PHILIPS LHH A700
¥280,000(1994年頃)
解説
徹底したシンプル化を図ったステレオパワーアンプ。
LHH A700では電圧増幅段を広帯域、小容量のバイポーラトランジスタで構成し、NFBをかける前の裸特性であるオープンループの周波数特性を500kHz(-3dB)まで向上させています。これによりNFBを20dB弱に抑え、動特性の大幅な向上を実現しています。
電流増幅段はパワー段、ドライバー段ともにMOS FETをシングルプッシュプルで使用しています。
MOS FETは入力インピーダンスが高く、キャリア蓄積効果がなくスイッチングスピードが速い、熱安定度が高いなどの特徴を持っていますが、等価入力容量が大きいという性質を持っており、高速スイッチング素子の特徴を発揮するためには入力容量の扱いが重要となります。LHH
A700では低インピーダンスドライブに徹し、通常よりも一桁大きいドライブ電流を流して一気に充放電することで、スルーレイト200V/μsとオーバーオールでのハイスピードアンプを実現しています。
従来では出力段から入力へ戻していたNFBをゲインを持つ電圧増幅段の中だけにとどめ、スピーカーループからの逆起電力の影響が初段に及ばない無帰還電流増幅段としています。
このため、ドライバー段とパワー段はNFBによる歪改善効果が無く、従来のアンプほど静的なスペックが改善されていません。しかし、負荷であるスピーカーの逆起電力の影響からアンプ動作が解放され、低負荷だけでなく容量負荷に対しても圧倒的な安定度を示しており、さらに出力のコイルも排除するなど動特性の一層の向上を実現しています。
電源部には瞬発力に優れた500VAの大容量EIコアトランスを搭載しています。さらに±別巻線、別整流とすることで、変動に強い高効率な供給を実現しています。また、電解コンデンサーは低倍率箔を使用したカスタム電解コンデンサーを多数並列接続して使用しており、ローインピーダンス化とハイスピード化を徹底しています。
給電ライン及び電源グランドには2mm厚のOFCバスバーを採用しており、大電流ループの最短化を図ると共に、優れた動的レギュレーションと明確なグランドポテンシャルを獲得しています。
プリント基板には金メッキを施したガラスエポキシ両面銅箔基板を採用しており、グランド面を広く取ることによって高いシールド効果と優れた高周波特性を獲得しています。
シャーシは、フロントとサイト、リアの全てに10mm厚のアルミ押し出し材を使用しており、3mm厚の銅メッキ鋼板のボトムシャーシに強固に固定し、さらに相互に連結補強しています。
また、ヒートシンクには周囲10mm、フィン8mm厚のアルミ押し出し材を用いたチムニー型ヒートシンクを使用しています。このヒートシンクは4mm厚アルミトップパネル及びボトムシャーシに強固に固定することでモノコック構造とし、3点支持方式の焼結合金製重量脚(点接点・面接点選択可能)とあいまって、優れた対振動特性を実現しています。
また、押し出し材はダイキャストに比べてアルミ純度が高く、熱抵抗を小さくできるメリットを持っており、高効率な放熱と均一な温度分布を実現しています。
ボリューム回路には、信号電流がカーボン抵抗体や摺動子接点を通過しない電流ドライブ型低インピーダンスボリュームを採用しています。
高周波特性に優れたテフロン製絶縁体を使用した黄銅削り出しのカスタムRCAピンジャックを採用しています。
スピーカーターミナルにはバナナプラグに対応したドイツWBT社製ターミナルを採用しています。
ボリュームノブには123gのアルミ無垢ボリュームノブを採用しています。
±1%金属被膜抵抗や高耐圧音響用コンデンサーなどの高精度パーツを採用しています。
機種の定格
型式 | パワーバッファーアンプリファイアー |
定格出力 | 80W+80W(4Ω、20Hz~20kHz) 40W+40W(8Ω、20Hz~20kHz) |
入力感度/インピーダンス | 500mV/10kΩ |
周波数特性(1W出力時) | 5Hz~350kHz +0 -1dB |
出力帯域幅 | 7Hz~110kHz(20W/8Ω、両ch駆動時) |
全高調波歪率 | 0.2%(8Ω定格出力時、20Hz~20kHz) |
SN比 | 105dB(Aカーブ補正) |
スルーレイト | 200V/μsec以上 |
消費電力 | 175W |
外形寸法 | 幅330x高さ134x奥行392mm |
重量 | 18kg |