプレート、ボンネットケースの構造材質に振動減衰特性をさらに高めた両面塩化ビニール鋼板を使用しています。
また、リアパネル、パネルステー、トランスフレーム等のシャーシ類に片面塩ビ鋼板を採用し、パーツの無共振化を図っています。
フレームシャーシ類にはプレス絞りによるハニカムを採用し、ヒートシンクにはパワートランジスタの振動・共振を抑えるためアルミ押し出しハニカム、ボトムには樹脂成型による充填タイプの大型ハニカムインシュレーターを採用し、剛性・振動減衰特性を向上しています。
トランスケースにはシールド効果、振動減衰特性にすぐれ、共振周波数をほとんどもたない鋳鉄を使用しています。また、ケースとトランス本体の間には、熱伝導性のよいピッチ素材を充填し、放熱フィンを設けることで温度上昇による抵抗の増加を防止しています。
また、振動の影響を最小限にしたバランス型ボリュームシャフトを使用しており、ボリュームのロータリーノブの軸受けを中心に両方向の重量バランスをとる方式により、ボリューム本体に機械的ストレスがかからないように配慮しています。
スイッチング歪が原理的に発生しないノンスイッチング・サーキットタイプIIをさらにバージョンアップさせ、電源増幅段と電力増幅段を明確に分離したノンスイッチング・サーキットタイプIIIを搭載しており、低負荷時のスピーカードライブ能力を向上しています。
また、電源スイッチON直後や大信号入力時、温度変化などによりドリフトしているアイドル電流を安定させるとともに、サーマル歪の発生を抑えています。
Phonoイコライザーには独自のNF-CR型を採用しており、NFタイプの広いダイナミックレンジとCRタイプの優れた周波数特性という特徴を両立させています。
Phonoイコライザースイッチの採用により、レコードを聴いていない時は回路をOFFにすることが可能で、不要なノイズの発生を抑えられます。
また、オーディオソースを再生中はビデオ系の電源OFFができるVファンクションOFFスイッチを搭載しています。
外部雑音の影響を配慮した極性表示付無酸素銅電源コードを使用し、電源プラグには非直線歪を低減するニッケルリンメッキを採用しています。
さらに入出力端子には金メッキを施し、スピーカーターミナルにはロスの少ない電流供給ができる万力タイプを採用しています。
ロータリーノブにはアルミ無垢材削り出しを採用しています。
映像系は入力3系統、出力3系統を搭載しており、相互ダビングが可能です。
ビデオ系がオーディオ系に悪影響を与えるを防ぐため、ビデオ用に専用の電源トランスを搭載し、回路・アースの分離をしてます。
機種の定格
型式 | ステレオプリメインアンプ |
<アンプ部> | |
定格出力(20Hz~20kHz、両ch駆動) | 180W+180W(4Ω、0.005%) 150W+150W(6Ω、0.003%) 120W+120W(8Ω、0.003%) |
ダンピングファクター(1kHz、8Ω) | 200 |
入力感度/インピーダンス | Phono MM:2.5mV/50kΩ Phono MC:0.2mV/100Ω CD、Tuner、VDP、VCR、Tape:150mV/50kΩ |
Phono最大許容入力(1kHz、0.008%) | MM:200mV MC:19mV |
出力レベル/インピーダンス | Tape Rec、VCR Rec:150mV/2.2kΩ |
周波数特性 | Phono MM:20Hz~20kHz ±0.2dB Phono MC:20Hz~20kHz ±0.3dB CD、Tuner、Tape:1Hz~150kHz +0 -3dB |
S/N比(IHF、Aネットワーク、 ショートサーキット) |
Phono MM:89dB(2.5mV) Phono MC:71dB(0.25mV) CD、Tuner、VDP、VCR、DAT/Tape1、Tape2:110dB |
<コンポジットビデオ部> | |
入力感度/インピーダンス | VDP、VCR1、2、TV/AUX:1Vp-p/75Ω |
出力レベル/インピーダンス | Monitor、VCR1、2:1Vp-p/75Ω |
DG | 2%以下 |
DP | 2゜以下 |
周波数特性 | 10Hz~10MHz +0 -1dB |
SN比 | 60dB以上 |
<S映像端子部> | |
入力感度/インピーダンス | VDP、VCR1、2 輝度信号:1Vp-p/75Ω 色信号:0.286Vp-p/75Ω |
出力レベル/インピーダンス | VCR1、2、Monitor 輝度信号:1Vp-p/75Ω 色信号:0.286Vp-p/75Ω |
輝度信号周波数特性 | 10Hz~10MHz +0 -1dB |
SN比 | 60dB以上 |
<総合> | |
電源電圧 | AC100V、50Hz/60Hz |
ACアウトレット | 電源スイッチ連動:2系統(200W) 電源スイッチ非連動:1系統(100W) |
消費電力(電気用品取締法) | 365W |
外形寸法 | 幅459x高さ173x奥行471mm |
重量 | 28kg |